夕飯

あれから暫く、景光さんが沖矢昴になって一緒に買い物行く事が増えた。お父さんが気分転換にお料理するから、今日もその買い出し。驚いたのは景光さんも多少料理が出来ること。何だこの2人、イケメンで警察官で料理出来るて。スパダリか?そんな二人に養われる私。転生とかじゃなくてもしかしてここは天国だった可能性があったりします?


「純歌は何食べたいとかありますか?」


首を横に振ると、昴お兄さんは困ったように眉を下げる。毎回聞かれて、毎回同じ回答をする。だって二人が作るもの全部美味しいから、何でも食べたい。それを言うと照れるのが景光さん。喜ぶけど顔に出さないのがお父さん。


【グラタンたべたい】

「グラタン?」

【ハンバーグがあるやつ】


あまりにもウンウン悩んでいるから、ふと頭に思い浮かんだグラタンを提案する。贅沢にハンバーグを添えたやつ。それを見ると、昴お兄さんは「いいですね」と笑って、棚を一通り回って買い物カゴに材料をぱっぱと入れていった。レジで会計を済ませて、片手に袋、もう片方の腕で私を抱えてスーパーを出る。
「寄り道していいか?」と聞かれて頷くと、昴お兄さんは少し早足になって歩き出す。行先はポアロ。「沖矢昴」に慣れるまではお店に入らないとお父さんにも約束してるから、外から一瞬だけ安室さんを見たいんだって。お買い物行って時間がある時は、ポアロを通って帰る。


「頑張ってるんだなぁ…あいつ…」

【少しなら、おみせ入ってもいいよ?】

「いや、やめた方がいい。バレる可能性が高いからな」

「何がバレるんです?」


お店の前を通る時、そんな会話をしていると後ろから鈴の音と一緒に声が聞こえた。そっちを見ると、安室さんが箒を持って出てきた。ちょうど、お店の入口を掃除する所だったらしい。


「こんにちは、純歌ちゃん」


にこって笑って挨拶する安室さんに、ぺこって軽く頭を下げて、こんにちはって挨拶する。


「夕飯のお買い物かな?今日は何食べるんだい?」

【グラタン、ハンバーグいれてもらうの】

「そっか。それは楽しみだね。ところで、何のお話してたんだい?」

【ごはんのまえに、おかしたべたらお父さんたちに会ったときにバレるから、ダメっておはなし】


ノートに書いて見せたら、安室さんはキョトンとした顔でそれを読んで、吹き出すように笑った。


「ふふ、そっか。そうだね。ご飯の前におやつ食べたらご飯が食べられなくなっちゃうからね」

【あむろさんも、ダメっていう?】

「勿論。折角美味しいご飯が食べられないからね。あまり食べすぎちゃだめだよ?」

【わかった】

「いい子だね。…すみません、足止めしてしまって」

「いえ、お気になさらず」

「じゃあ、純歌ちゃん。ちゃんと夜ご飯食べるんだよ?」


頷いたら、安室さんは「じゃあまたね」と手を振った。それを見て、昴お兄さんが足を進める。抱えられてるから分かるけど、心臓の動き早い。話しかけられてびっくりしたんだろうな。


「…すまん、純歌ちゃん。助かった」

【きにしないで だいじょうぶ?】

「だいじょばないかもしれない」

【はやくおうちにかえろうね】

「そうだね。今のことはアイツには内緒な」

【しー】

「そう、しー」


ノートを見せて人差し指を口の前に持っていくと、昴お兄さんも一緒に同じ仕草をした。

でもお父さんは私のペンに盗聴器と発信機仕込んでるから、バレバレだと思うな。


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