すみこ様より運狙


結局は惚れている
今俺が運んでいるのは、「いつも良い働きをしているからな。受け取れ」なんて半ば強制的に上司から渡された箱で。中身は知らされていない。階段を昇り部屋のチャイムを鳴らす。今日はコプチェフは非番だったため寮に居るはずだ。案の定ドタドタと足音が聞こえて扉が解錠される。
「はーい。…って、お帰りボリス!寂しかったんだよ俺ー!」
「……うっせえ」
「あれ?何、その箱」
「……中で説明する」
「あ、そうだよね。ごめんごめん」
あはは、と笑うコプチェフに次いで部屋に上がる。どうやらコプチェフは夕食の下拵えをしていたらしく台所には既に切られたたくさんの野菜が並べられていた。リビングに箱を降ろし深い溜め息を吐いた。
「でさ、何なのそれ」
「…中身は知らねえ。署長に渡された」
「そうなんだ。明日お礼言っとかないと…開けて良い?」
「……ああ」
コプチェフは箱のフタを閉じていたテープを剥がしゆっくりとフタを開けるとわ、と声を洩らした。箱に入っていたのは二つの黒い着物で。ボリスも珍しく興味有り気に箱の中身を覗いている。
「どこで手に入れたんだろうね着物なんか」
「さあな」
「…ね、まだご飯までに時間あるし一回着てみない?」
「……まあ、良いけど」
驚くことにその着物のサイズはそれぞれにぴったりで。本当こんなのどこで手に入れたのだろう。お互いに自分の部屋に戻り着替えを始める。正直着方なんてからっきし分からなかったが。白い帯をキツく締めると気持ちまで引き締まる気がした。着物って悪くないかも。
「ボリスー、着替え終わった?」
扉越しにコプチェフの声が聞こえて短く返事をした。この扉を開ければコプチェフが居るのだと思うとなんとなく緊張して軽く深呼吸をする。部屋から一歩出て右を向くと壁に背を預けて立っていたコプチェフと目が合った。その顔がいつものヘラヘラした顔じゃなくて妙に真面目な顔で。一瞬、一瞬だけときめいたりとか…。
「ボリスうううう!!!!!」
「!!!???、ちょっ、離…」
「ボリスってばなんでそんなに何でも似合っちゃうの!?」
「知らねーよ!つーか、離せ!!」
前言撤回。誰がときめくかこんな奴に…!突然抱き締められて鼻を打ち付けた。殆んど身動きも出来ないほどに強く抱き締められているので顔を動かすので精一杯だ。この馬鹿力め。
「えー、じゃあちょっとだけね」
そう言ってコプチェフは身体を離す。手はボリスの背中に回したままだったが。別に逃げやしないのに変な奴。
「…馬鹿じゃねえのお前」
「だってボリス、スッゴく似合ってるんだもん」
「お前な……」
最早怒りを通り越して呆れるしかなかった。改めてコプチェフを正面から見てみる。やっぱり、いつもよりカッコよく見えた。…いやいやいや、これは着物がカッコいいんだ。普段と違うからちょっと動揺してるだけだ。そうでも思わないと自分がコプチェフに惚れていることを嫌でも自覚してしまって。
「ボリス顔赤いよー?…あ、もしかして惚れ直しちゃった?」
「ば、っ…馬鹿じゃねえの」
ボリスは気付かず赤くなっていた顔を更に赤らめて俯く。耳まで真っ赤になったボリスをコプチェフはもう一度優しく抱き締めた。
「……ほんと似合ってるよ」
そう耳元で囁くとボリスの肩が面白いほど跳ねた。ああもうなんで今日こんなに可愛いんだろ…!ぎゅう、としがみついてくるボリスに堪らなくなって口付けた。

(取り敢えずご飯の前にボリスかな?)




すみこ様よりいただいた和服ネタで運狙です。和服ネタがとても好きなので息を荒くしながら楽しませていただきました!ありがとうございました!


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