黒百合の花束を | ナノ

対面


「姉さんはお仕事何してるんです?」

『秘密』


教えてもらった住所は都内のマンションだった。そこに向かう最中、平次君が興味本位で仕事のことを聞いてきた。


「なんや、お前の姉さん怪しい仕事でもやってんのか?」

「ちげーよ」

『そうねぇ…新ちゃんが大丈夫だと思うなら、教えてもいいよ』

「…まあ、口は固い方だろうけど…」

「せやろせやろ?俺口固いねんな。せやから教えてや」


ニコニコして言う平次君に、弟は深く溜息を吐いてどう説明しようか考えた後、渋々と口を開いた。


「…VTuberの「桜葉 紅葉」って、知ってるか?」

「そりゃ知ってるで!最近はテレビにも出てる超人気VTuberやし、逆に知らん奴探す方が難しいやろ。俺はいつも雑談配信聴きながら勉強しよるしな」

『へー、そうなの』

「で?桜葉紅葉がどないしてん?そのマネージャーでもしとんのか?」

「本人だよ」

「……はぁ?」

『本人だよ〜』


「桜葉紅葉」として配信する時の声でそう言うと、平次君は私と弟の顔を交互に見て口をパクパクと動かした。


「も、モノマネやんな?」

『ほら』

「…ほ、ほんまもんですやん…」


携帯から配信サイトの自分のページを見せる。本人じゃない限り出来ないようなページの概要欄編集が出来る為、本人である証明になるそれを見て、平次君は「ほ、ほんまに…?」と弟に確認した。


『地声と声変えてるから分かんなかったでしょ?』

「ぜんっっぜんちゃいますやん…」


昔お母さんから声の変え方のコツを教えて貰って、そこから女の人の声なら色々出せる。私は声が低い方だから、少し高い声変わりしてもそこまで変わらないタイプの男声なら出せなくは無いけど。
配信中は声を変えているから、出先で声で身バレする事なんて無い。教わっておいてよかったと心底思ったよね。


「お前んとこの家族構成どないなってんねん…」

「俺より姉ちゃんの方がすげぇよ」

『お兄ちゃん達?』

「そう。二人とも警察官だろ?」

「兄ちゃん?お前、兄ちゃんもおったんか?」

『私は工藤家の養子でね、新ちゃんと両親とは血が繋がってないの。血縁者は二人の兄で、二人とも警察官なのよ』

「つまり…お前の義理の兄でもあるっちゅーことか?」

「会ったことないけどな」

『兄と会う時、新ちゃんいつも遠慮して来ないのよ。二人は新ちゃんに会いたがってるのに』

「だって…なぁ…?」

『はい、私のお話はお終い。着いたよ』


話していればあっという間に目的地である高層マンションに着いた。
ご両親がお金持ちだとかで、高層マンションに住んでるらしいその先生は21階の四号室で暮らしているらしい。エレベーターで上ってその部屋を探す。丁度角の部屋で、迷わずすぐに部屋は見つけた。


「そんで、先生に何ちゅうねん?ここへ来た訳」

「え?考えてねえのか?言い出しっぺはおめーだろ?」

『でも平次君も私も、先生とは初対面だから新ちゃんが考えるのが妥当だと思うな』

「ほら、姉ちゃんもこう言うとるで」

「…ったく…もういいよ、帰ろうぜ、怪しまれたらヤベーし」


呆れたように言う新ちゃんに、平次君が「アホか」と少し大きな声を出した。こんな部屋の前まで来て引き下がれないと、半分負けず嫌いのような感情を出した時手が触れてインターホンを鳴らしてしまった。
どうしようかと三人で考えてればすぐに「Who is it?」とスピーカー越しに綺麗な英語が。仕方が無いので平次君が新ちゃんを抱えて対応してもらい、とりあえず近くまで来たから遊びに来たと伝えれば少し待つように言われた。


『んもう!気をつけてよ!』

「スマン、スマン…まさか当たってまうとは…」


申し訳なさそうに言う平次君に、小さくため息を吐く。

待っている間に隣人なのか、隣の扉から数人出てきた。どうやら部屋で集まって飲んでいたところを、解散したのだろう。一人が明らかに酔っている。その数人がエレベーターに乗って降りていくのを見送った後暫くして、2104号室の扉が開いた。


「HI!お待たせしまーした!お風呂に入っていたのでー、ごーめんなさーい!」


出てきたのは金髪の女性。まだ少し濡れたままバスタオル姿だった。

胸元はだけているし、男子高校生だから分かるけど平次君と新ちゃんちょっと見すぎじゃない?

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