頂きもの | ナノ


ずっと私は、精市のことが好きだった。

でも…
直接、好きだと本人に伝えたことは1度もない。

だから、精市が私をどう思っているかは、分からない…

でも、きっと、伝えるから。
あなたの隣に、ずっといたいから。
私の隣に、あなたがずっといて欲しいから


【Promise】


ごめん、ごめん、ごめん…


走りながら、何度も心の中で呟いた。
小鳥に申し訳ない気持ちでいっぱいで…


でも、今日で、実感した。
私は、ずっと精市の隣にいたいって。
そばでずっと、精市を見ていたいって。

―――精市に、ずっと隣にいて欲しいって

校門の前で、見慣れた背中が立っていた。
いつものように、ジャージを羽織って…

「精市!!」

周りに人がいるのも気にしないで、自分でも驚くほど 大きく名前を呼んだ。

周りの人が振り返るのも気にせず、幸村に近寄った。

ちょっと驚いたような顔をして振り向く彼の顔も、すぐにいつもの優しい顔に戻る。

その顔に安心しきっていたのか…
ズルッと、靴が不吉な音を鳴らした。

「え…?」

「愛里!!危ない!!」

気付いたときには、右膝にズキズキした痛みを感じた。


「愛里、大丈夫?!」

急いでいて、靴をちゃんと履いていなかった所為だ。
周りに結構な人がいる中、思いっきり転んでしまった。

あぁ、私、かっこ悪いなぁ。

周りからの、何処からともなく感じる視線。
視線が、体に突き刺さる気がして、泣きたくなる。

でも、ここで泣いてはいけないと 唇をかみしめて、恐る恐る前を見た。

…大きな手のひらが、自分の目の前に…。

幸村が手を差し出しているのだ。

あぁ、私、こんなにかっこ悪いのに…
「大丈夫?どこか、ケガは…」

震える手で幸村の手を掴むと、ぐっと上に引っ張られた。

そういえば、昔、こんな感じで私が転んだときも、精市が……

一瞬、昔の自分たちが鮮明に脳裏をよぎって―――

立ち上がるのと、同時に。
愛里は 幸村の腕に抱きついた。



「……っ!!?愛里…?」
「…………好き」
「え……」
「私は、ずっと前から…これから先も、ずっと……私は精市が好き!!」


自分でも、最初何を言っているのか分からなくて
彼の腕から伝わる体温を感じながら、自分の行った言葉を思い出した。

…なんてことを、私は大声で叫んでしまったんだろう…

でも、もう後戻りは出来ない。

周りからの視線が、転んでしまったときよりも鋭く感じる。

ねぇ精市…あなたは今、どんな顔をしているの…?

「愛里…ちょっと」

え?と言い切る前に、幸村は彼女の腕を引っ張って、校舎裏へと歩いていった。

「……せ、精市…あ、あんまり引っ張らないで…」

幸村がやっと足を止めてくれた。

「ご、ごめん!!さっきは、大勢の前であんなこと……」

また、「ごめん」と言いかけた有希の言葉を遮って、

「謝らなくていいよ」

幸村がこちらを振り返る。

「でもさ、愛里。ああいうことを言うときは、ちゃんと場の雰囲気を考えなきゃ」

「え…」

「それに…俺から言いたかったのに、まさか先に言われちゃうなんてね」

「……っ!!!」

もしかして、それって…

「俺も、ずっと前から、愛里が……」



―――――――――――好きだったんだ。



じゃ、じゃあ、私たちは…

両思い……ってこと、なの?


「あ、…う、うぅ…精市……」
何だか力が抜けて、ポロポロと頬から熱を帯びたモノが伝い落ちた。

「もう愛里…泣かないでよ」
手で涙を拭ってくれる。

「俺、こういう時は笑って欲しいな」
「……うん。ありがと」

顔を赤く染めた愛里が、笑顔を見せた。

「やっぱり、愛里にはその顔が1番似合ってる」


幸村も、彼女につられて笑顔になった。

「ねぇ…精市」
「何?」
「これからも、ずっと傍にいてくれる?」
「うん、もちろん…」
「…私も、ずっとずっと、精市の傍にいるから……」




オレンジから赤に変わった光が、校舎の壁に2人の影を映していた。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -