気付けば側にいた優しい存在。
自分をいつも助けてくれて、憧れていた。
見る物全てに優しさを込めるような温かい眼差しが好きだった。
受邪の力が奥底に沈んでも、それは変わらない。
だから両親に俺がいなければその存在が、兄貴がこの世に存在出来ないと聞いた時は喜びで身体が震えた。
――オレがいなきゃ、兄貴はダメなんだ――
4年先に生まれた俺の力の片割れ。
兄貴が生まれた時に、俺も生まれたと同じ。
兄貴を護る。
それが俺の存在価値だと俺は信じて疑わない。
だから俺は人ならざるモノを滅するあの時の命を奪う感覚を何だって思わない。
既に兄貴は壊れかけている。
それはずっと側にいる俺が一番分かっている。
緩やかに兄貴が崩れていく音が俺には聞こえる。
砂で出来た城を海が削って行くように、端から静かに、しかし確実に、ボロボロと。
だからこれ以上壊れない様に。
それを四六時中考えている俺もどこか壊れかけているのかもしれない。
けれどそれで良かった。
守る為に壊れるのならば 本望 だ。
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