黒百合の花束を | ナノ

お話


「えーっと、工藤さん…であってます?」

『はい、工藤雪姫です』

「あなたからもう少しお話を伺っても大丈夫ですか?」


さっき目暮警部と一緒にいた刑事さんから声をかけられて、詳しく話をした。と言ってもさっき話したことと同じこと言っただけなんだけど。


「なるほど…あ、事件とは関係ないんですが、目暮警部とどういう関係か聞いても…?」

『えっと…工藤新一って知ってます?』

「ああ、はい。高校生探偵の」

『その姉です』

「なるほど、お姉さんでしたか!ちなみにご職業は?」

『あー…えっと、自営業です』

「自営業、ですか…?」


言葉が詰まった私に少し疑問か不信感を抱いたのか、刑事さんは眉を顰めて首を傾げた。ちょうど戻ってきた目暮警部も合流して、一緒に事情聴取をする事になり、刑事さんが今のことを話すと目暮警部は「いいんだいいんだ」と笑って頷いてくれた。


「彼女の職業は少し複雑でな。正直私も詳しくはないんだが…あまり人には言い難いものというのは理解している。私が分かっているから構わんよ」

「そうなんですか?」

『はい、すみません…』

「自営業には変わりない、調書にもそのまま記入して大丈夫だ」

「分かりました」


そのまま事情聴取を続けられて、と言ってもさっき話したこととなんら変わらないので特別新しい発言もないのだけど。

話も終わって近くにある植え込みにもたれ掛かり、数分程した時、刑事さん数人が降りてきて何かの準備を始めた。何をするんだろうと見ていれば、一人の刑事さんがカメラでマンションを撮影し始めた。下田さんと同じことをしているということは、上では今事件の再現をしているのかな?

またさらに数分程すれば刑事さん達と容疑者の三人が降りてきて、容疑者の内一人が手錠を掛けられていた。弟達も降りてきて、「終わったから帰ろう」と弟に手を引かれる。


『ジョディ先生は?』

「時間も時間やし、酒飲ませてしもうたから今日は解散や」

『?お酒?』

「事件の再現するためにちょーっと飲んでもらったんや。お姉さん、悪いんですけど、駅まで送ってもらってもええです?」

『いいよ』


一応警部に挨拶して、三人で車に乗り込む。平次君を駅まで送り、そのまま弟を小五郎さんの探偵事務所へと送り届ける。
車からおりる直前、平次君がカメラのフィルムを弟に渡し、何かと聞けばジョディ先生が弟を隠し撮りしていたから取ってきたものだという。


「なあ、姉ちゃん」

『なぁに?』

「姉ちゃんから見て、ジョディ先生どう思った?」

『そうねぇ…新ちゃんが怪しいと思うならそうなんだろうけど、少なくともクリスじゃないと思うな』

「…なんで?」

『クリスならもっと上手く隠すからかな』


キョトンとした顔で私の顔を見る弟。これは昔シャロンに会ったことすら忘れてる顔だわ。
クリスもシャロンも隠すのがとても上手。さっき平次君が弟に渡していたカメラのフィルムは、ジョディ先生の持っていたカメラから抜き取ったものらしく、それが出来るのであればそれだけでクリスである可能性はないと思う。


『調べるのはいいけど、あまり無茶しないでね?』

「分かってるよ」

『本当かなぁ』

「蘭の父さんが探偵の仕事が増えれば、今まで以上に色んな情報が入るだろ?だから、姉ちゃんの真ん中の、景光兄さんだったか?その事も調べておくよ」

『いいよ、そのうち連絡来ると思うから』


そんな話をしていれば、すぐに探偵事務所の前に着いた。弟は降りる前に今の携帯番号とアドレスを教えてくれた。基本はそこから連絡してくるから、あまり新ちゃんの電話にはかけないで欲しいと。蘭ちゃんに疑われるだろうから、分かったと頷くと、新ちゃんはそのまま「おやすみなさい」と手を振って事務所の階段を上って行った。

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