女優さんと家政婦さん

阿笠博士とお姉ちゃんが商店街の福引でホテルのケーキバイキングを当てたから一緒にって招待してくれた。私以外にも、歩美ちゃん達もいて。どうやらお姉ちゃんにとっての「友人」と一緒にケーキバイキングという事らしい。


「珠雨お姉さんっていつも青いお洋服だね?」

『そう?』

「青が好きなのか?」

「彼氏さんがいつも青いスーツだからじゃねぇか?」

『ちょ、ちょっとコナン君…』


突然高明さんの話を出すニコニコと笑顔のコナン君。勘弁してくれ。
コナン君が私の彼氏に会った事を伝えると、歩美ちゃん達は「えー!?」と驚いた声を上げた。


「コナン君は、お姉さんの彼氏さんに会ったんですか!?」

「おう。この前おっちゃんと長野に行った時にな」

「へー!長野にいらっしゃるんですね…!どんな人でした?」

「かっこいい人だよ。頭も切れるし、ちょっと難しい言葉使うけど。ね、お姉さん!」

『そ、うだね…』

「へぇ…歩美も会ってみたいなぁ…」

『うーん…今度こっちに来た時に時間が合えば、歩美ちゃん達にも紹介してあげる』

「ホント!?」

『うん』

「約束ですよ!」

「絶対だぞ!」


小指を差し出してきた光彦君に、指切りげんまんと小指を結んだ。あまり高明さんこっちに来ることないから、紹介するとしても組織の事が終わってからになるだろうけど。
横を見るとお姉ちゃんも私のことを見ていて、「私にも紹介しなさいよ」と眉を顰めている。お姉ちゃんには紹介というか、昔教えた気がするんだけどな。明美お姉ちゃんは知ってたから、多分同じ頃に伝えた記憶。

ケーキのバイキングをしている会場に到着して、受付を済ませてすぐにケーキが並べられている場所に移動した。ショートケーキにチョコレートケーキ、シュークリームにタルトケーキ。ロールケーキやモンブランなど、沢山のケーキが並べられていた。


「美味しそ〜!」


ショーケースを見て顔をキラキラさせている子供達は、すぐに好きなケーキをお皿に乗せていく。元太君は二つのお皿いっぱいに乗せている。流石に食べすぎでは…?
どれにしようかと迷って、チョコレートケーキとシュークリームをお皿に乗せた。


「ねーちゃんそれだけでいいのか?」

『また後で取れるし、とりあえずこれだけで大丈夫』

「そっかー…ねーちゃん細ぇから、もっと食わなきゃだめだぞ!」

「元太君はもう少し食べる量減らした方がいいですよ!」


眉を顰めて言う元太君に、光彦君が笑いながら返す。「えー?」と不満そうに声を洩らす元太君は、そのまま二皿を持って空いた席を探し出した。見つけた席にお皿を置くと、「ここだぞー!」と手を振って教えてくれる。博士がコナン君に自分の分のお皿を渡して車椅子を押して連れていってくれた。


「ねぇねぇ!お姉さんは彼氏さんと喧嘩とかってするの?」

『ん!?ん、んー…す…るかなぁ…?』


席についてケーキを食べていると、歩美ちゃんがキラキラな笑顔でそんなことを聞いてきた。喧嘩っていう喧嘩はしたことないけど、似たようなことなら何度かある。


「え!?あの人喧嘩するの!?」

『喧嘩というか、言い合いはするかな』

「どうやって仲直りするんだ?」

『内緒』


しーって人差し指を口元に持っていってそう言うと、子供達は「えー」と口を尖らせた。意外にもこの話に一番興味があるのがコナン君らしくて、小声で「どうやって仲直りするの?」と歩美ちゃん達に聞こえないように再度聞いてきた。


『蘭ちゃんと喧嘩でもした?』

「ち、違うけど!?違うけど、さ、参考までに…」


顔を真っ赤にして反論するコナン君に「参考にならないと思う」と言えば、「どんな方法があるのか知っておきたい」と。確かに仲直り方法なんて時と場合によるけど「ごめんなさい」の一言で済まない時あるしね。

