「兄上…っ、ようやく我らも『家憑き』に…っ」
「ああ…これはなんともいえぬ充足感…祠を人の子に貰った時よりも嬉しいぞ…」
手を握り合って嬉しそうにしていた二人はこっちを向いてまた膝をついた。
「それでは我らの真名をお教えいたしましょう」
「我は山茶(つばき)という」
「私は風雪(かぜゆき)と申します」
山茶といった橙の髪の子は鋭い目を心なしか緩ませながら俺を見つめて、風雪といった緑の髪の子はにこにこと笑いながら頭を下げた。
か、可愛い。可愛いすぎるよこの子ら…っ
「俺は…」
「ああ、貴方様は仮名でよろしいですよ!」
「仮名?」
「貴殿があの店で呼ばれている名前だ」
「え、でも」
「良いのです。双方が名前を教え合ってしまったら貴方様の場合重い契約を結んでしまいます故!」
「そ、そうなの?」
「そうだ」
「じゃあ、久(ひさ)…です」
「ヒサか」
「ヒサ殿ですね!」
何度も嬉しそうに繰り返す様子を見ていると俺まで嬉しくなってきた。
「よろしくね、山茶君と風雪君」
お返しにと二人の名前を呼んだらびしっと音を立てて二人は固まった。
「いいいいいいいい今、なななな名を呼んだ、か…!?」
「え、え、うん」
ぷるぷると風雪君は震えて、山茶君は若干頬を染めながら「「もう一度!!!!」」と叫んだ。
「え、山茶君、風雪君…?」
「「ああ!!」」
「ええ!?」
「何という至福!何という充足!」
「あ、兄上、私、癖になってしまいそうです…っ」
名前を呼んだだけでこうも喜ばれると恥ずかしすぎる…。
でもそんな二人が可愛いのはもちろんで、手を伸ばして頭を撫でると、吃驚したような顔した後両手に縋りついてきた。
「やはり貴方様は良いですね…っ」
「貴殿にして良かった」
「「必ずや幸福にしてみせよう(ます)」」
蕩けそうな笑顔を向けられて俺はもう心を奪われていた。
ああ、もうなんなのこの子ら…可愛すぎるでしょう…。
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