絡繰箱

『「怪盗キッドに告ぐ。今宵、鈴木大図書館にて世界最大の月長石、「月の記憶」を展示する。なお、宝石は三水吉右衛門の絡繰箱に入っており、拝みたくば自力で開けるか、開け方が書かれた紙を本図書館で探されたし。鈴木財閥相談役、鈴木次郎吉」…で、キッドはまだ何も言ってきてないの?』

「いいや、先程メールが図書館宛に届いたわい」


学校が終わって夕方。鈴木大図書館に向かえば既に蘭ちゃんたちは来ていた。小五郎さんも来ていたけど、どうやら風邪をひいたらしくマスクをしていて鼻声だった。大丈夫なんだろうか。絡繰物だからと阿笠博士も呼ばれていて、付き添いで哀ちゃんもいる。そして何故か昴さんもいる。本当に何故いるのこの人。

肝心の絡繰箱は、適当に開けようとすれば針などで指を怪我させる仕組みのようで、きちんとした順番通りに開けないと中身を拝むことさえ出来ないもの。図書館の中央に円形の小さなテーブルを設置しその上に置いて、見張りも付けずに置いてある。


『それでどうやってキッドを捕まえるの?』

「ワシが持っておるこのスイッチを入れると、テーブルの下の床に埋め込んである重量センサーが作動する。そして、誰かが入った時の重さと出た時の重さが一グラムでも違えば、天井にある鉄柵が降りてくるって仕組みじゃよ」

『つまり、箱を開けて中身だけ持っていくことも不可能って事?』

「そういう事じゃ!さらに!奥さんが言うには、箱を開ければオルゴールが鳴る!例えこの鉄柵をすり抜けたとしても、この図書館全ての出入口に設置した鋼鉄のシャッターは鉄柵と連動して降りる仕掛けになっておる!どちらにせよキッドは逃げられもせんわ!」


ガハハと豪快に笑う次郎吉さん。その後ろで姿勢よく立っている女の人が、さっき言っていた「奥さん」だろう。この人が本を寄贈する条件として箱を開けて欲しいと言ってきた人物なのか。よほど大切なものが入ってると見た。
奥さんは旦那さんが夜中に箱をこっそり開けているところを見たことがあるらしく、その時箱の図面に矢印やら数字やらが書かれた紙を本の間に挟んでいるのを見たから、箱の開け方は寄贈した本のどれかにあると言った。


「つまり、キッドより先に箱を開けるには…無闇矢鱈に箱をいじるより、箱の開け方が書かれている紙を探した方が早そうですね」

「寄贈された本はまだ別室に置いてある」


次郎吉さんに案内されて、箱が置いてある位置から近い部屋に入る。寄贈した本なんて貴重な本だろうから少ないんだろう、だなんて思ってた私が馬鹿だった。そりゃあこれだけの人数呼んでるんだから多いに決まってるよね。ざっと数えても一万冊はあるらしい。

一応、図書館のスタッフ総出で丸一日かけて探したが紙は見つからなかったらしく。ただ、一ページ一ページ丁寧に捲らず、パラパラと見ただけだから見逃しがあるかもしれないと。


「しかし、普通何かページの間に挟まってたなら、そのページがピラッと開くはずじゃが…」

「その紙をご主人が別の場所に入れ替えたのでは?」


昴さんが聞くと、奥さんは即否定した。旦那さんは先日交通事故で亡くなったから、予見して場所を変える事なんて有り得ないと。それに、奥さんが外出から帰ってくるといつも「紙が同じページに挟まっていた」と言っていたようで。


「だったら、奥さんが普段手に取らないような本に挟んであるんじゃ?」

「私が普段手に取らないのは、人が亡くなるミステリーとか…恐ろしい怪奇小説とかでしょうか…」


それを聞いた皆は、次郎吉さんに本の場所を聞いて手当り次第にミステリー小説と怪奇小説を探し出した。
小五郎さんは咳が酷くなってきたから薬を飲む為に離席し、阿笠博士とコナン君もトイレに行くため離席。その後すぐに蘭ちゃんと園子ちゃんもトイレに行った。


『奥さん怖いの苦手なの?』

「恐ろしいじゃありませんか…!」


両手をキュって握って言う奥さん。この人可愛い。

|

[ 戻る ]






×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -