匂い

昴お兄さんになったお父さんと一緒に、ライブのリハーサルを見に行くと蘭お姉さん達もいて、その中に安室さんと梓お姉さんも来ていた。

諸事情でリハーサルがいつ始まるか分からないと聞いて、蘭お姉さん達が明日学校だから帰ろうかってなった時に、警備の人が設備の点検をする為にホールの扉を開けたら大きな声で叫んで、何事かと思って皆駆けつけたら、その波土禄道って人が首を吊って死んでいた。


「純歌ちゃんは見ちゃダメ」


そう言って、梓お姉さんが私の目を隠したからよく見えなかったけど、すごく高い位置にあったから誰かが波土さんを吊り上げたのかなぁ。


「すみません、純歌の事頼めますか?」

「大丈夫ですよ」


梓お姉さんにそう言うと、お父さんはホールのステージの方に駆けて行った。安室さんとコナン君も既に下りていて、二人とも探偵さんだから調査をしに行ったんだと思う。お父さんは他国ではあるけど警察官だから体が動いてしまうのかな。


「純歌ちゃん、あっちに行こっか」


梓お姉さんにそう言われて、ホールの入口から離れる。確かに子供にこんな所見せたくは無いよね。

すぐに警察の人達が来て、捜査が始まった。会場にいた全員に事情聴取をするらしく、梓お姉さん達も話を聞かれてた。


「えっと、ところでこの子は…?」

「私が訳あって預かっている子でして」

「あ、そうなんですか」


刑事さんが梓お姉さんにそう聞かれると、昴お兄さんが駆け寄ってきてそう説明してくれた。刑事さんが目線を合わせて、「はじめまして」って挨拶されたから、初めましてってお辞儀をすると、キョトンとした顔をされる。普通子供って言葉で挨拶するもんね。頭をペコってするだけならまだしも、お辞儀で挨拶する五歳児そんなに見ないよ。


「この子は諸事情で声が出なくて…会話は筆談かジェスチャーで行うんです」

「そ、そうでしたか。ごめんね、もう少しここに居てもらうけど、大丈夫かな?」

【だいじょうぶです】

「トイレに行きたかったりしたら、僕に一言声をかけてくれるかい?」

【わかりました】

「無いとは思うけど、事件に気付いたことがあったら教えてね」


頷くと、刑事さんは「いい子だね」と笑って、次の事情聴取をする人のところに掛けて行った。


「すみません、純歌の事預けてしまって」

「いいえ、大丈夫ですよ」

「もう少し預けていても大丈夫でしょうか」

「ええ、勿論」


昴お兄さんは私に「いい子でいるんだぞ」と言って、刑事さん達の事情聴取に加わった。

梓お姉さんの方を見ると目が合って、「なぁに?」って聞かれる。隣に立ってわかったけど、この梓お姉さんいつもと匂いが違う。


【シャンプーかえたの?】

「どうして?」

【においが、ちがうの】

「匂い?…もしかして、臭い?」

【いいにおい】

「でも違うの?」


うん、って頷くと梓お姉さんは「安室さんにくっついてたから、匂いが付いたのかも」って笑った。でも安室さんとも匂い違うし、なんとなく知ってる匂いな気がする。この体の持ち主の子が知ってるとかかな。


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