友達

「純歌」


あの後、お父さんに「志保や有希子さんには言っていいんじゃないか」と言われて、志保姉と新一さん、有希子さんと優作さんにも私がこの世界の人間じゃない事を伝えた。驚かれたけど「自分達にとって純歌ちゃんは純歌ちゃんだから」って言ってもらえた。志保姉はベル姉より後に教えてもらったことだけが嫌だったみたいで、少し不貞腐れてたけど。


「おいで」

『?うん』


リビングでソファに座っているお父さんに呼ばれて近づけば、抱えられて膝の上に乗せられた。


『どうしたの?』

「いや、なんでも」

『?』


首を傾げると、お父さんは「大学生なんだなぁと思って」と呟いた。


『せんもんだよ』

「それでも大学生なのは変わらないだろう。なんの専門なんだ?」

『おようふくを、つくる』

「それになりたいのか」

『うん』

「そうか」


そう言うとお父さんは黙って私の頭を捏ねくり回すように撫でる。


『なにぃ…今日へんだよ…』

「いや……この前ベルモットと話していた事が、扉越しにも聞こえてな。行きたい場所が沢山あるんだろう?お前の母親やベルモットとは行けないが…俺や志保、時間が合えば諸伏君や有希子さん達とも行けるだろう。純歌さえいいなら、一緒に行かないかと思ったんだが」

『…いいの?』

「聞いてるのはこっちなんだが」

『あ、えっと、うん!』


頷けば、お父さんは安心したように小さく笑った。


「真純と母さんも会いたがっていたし、ジョディやキャメルとでもいい。出掛ける人間選び放題だな」

『さいしょは、おとうさんがいいな』

「俺か?」

『おとうさんと、ひろみつさんがいい』

「理由を聞いてもいいだろうか」

『だいじな人だから』


頭に乗せられてない方の手を軽くつついて遊びながら言うと、お父さんはまた頭を捏ねくり回す。やめてよって言ってもぐりぐりと回される。


『なにぃ』

「諸伏君にも伝えておこう。きっと純歌の為に休みもぎ取ってきてくれるぞ」

『むりしないように言わないと』

「そうだな。他に誰と出掛けたい?」

『しんいちさんと、しほ姉と…ゆきこさん、ゆうさくさん。キャメルさんとジョディさんも。かずはお姉さんと、へいじお兄さん。らんお姉さんと、あむろさんも』

「友達沢山だな」

『あと、あゆみちゃんと、みつひこくんと、げんたくん。あがさはかせもいっしょ』

「そうだな」

『おでかけしたのを、ベル姉におはなしするの』

「ああ、そうするといい」

『だから、たくさんおでかけ、したい』

「その前に昼寝でもしよう。眠たいんだろう」


話しているとだんだん眠たくなってきた。幼児の体って本当に体力がないから疲れやすくて眠くなりやすい。それが分かりやすいのか、お父さんに抱えられて背中を軽くぽんぽんと叩かれながら部屋に連れていかれた。


「起きたらまた誰とどこに行きたいか考えよう」

『うん』

「今日は諸伏君が少しだけだが顔を出せると言っていた。一緒に考えようか」

『ん』

「じゃあおやすみ。またあとで」

『おやすみ』


お父さんが布団を掛けてくれて、部屋から出て行く。

おでかけする前に体力を少し付けないとだなぁ。入院中にお医者様から普通の子より少ないって言われたし。あと話し方も少し舌っ足らずだから、会話の練習…あ、でもそれは今度有希子さんがしてくれるって言ってたかな。

そういえばさっき将来のこと少し聞かれたけど、人生やり直しみたいな今、もう一度服飾するのもな。あれは趣味でいいやって学んでる時に思ったんだ。別のことするのもいいかもしれない。

こっちの私は何になりたかったんだろう。

明らかにこの子より長い時間を生きるんだし、この子は自分の事より他人を優先して替わったから、出来るならこの子がなりたかった職業に付きたい。

まだ全然先の話だけど。


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