あの後病院に行っても異常は何も無く、何が原因か分からないまま咳止めの薬を沢山出された。呼吸器官を広げるものと、席を止めるものと、咳によって喉の炎症を抑える薬。それでも一向に咳は治まる気配がなかった。


「ほんまに大丈夫なんか?」


そう言いながら、平次お兄さんが背中を摩ってくれた。

コナン君に用事があった平次お兄さんが私の咳が止まらないことを聞いたらしく、帰る前にコナン君と一緒に様子を見に来てくれた。


「前みたいに色んなところに行けなくなったけど、元気は元気…なんだよな?」

「えぇ。でも、たまに喉が切れてるのか血が出るから心配で…」


有希子さんがコナン君にそう答えると、平次お兄さんは心配そうな顔をして、頭を撫でてくれた。


「喉痛ないか?」

【だいじょうぶ】


頷いたけど、実は喉すごく痛い。だって血が出るくらい咳するって、相当な事だよ。喉痛いけど痒くて、ムズムズして咳が出る。それで喉が痛い。でも痒くてムズムズする。その繰り返し。
この前、哀ちゃんが何かのアレルギーじゃないかと心配して血液検査する為に少し血を抜いたけど、まだ結果が出ないのか何も言われない。血液検査って一日の内に結果出なかったっけ。


「喉痛めたら、余計に声出ぇへんくなるんちゃいます?」

「そうなんだろうけど、痒くてムズムズすると反射的に咳しちゃうみたい。何回か病院で診てもらったけど本当に原因が分からないみたいで」

『っ、……っ、!っ、』

「あ〜ほら、これ飲みや」


渡されたコップに入った暖かいお茶を一口だけ飲む。最近気付いたんだけど、何かを飲むと少しだけ咳が治まる。だから今はベッドの横のサイドテーブルに常に飲み物が置かれてる。今日は暖かい麦茶。
飲み物を飲むと落ち着くから、喉が乾燥してるのかもって景光さんが言ってたけど、それにしては飲み物で潤って乾燥するまでが早い。考えれば考えるほど謎しかないこの咳。


『……、けほっ…』

「まだ飲むか?」

『……っ、』


平次お兄さんがそう聞いて、いるって頷こうとしたらまた咳が出た。その咳と一緒に口から沢山何か出た。
嘔吐しちゃったかなって思ったけど、吐瀉物を吐き出した時の特有な酸っぱさが何も無くて、吐き出したものを見たら真っ赤だった。

血を吐いたらしい。

そう気づいたらまた咳と一緒に口から沢山の血が出てきて、平次お兄さんが驚いた顔で私を支えて背中を摩ってくれて、コナン君と有希子さんは部屋を出て多分お父さん達を呼びに行った。


「しっかりせぇ!なん…、…止まらへんな!」

「服部!純歌ちゃんどうだ!?」

「ずっと咳と一緒に血ぃ吐きよる!救急車は呼んだんか!?」

「あぁ!」

『…ぉ、…ぁ……』


ずっと血が出て来て、平次お兄さんとコナン君が大丈夫だって二人で背中を摩ってくれてたらお父さんと景光さんが急いで来てくれた。今日有希子さんに頼まれてお庭の草むしりしてたはずだけど、有希子さんに聞いて階段駆け上がって来てくれた。二人の後ろに有希子さんと優作さんがいて、お父さんが近づくとコナン君と平次お兄さんはベッドから離れて二人と場所を交代した。


『…ぉ、と…ぅ、あ、ん……』

「純歌、声が…いや、今は喋らなくていい。血が止まらなくなるかもしれない」


お父さんの顔を見たら何故か「今なら声が出せる」って思って、口を開いたら本当に声が出た。声と一緒に少しだけ血も出るけど、謝るなら今だ。これだけ血が出てたらこの子は助からないかもしれない。というか、助かる確率の方が低い気がする。


『ぅそ…ぉえ、ん…なぁ…ぃ…』

「うそ、ごめんなさい?」

「何か嘘をついていたのか?」

『お、ぇ…な、さ…』

「謝らなくていい。大丈夫。嘘をついていても、俺は怒らない。とにかく今は血を止めることを…」

『ぃあ、ぅ…ぉ』


違うの、って言いかけた時、救急車のサイレンが聞こえた。優作さんが外に出て、担架を持った救急隊の人を連れて入って来た。

私が覚えてるのはそこまでだ。


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