私と

何も無い真っ白な空間にポツンと立ってた。
いつもより視線が高いけど、違和感がない。むしろこの視線が当たり前だったきもする。

多分これが本来の私の身長なんだろうな。

辺りを見渡せば、ぽつんと座っている女の子を見つけた。
私がその子に気付くと同時に、その子も私の方に振り向いて私を見つけた。


「はじめまして!」

『は、じめまして…?』


基本礼儀として返すと普通に声が出た。女の子は横に座ってというように、座っている場所の横をポンポンと叩く。

座るとニコニコと嬉しそうに笑う女の子。


『ここはどこ?』

「知らない」

『んー…じゃあ、他に人いた?』

「んーん、お姉さんが初めましてだよ」

『あなたのお名前は?』

「宮野純歌。今は苗字違うけど」


名前を聞いてふと思ったけど、この子確かに「今」の私の見た目だ。つまりこの子が本来の「赤井秀一の娘」なんだ。


「ごめんね」

『え?』


私が口を開こうとする前に、その子がそう言った。


「私のわがままで急に変わっちゃってごめんね」

『えっと…どういうこと?』


その子は知ってることを全て話してくれた。

熱を出して倒れてしまったこと。
なにかしらの組織で育てられていたこと。
実の両親は知らないこと。

夢で「神」と名乗る人物に会ったこと。


『神様?』

「そう!神様がね、産まれてくる時にどれだけ生きれるかを設定するんだけど、一桁間違えちゃったんだって。それで、私はすぐに死ぬって言われたの」

『それが、なんで私があなたの体に入ったの?』

「一瞬死ぬけど、別の世界の自分?と入れ替われば死んだことにならないよって言われて、あなたと入れ替わったの」

『別の世界の…自分?』

「そう。だから私とあなたは同一人物。同じ宮野純歌だよ」


サラッと笑顔で言われても「そうなんだ」って飲み込める程の理解は出来てない。いや、無理だよ理解出来ないでしょ。

その自称神様が言うには、どうやら大きな宇宙のような場所があって、そこにあるのは無数の扉。で、その扉を潜ると一つの「世界」になっているらしい。例えばA.B.Cと扉があって、AとB、BとCのように隣合う「世界」はほんの少しだけ違うらしいけど、AとCは全く別の世界になっているらしい。
この子と私は隣合う「世界」の「宮野純歌」だから、急に入れ替わっても大丈夫だったんだと教えてくれた。


「私もその辺はよくわかってないから、理解しなくていいと思う」

『そ、そう…でも、それを教えてくれるってことは、あなたは記憶がある…んだよね?私無いんだけど…』

「多分、体と精神が同期出来てないんじゃない?血いっぱい吐いたことある?」

『今吐いて…気づいたらここだったけど』

「それはね、体が元の私を追い出してあなたを受け入れようとしてるからだよ。私も血いっぱい吐いたことあるんだ〜、目覚めたら三年後とかでびっくりした」

『三年!?』

「あ、同じとは限らないよ?私の時は起きたいって、その神様の横で話したからよく分かんない」


この子も血を吐いたらここに似た場所にいたらしく、その時は自称神様に色々教えてもらったと。


『ちょっと聞きたいんだけど…隣合う世界の私って少なくとも二人はいるよね?どうしてその自称神様は私を選んだか知ってる?』

「私が「両親を知らない方」って希望したの。もう一人の私は両親と…というか、祖母?と一緒に暮らしてたから。急に家族とか言われても困るし」

『なるほど…』

「今もベルお姉ちゃんと暮らしてるんでしょ?」

『あ、ううん。今はお父さんと…』

「…父親?死んだんじゃないの?」

『えっと…ちょっと難しい話になるんだけど…』


その子にお父さんの事を話した。「赤井秀一」として死んだことにして別名義で生きているということと、それを手伝ってくれたのは「江戸川コナン」であること。


「コナン…って、あのキッドキラー?」

『分かんないけど…多分そうだと思う』

「ふーん…じゃあ私のところでも生きてるのかな」

『少し違うだけなら生きてると思うよ』

「そっかぁ…ベルお姉ちゃん悲しませたくなかったから入れ替わったんだけどなぁ…」

『ベルモットさん…だよね。この前会ったよ』

「何か言われた?」

『幸せになってねって』


あれは私宛の言葉じゃなく、この子宛ての言葉。
言えばその子も理解したのか「そっか」って笑った。


「さて…そろそろ帰らないと。明日テストなんだ、私」

『テスト?学生なの?』

「うん。あ、同期が終わったら今までのあなたの記憶と、体が覚えてる記憶を思い出せるから。今まで記憶がなくて不便だったけどそれがなくなると思う」

『そっか』

「じゃあ…お父さん達によろしくね」

『テスト頑張ってね』

「うん。…ごめんね、本当に私のわがままで急に入れ替わってもらって」

『大丈夫』


だって入れ替わったのが自分の為じゃなく、他人の為だから。この子はベルモットさんが大好きで、大好きだから死にたくなかったんだって分かったから。

「ばいばい」ってその子は消えて、真っ白な部屋に一人だけになった。


『さて、』


横に神いないから、どうしたら起きれるんだろうか。


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扉云々は個人的二次創作に対する解釈です


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