シロを散々怒った後、頭冷やしがてら風呂に入る。
最後にはもうそれ以上体を縮める事は出来ないんじゃないかと思うくらい縮めて、項垂れる姿はさすがに可愛そうかと思ったのだが、あんなに叱られたというのに、おずおずと「…一緒に風呂に入って、いい…?」なんて聞くシロの神経を疑いたい。
…駄目と一喝した瞬間に今日一番の悲しそうな顔をされて、ちょっと心が揺らぎかけたのは秘密だ。

そんな思いを断ち切るようにざばっと冷水を頭から被る。


「あぁああ…」


溜息を吐いて唇をさわる。
してしまった。男と…。
今まであいつから死守してきたのに、違う男と…。


「まぁ、ファーストがあいつじゃないだけマシか…」


とか、ものすごくポジティブに考える自分がなんだか哀れだった。






「シロ、いいぞー入れー」


頭は既に乾かし、上は半袖、下は短パンという格好をしてシロを呼ぶ。
俺の格好を見た瞬間にシロがビシリと固まっていた。


「おーい、シロ?
此処にタオル置いとくからな。
服は、父さんの1番でかいの…で大丈夫かな…?こっちに置いとくから。
んでもって、こっちがシャンプーで、こっちがリンス。あれはボディーソープだから。
こっちに捻るとシャワーが水出て、反対側に捻ると蛇口から。良い?大丈夫?」


こくりと頷いたのを見届けて俺はリビングに戻った。
ソファーに座って、テレビを見たり、冷たい水を喉を鳴らしながら飲んでいるとシロが風呂からあがって来た。
横目で見て思わず水を噴き出しそうになり、慌ててこらえて噎せる。
げっほげっほ と咳き込む俺を不思議そうに見るシロの目線を感じた。


「なんっで、そんな格好なんだ!!」


咳き込みから回復した俺は開口一番叫んだ。

シロは貸した灰色のスウェットの下のみ着けて、上は真っ裸、そして濡れた頭のまま首にタオルという出で立ちだった。

…服を着てる時から分かってはいたが、脱いでみると尚更わかるのだけれど、凄い綺麗な体をしている。
腹筋は綺麗に割れ、腕の筋肉も俺なんかと比べ物にならないくらいついている。
それが決して無駄についておらず、実用的な筋肉なのが引き締まった感じを際立たせた。

――父さんの服ぴったりだし…。

父さんが間違えて買ったワンサイズ大き目の物がぴったりだ。
むしろ少し丈が足りない気さえする。
…なんだか自分のひょろさが悲しくなってきた。
俺はそれなりに食べるんだが、全然脂肪にもならず、ましてや筋肉にもならない。
たしかに運動は体育のみ…といえど、同じ条件のやつより明らかに細い…じゃなくて!!


「人様の家にいる時ぐらいは、上もちゃんと着ようか!!」


怪我から来てたと言っても熱出てたんだから、さっさと乾かす!
そう叫ぶと、シロは慌てて髪を乾かしに行った。
その後ろ姿を見送って、ばくばくと鳴る心臓を宥めながら息を吐く。

―― 〜〜〜っ、心臓に悪い!!

髪が濡れたシロはありえないほどの色気を出していて

――不覚にも一瞬どきっとしたわ!!!


その日の夜、俺は自分のベッドで寝て、シロには父さんのベッドで寝てもらった。

…その時も一緒に寝たいだなんて駄々をこねられた。



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