おはようございます

次に気がついたらベッドの上だった。

真っ白な部屋で機械が沢山あって、全部がチューブで私の体のどこかに繋がってる。視界だけを動かして部屋を見える範囲だけ見ていると、端の方で小さく動いたものが見えた。


「…ん?」

『きゃ、めるさ、ん』


そこにいたのはFBIのキャメルさんで、名前を呼ぶと目を開いて横に来て顔を合わせるように屈んでくれた。


「!!目を覚ましたのかい!?」

『ぉ、はよ、う』

「あぁ、おはよう…!ちょっと待っていて、赤井さんとドクターを呼んでくるから…!!」


泣きそうな声でそう言うと、キャメルさんはすぐに部屋を出て行った。

声が普通に出てるから、あの子の言った心と体の同期っていうのが終わったんだろうか。この体の子の今までの記憶と、この体に入る前の記憶がぼやけてるような感じで、だけど少しだけ思い出せてる。

ぼんやりと記憶を思い出していると、扉が開く音がした。


「純歌!」

「純歌ちゃん!」


息を切らして入ってきたのはお父さんと景光さん。後ろからキャメルさんと有希子さんも入ってきた。


『おと、ぅ、さ、ん』

「純歌、声が…」

「よかったぁ…!」


声が出て話せる事にお父さんは驚いて、景光さんは私が目を覚ました事に安心したのかぎゅーって抱きしめてくれた。


「秀ちゃん、景ちゃん。気持ちは分かるけど、まずはお医者様に診てもらいましょう」


有希子さんがそう言うと、景光さんとお父さんは一歩後ろに下がった。気がついてなかったけど、さっき一緒にお医者さん達も来てたみたい。

心音を聞いたり、喉の奥とか、そういうのを確認してお医者さんは「異常は特にありません」と、お父さんの方を向いて言った。会話が少し拙い事を景光さんが言うと、今まで声を出していなかったことと、喉が渇いていることが理由だろうから、特に心配はいらないらしい。
明日大きな検査をすることをお父さん達に説明して、お医者さんと看護婦さんは部屋から出て行った。


「とにかく目が覚めて良かった…」

「体調が悪くなったらすぐに言ってね?」


笑顔でそう言った有希子さんに頷くと、「優ちゃん達に話して来るわね」とお父さんに言って部屋を出ていった。キャメルさんも「話したいことあるでしょうから」って出ていって、部屋の中には私と景光さんとお父さんの三人だけになった。


『おとうさん』

「どうした?」

『ゎ、たし、どれくらい、ねてた、?』

「…もうすぐ一年になるかな」


一年も寝てたの。あらまぁ。

確かあの子が三年だったから早い方なんだろうけど、お父さん達からすれば「一年も目を覚まさなかった」んだ。それでもずっと毎日必ずお見舞いに来てくれていたと景光さんから聞いて、嬉しくなる。


『あ、のね』

「うん?」

『べる、ねえ、ちゃ…と、おはなし、したい』

「べる…?ベルモット?」


頷いたら、お父さんと景光さんは「どうする?」と言うようにお互いの顔を見合わせた。

あの子がお世話になったように、私もベル姉にお世話になった記憶がある。なんなら志保姉にも少しある。
というか、私向こうでは志保姉と半同居みたいな感じだったっけ。叔母は二人だけど茶髪なのは一人だけだから、おそらくだけど志保姉と哀ちゃんは同一人物でしょ。なんで小さいのかは分かんないけど。

景光さんが備え付けの椅子に座って、私の手を握って口を開いた。


「ベルモットはずっと危ない事をしていて、今はもう捕まって警察のところにいるんだ」

『ぉはなし、できない?』

「頼んではみるけど、今すぐには出来ないし頼んでも出来ないかもしれない」


私が寝ている間にベル姉達のところの怖い人達は全員捕まって、コナン君と哀ちゃんは海外に行った。本当はお父さんもアメリカに帰る予定だったけど私が目を覚まさないから、そのまま日本に残ってまだ残ってる怖い人達の仲間を捕まえる為に日本警察のお手伝いをしているんだって。
景光さんは生きている事を証明して警察に戻っていて、メアリーさんは体調も良くなって、真純ちゃん達は一回アメリカに帰ったけど、真純ちゃんだけすぐ日本に戻ってきているって、教えてくれた。


『あむろ、さん、は?』

「あいつは…あいつも本当は警察官でね。一緒に残っている怖い人達を捕まえる為に走り回っているよ。さっき連絡したから、時間が開けば来ると思う」

『ひろみつさんは、おにいさんと、あえた?』

「会えたよ。すごく怒られたけどね」


笑いながら言う景光さん。相当怒られたんだろうな。お互いがお互いを大好きで大事にしてる兄弟だろうから、当たり前ではあるけど。


「そうだ。純歌ちゃんの体調がもう少し良くなったら、阿笠博士達も連れてこようか。すごく心配してたからね」

「特に子供達がな」

「大阪の子もずっと心配してたよね」

『あとで、おでんわする』

「高木刑事も心配してたから、彼にも連絡してあげて」

『うん』


頷くと、景光さんが「喉乾いてるだろ?」と言って飲み物を買いに部屋を出ていった。部屋にお父さんと二人になって、さっきまで景光さんが座ってい椅子にお父さんが座った。


「先週くらいに、夢にお前によく似た女の子が出てきた」

『ゆめ?』

「色々話してたよ。神の間違いで死ぬ予定だったとか、別の世界の自分と入れ替わったとか…」


お父さんの話は、要するにあの子が出てきて私に言ったことと同じことを話してきたらしい。


「その話が本当だろうと嘘だろうと、お前は俺と明美の子だから関係ない。ただ、確認はしておきたい」


その話は本当なのかと聞かれ、頷いた。お父さんは一瞬だけ驚いた顔をしたけど、すぐに「そうか」と言って私の頭を撫でた。


「ずっと、悩んでたりしたのか?」

『ぅ、うん…』

「だから記憶が無いと言ったのか?」

『ちがう』

「それは本当なのか」

『ん、』

「その子は、お前が起きたら記憶が戻っているはずだとも言っていたが」

『ある。わたし、と、このこの、きおく』

「両方あるのか」


それにもお父さんは驚いた顔をした。

景光さんがペットボトルのお水を持って帰ってきて、蓋を開けて「はい」と渡される。少しだけ飲むと、いつでも飲めるようにとサイドテーブルに置いてくれた。


「そうそう。ゼロがベルモットと話せるように手配してくれるって」

「ほう、早いな」

「あと、明日の検査次第で機械取り外せるってさ」

「そうか。純歌、明日の検査終わったら大阪の探偵君と、高木刑事に連絡するといい」

『うん』

「今日まで大人しく寝ておこうな〜」


景光さんに頭を撫でられて、お父さんが「君も休め」と景光さんの肩をポンポンと叩いた。景光さんとお父さんと交代で私の事を診ていたらしく、さっきは景光さんから交代した直後だったらしい。ただ、お父さんが少し手が離せない用件があって代理でキャメルさんが来ていたと。

景光さんは「明日ね」と言って部屋を出ていき、またお父さんと二人だけになった。


「面会もそのままOKにしているから、これから色んな人が来るだろうが…疲れたらすぐに言いなさい」

『うん』

「…すまないが、さっき言ったように外せない用件がある。すぐに戻るから、それまでいい子に寝ているんだぞ」

『うん』


お父さんはまた私の頭を撫でて、部屋を出ていった。交代でキャメルさんが入ってきて、「何かあったらすぐに言ってね」と笑顔で言い、少し離れたソファに座った。

さっきまで寝てたのにもう眠いな。


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