文字

「純歌ちゃん。お父さんどこか知らないか?」

【おとなりに、おなべもって行ったよ】

「お裾分けなら、すぐ戻るか…」


景光さんがお家の中を歩き回っているから何してるんだと思っていたら、お父さんを探しているらしい。さっき昴お兄さんになってお隣の阿笠博士の家に向かったから、何かお裾分けしに行ったんだと思う。
景光さんはお父さんを待っている間、私の横に座って私のノートをじーっと見てる。どしたの?って首を傾げると、「あ、ごめん」って眉を下げて笑った。


「純歌ちゃんって五歳、だよね?」


その問いに頷く。


「文字綺麗だなーって思って…」


中身は五歳じゃないからね。何歳かは覚えてないけど。
景光さんは「組織に育てられたら、綺麗な文字書けるようになっても不思議じゃないか」って謎の結論出して納得してるみたいだけど、ノートを開いて今までの会話を見返すと確かに五歳児の書く文字じゃないなぁ…漢字も簡単なものなら書けるし…
景光さんは少し抜けてるところがあるから、その結論で納得するかもだけど、お父さんとかコナン君はしないだろうなぁ。

中身は自分の子供じゃないって知ったら、お父さんどうするんだろう。捨てられるかな。殺されるかな。嫌々育てるかな。一度死んでるし、むかしのきおくもないからか特に生に執着は無いんだけど、そうなるとこの体の持ち主が可哀想だな。帰ってきた時に自分の知らない事で捨てられるか殺されるか、親に嫌われてるかしてるんだから。

うーん、って考えてるとお父さんが帰ってきた。


「諸伏君」

「おかえり」

「すまないが、明日家を空けてくれるか」

「?何かあったのか?」


お隣にお裾分けに行ったら、阿笠博士の家に蘭お姉さんもいて、次に家を掃除するのはいつか聞かれたらしい。明日辺りにしようかと考えていて、それを伝えると、学校が終わったらコナン君と友人を連れて手伝いに来るんだとか。

景光さんの事をコナン君に伝えていないから、見つかった時に大変なのと、連れてくる友人がお父さんの妹の可能性があるから明日お父さんが連絡するまで家を空けて欲しいと。


「妹…って、前に会ったことある子か」

「あぁ。お前は顔もコードネームも知られているだろう」

「じゃあ…軽く変装して……そうだ、純歌ちゃん連れて行ってもいいか?」

「構わないが…買い与えすぎるなよ」

「分かってるよ。明日は俺と買い物行こうな〜」


すぐに私に何かを買い与えようとする景光さんに釘を刺すお父さん。どちらかというとお父さんの方が買ってると思うの。


【ひろみつさん、おとうさんにおはなしは?】

「あ、そうだった」


ノートを見せると、景光さんは思い出して立ち上がった。話したいことは私に聞かせられないことらしい。多分安室さんの事かなんかだろう。

明日は景光さんとお出かけ。
どこに行くんだろう。


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