[百の追憶] 


せっせっせーの よいよいよい
おちゃらか おちゃらか おちゃらか ほい
おちゃらか 勝ったよ おちゃらか ほい
おちゃらか 負けたよ おちゃらか ほい
おちゃらか ほい…

お洒落 ほい…




寺の境内に生えた木の陰からこっそり覗く。
自分の見た目と同じくらいに見える幼子。
彼女はいつも日が暮れるまで人の子達とここで遊んでゆく。

――今日はいつも一緒にいる人の子はいないのだろうか。

この少女がもう一人の人の子と腕を振り、何かしらの勝負をしている際に歌うあの唄が好きだ。
高い声で紡がれるその唄は、単調だけでも耳に残る旋律で自分も知らぬ間に口ずさんでしまう事があるくらいだ。

――来ないな…。

いつもの時間になるだろうに、少女の友人はまだ来ず、古びた寺の縁側にちょこんと座る少女はつまらなさそうに足を振る。
来ている着物とおそろいの赤い鼻緒の下駄が、片方ぽろりと落ちた。

――まだ人の子が来ないのならば…少し話しかけてみても良いだろうか…。

まだ生まれて間もなく、妖怪としても余り力の無い自分は人の子の姿に化けれない。
しかし運の良い事に自分はどうやら人型の妖だ。
足も二本あるし、手も二本あるし、髪だって生えている。
そして人の子が恐れ慄く牙も爪も無い。
ならば――…ちょっと話をするくらいならばれないのではないだろうか。

どきどきと胸が高まる。

前から気になっていた。
他の人の子が、遊びに途中から入る際に「いーれーて」「いーいーよ」と歌うように言うその言葉を自分も口にして、仲間にして欲しかった。

――もしかして、もしかして…。

あの子と仲良くなったら他の子とも遊べるかもしれない。
一緒にあの遊び唄を歌って、一緒に笑って、走って。
そうだ、そうしたら裏山にある秘密の場所を教えてあげよう。
そこから見える夕焼けや星空は格別で、昼には良い日向ぼっこの場になる。
甘いアケビや、ワラビ、茸が採れる所も教えてあげよう。

どんどん高まる胸の鼓動を必死に抑えて、そろりと木の陰から前に出た。



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