黒百合の花束を | ナノ

仕事


翌日。お昼すぎに蘭ちゃんの家である毛利探偵事務所を訪れると、今日は午前授業のみなのか蘭ちゃんが既に帰ってきていた。


「雪姫姉!いつ帰ってきてたの?」

『昨日よ。はい、これ蘭ちゃんのお土産。で、こっちが小五郎さんに』

「わぁ〜!ありがとう!」

「いや、悪いねぇ。わざわざ土産貰っちまってよ」

「せめてまとめて一つで良かったのに」

『いいのいいの、お世話になってるし。新ちゃんが迷惑かけたりなんだりしてるしね』

「あ、そうだ!雪姫姉、新一今どこにいるか知らない?急にいなくなっちゃったのよ」


眉を下げて心配そうに言う蘭ちゃん。遊んで楽しかったその日に行方が分からなくなったら心配もするよね。
怪しい組織の男に薬飲まされて小さくなってます、なんて言える訳もなく。「大きな事件に巻き込まれて解決に時間が掛かると言っていた」と言えば、蘭ちゃんも小五郎さんも納得してくれた。定期的に蘭ちゃんが博士に弟の事を聞きに来ると言っていたけど、これで暫くは無いでしょう。博士もその度に嘘吐くのは辛いだろうし。


『時間が出来たらこっちに顔出すように言っておくね』

「い、いいよ、別に…」


興味無いもんと言いたげに顔を背ける蘭ちゃん。


「そういえば、雪姫ちゃん。コナンってボウズ、知ってるか?」

『コナン?』

「江戸川コナンっつーボウズを訳あって預かってんだが、あの探偵ボウズと仲がいいらしくてな」


小五郎さんが弟のことを「探偵ボウズ」と呼ぶ。つまり「江戸川コナン」は今の小さな弟の事だろう。


『あ、あぁ、コナン君ね。知ってるよ。お土産渡すついでに顔見に来たの』

「そうだったのか。いや、最近俺は探偵の仕事が増えてきてな?蘭も部活で家にいない時があるから…その時、雪姫ちゃんのところに預かって貰うこととか出来ねぇかなと」

『いいよ、それくらい』

「え、でも雪姫姉のお仕事って基本夜だし、もし邪魔したら大変なことにならない?」

『大丈夫!ちゃんと事前に理解して貰ってから仕事するから!』

「そう…?雪姫姉がいいなら、いいんだけど…」

「しかし大変だよなぁ、VTuberってのも」

「海外でライブやる程の人気だもんねぇ…」

「その分、批判とかも多いんだろ?」

『まあ、多少は』


私の仕事はバーチャルユーチューバー。他にもやってはいるけど、主な収入源は配信とか動画とか。歌をメインに活動していて、元々は個人活動だったんだけど大手事務所に拾われて、今や有り難い事に世界中にファンができる程になった。海外に行っていた理由はライブで、韓国やアメリカ、フランスにオーストラリア等色んな国でライブツアーをさせてもらっていた。

まあそれだけ有名になった分、誹謗中傷やらアンチやらはいるけど、元刑事で現在探偵をしている小五郎さんやその奥さんで弁護士の英理さん。推理作家の父にその知り合いの刑事さん達。これだけでも心強いし、色々法律とか対処方法とかも教えて貰っている。


「ネットは怖いからな〜…雪姫ちゃんはべっぴんさんだから現実でも大変だろ?」

「大丈夫よ!雪姫姉は截拳道もテコンドーも出来るんだから!!」

「そう言えばそうだったな。お兄さんに教わったんだったか?」

『んーん、お父さんに我儘言ったの』


昔色々あって、お父さんにわがまま言って色んなことを教わった。その中にテコンドーや截拳道と言った格闘系も習わせてもらった事がある。
他にも飛行機の操縦の仕方、射撃の仕方。料理に裁縫、ボイストレーニングとかその他諸々。料理裁縫はまだいいし、ボイストレーニングは今仕事で役に立ってるから良いとして、飛行機の操縦とかいるかなって今でも思う。飛行機乗ってて「お客様の中に飛行機の操縦が可能な方いらっしゃいませんか!?」「あ、私できます!」ってなる事ないでしょ。


「お兄さんといえば…真ん中のお兄さんには連絡取れた?」

『ううん、まだ…メールは送れてるんだけど返信来なくて…』

「一番上のお兄さんは何か知ってるの?」

『知らないんだって。私と同じみたい』

「そっか…心配だね」

『まあ、お兄ちゃんなら大丈夫でしょ』


笑って言えば心配そうな顔の蘭ちゃんに「雪姫姉が言うなら大丈夫なんだろうけどさぁ…」と、少し不安そうに言われる。

私の兄弟達は皆強運だから大丈夫だと私は信じてるから。

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