報連相大事

『……ぉ、ぁ…』

「大分声出るようになったね」

『ぃ…ぉ……』

「ん〜?」


お父さんがFBIの人達と用事があって出掛け、優作さんと有希子さんは二人でデートに。だから今日は景光さんが昴お兄さんになってて、今はその昴お兄さんとコナンくんと一緒に声が出るように練習している。
声はなんというか、掠れた空気の様な感じのものが出るくらい。コナン君は私に気を使ってるのか、前より出るようになったって言ってくれているけど正直ずっとこんな感じ。


「どうぞ」

「ありがとう!」

「純歌も、少し休憩しよう」


昴お兄さんが私とコナン君の前にコップを持ってきてくれた。コナン君はアイスコーヒーで、私のは昨日買ったばかりのぶどうジュース。

景光さんは昴お兄さんの時、私のことを「純歌」って呼ぶ。最初は慣れなかったみたいだけど、最近は結構お父さんと景光さんの「沖矢昴」に違和感がなくなってきた。

多分だけど、コナン君は今いる「沖矢昴」の中身が「赤井秀一」では無いことに気が付いていない。そもそも今日お父さんが居ないことを知らされていないから、何かの相談に来たって言っていたし。なんなら今も昴お兄さんの事「赤井さん」って呼んでるし。


「あ、でね。赤井さんに話があるんだけど」

「ん?」

「あのね…どうしたの、純歌ちゃん?」


昴お兄さんに話をしようとしているコナン君の袖を引っ張って、ノートを見せた。


【あのね】

「うん?」

【その人は、おとうさんじゃないの】

「…へ?」

「あぁ、もしかして今日居ないってこと聞かされてませんか?」

「……えっ?」

「改めまして、第二の沖矢昴です」


ニコニコと笑顔で話す昴お兄さんと、キョトンとしているコナン君。

絵面が面白いなぁ。


「え…えっ!?」


私と昴お兄さんのお顔を交互に見て、脳が理解したのか顔に汗が流れる程ビックリしている。


「あ、赤井さん…じゃない、の?」

「ええ、違いますよ」

「じゃあ、赤井さんは…?」

「ジョディさん達と朝から出掛けていきましたが」

「だ…大丈夫な人…?」


おそらく、怖い組織の人達じゃないかって意味だと思う。ノートに「大丈夫だよ」って書けば、「そっかぁ」と。お父さんが自分の代理として選んだ人でもあるから、随分素直に納得してくれた。


「自分も数年前まで組織にいたんだ。潜入捜査官としてね。でもそれがバレてしまって、消されそうになったところをライ…赤井に助けてもらったんだ」

「そう、なんだ…」

「君の事はFBIの人達や日本警察の人達を見ていれば、信頼していいと思ってる。でもまだ、「俺」自身が君を信用していない。だから素顔や声はまだ出すことは出来ない」

「…うん、大丈夫。これからよろしくね、二人目の昴さん!」

「ああ、よろしく」


お互いに笑って挨拶を済ませると、コナン君は変わってムスッとした顔で「赤井さんも話してくれてれば良かったのに」と呟いた。

お父さんってたまに報連相サボるよね。


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