皆に聞こえないように教えようと、コナン君の耳元に顔を近付けた時、ふと気づいた。


『君、実年齢いくつだっけ』

「17、だけど?」

『……秘密』

「はあ!?」


少し怒ったコナン君に「未成年に話す内容じゃないわ」と言えば察したようで、その隣にいるお姉ちゃんも聞こえていたらしく二人して顔を真っ赤にしていた。

察してくれて助かる。

そんな二人の表情にキョトンとしながら、元太君がモンブランを食べようとした時。オモチャのヘリコプターが飛んで来て刺さってしまった。それを取るとすぐにその持ち主らしい女の人が走って来る。


「ご、ごめんなさい!!ボウヤ、ケガしなかった?」


ショートカットで帽子を被った可愛い女の人は、ホテル前のお店で買ってスイッチ入れたら操作が上手く出来なくて、元太君のケーキに突っ込んでしまったと謝った。


「あれ!?もしかして、タレントの北見沙弥さんですか!?」

「ゴメラに出てた人だよね?」

「しーっ!大きな声で言わないで…!私がこのホテルに泊まってるの内緒だから…!」

『…有名な人?』

「お姉さん知らないの!?いーっぱいテレビに出てる人だよ!」

『ごめんね、私テレビ見ないから』

「ニュースとかしか見ない?」

『ニュースすら見ない』


テレビ自体はあるけど私は付ける事さえない。零さんが気晴らしに付けるくらい。
昔事故で足を無くした時に、大きく報道されてもう居ないお母さんが何度も出て悲しくなって、ニュースを見たくなくてそれ以降テレビは自分からは見なくなった。付いてたらボーッと画面を見るだけで内容は頭に入ってこない。

もう報道されてないのは分かってるけど、精神的に「嫌」って気持ちが大きい。

沙弥さんがお詫びに代わりのケーキを取ってきて、一緒に写真撮ってあげると子供達に言うと、後ろから別の女の人が沙弥さんに話し掛けた。綺麗な金髪につばの広い帽子を被った、綺麗な女の人。


「そうやってわざと仲良くなった子供達との写真をブログにアップして、ブログの人気ランキングを上げる算段ね?」

「そ、そんなつもりはないんですけど…」


どうやらこの女の人もタレントさんのようで、二人はとても仲が悪いらしくとある番組の企画でブログの順位を争っている最中なんだとか。負けた方が丸坊主という罰ゲーム付きで。


「まあ、勝つのは私に決まってるけど」

「それはまだ分かんないかと…」

「あら、あなた私のブログ見てないの?私知っちゃったのよ、あなたのひ・み・つ…それを公表されたくなかったら、早めに白旗を揚げるのね」


彼女はそう言うと、後ろにいた茶髪の女の人に部屋に戻る事を伝えて踵を返した。ブログ用の写真を撮りに来たようで、ネタ被りするのは嫌だからと茶髪の女の人に頼んだ物を買ってくるように言い、スタスタとその場から去ってしまった。

茶髪の女の人はコナン君の知り合いみたいで、二人が離れた時に声をかけていた。


「もしかして桜子さん?」

「コ、コナン君!?」

「桜子さんって家政婦さんじゃなかった?」


茶髪の女の人は米原桜子さんという家政婦さんで、金髪のタレントさんのマネージャーさんが体調不良でお休みの間だけ身の回りのお世話をしてほしいと紹介所に依頼がきて受け付けたらしい。
仲の悪いさっきの二人が同じホテルに泊まっているのは、今度始まるドラマの舞台がこのホテルで、二人はWヒロインで出演するらしく、その二人は撮影中ホテルが部屋を貸してくれているんだとか。お姉ちゃんがそのドラマを知ってるみたいで、今度やるというそのドラマは続編に当たるらしい。

お姉ちゃんがハマるってことは多分、なんかそういうドロドロした感じなんだろうな。

二人の事を教えてくれたあと、桜子さんは頼まれたものを買いにホテルから出て行き、すれ違いで沙弥さんが元太君にケーキを持ってきた。


「じゃあ、私台本覚えなきゃだから。本当にごめんなさいね」

「ドラマ楽しみにしてます!」

「ありがとう」


約束通り元太君達と写真を撮った沙弥さんは、そのまま自分の部屋に戻り私達はケーキを食べに自分達のいた机に戻った。

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