クリスマス

「よし、行こっか」


変声機を喉に付けて、帽子を被ってマスクをして簡単な変装した景光さんは私を抱えた。
蘭お姉さんやコナン君達が来る今日は、お家に居られないので、お父さんから連絡が来るまで二人でお出かけ。でもどこかに行きたい訳でもないから、とりあえず近くのデパートに行くことになった。

沖矢昴にならないのかと聞いたら、「同じ時間の別の場所に沖矢昴が他人と関わっていることになるから」と言われた。何かあった時に話が合わなくなるから、そういう事はしないんだそう。今度有希子さんが来た時に、軽い変装術を教えてもらう予定だって。


「着いたはいいがどこに行こっか」


デパート内にある、休憩スペースにとりあえず腰掛ける。


【ひろみつさん、おようふくは?】

「服?…あぁ、季節変わってきてるから?」


頷くと、景光さんは「そうだなー」って言って顎に手を当てた。

お父さんと景光さんは体格も体型も似てるけど、服とか靴のサイズが違うから沖矢昴の服も別々で買わなきゃいけない。季節が変わりつつある今、景光さんの服はあるけど、景光さんが変装する為の沖矢昴の服が無い。
それを考えて景光さんは買いに行こうかと立ち上がって、私を抱えた。

まぁどの季節でもハイネックなんだけど。


「純歌ちゃん、どっちの方がいいかな」


大きなデパート内は洋服を扱っている専門店もいくつかある。その中のひとつに入って、沖矢昴が着ていそうなものを景光さんは手に取った。白のハイネックセーターと、その色違いでグレーのハイネックセーター。沖矢昴はグレーなんだろうけど…好奇心で見てみたい、白のハイネックセーター着てる沖矢昴が。

白のハイネックだったりタートルネックだったりのセーターってさ、こう、いいよね。

こっち、って白い方を指さすと、景光さんは「わかった」って言ってグレーの方を棚に戻した。正直なところ「沖矢昴」じゃなくても景光さんが着てもいいと思う。

他にも適当にポイポイと手に取って、すぐにレジへと向かう。お父さんもこうなんだけど、男の人が服買う時ってこんなあっさりしてるものなのかなぁ。もっと悩んでいいと思うんだけど。


「じゃあ次はどうしようか。というか、喉乾いてないか?大丈夫?」


大丈夫、って頷けば、景光さんは「そっか」って言って歩き出す。


「そういえばもうすぐクリスマスか…」


中央付近に行くと、大きなクリスマスツリーが飾られていた。もうすぐと言ってもまだ一ヶ月もある。まぁ年内最後の稼ぎ時だし、財布が緩くなる時期だからっていうのもあるんだろうな。年末年始って何故か財布の紐ゆるゆるになるよね。


「純歌ちゃんは、欲しいものある?」


景光さんに聞かれて少し考える。欲しいものって言われても、もう既に色々貰ってるから思いつかない。首を横に降ると、「そっか…」って少しガッカリしたような顔で笑われた。

もしかしてクリスマスに欲しいものを自然に聞き出そうとしてた?多分私そんな歳じゃないよ。いや見た目は五歳児なんだけどね。
でも貰えるなら大きなクマのぬいぐるみ欲しい。くまじゃなくてもうさぎとか、可愛い大きなぬいぐるみ。家にあっても邪魔になるんだけど、おもちゃ屋さんとかに行ってそれ見ると欲しいなぁって思う事がある。

帰ったらお父さんにそれとなく伝えよう。
あの家だったら多分置ける。はず。

多分。


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