ハンバーグ

義足を作ったお店から出来上がったと連絡が入った。いつもは出来上がるまで長野の方にいるのだけど、前回は昴さんと有希子さんがいたから出来上がる前に帰宅し、今日もう一度長野へ向かう事に。

それを高明さんに聞かれて答えると、「なるほど」と言って翌朝まさかの迎えに来てくれた。


『すみません、忙しいのにわざわざ東京まで迎えに来てもらって』

「いいんですよ」


今日一日の休みをもぎ取ったとかで、疲れてるだろうに長野から三時間かけて来てくれた。嬉しいけど流石に休んで欲しい。
義足を受け取りにお店に直行して、不備がないことを確認してから支払いを済ませ、別荘へ。到着してからもう一度付けてみて、数歩歩いてみる。特に違和感とかはないから大丈夫だろう。


「今回のも可愛らしいですね」

『たまにはこういうのもいいかなと』

「いつも黒や白で、稀に青でしたからね」

『このデザインならピンクも可愛いかなって』

「ええ、とても」


リビングのソファに座って足をパタパタと動かす。私の隣に高明さんが座って、パタパタ動かす私の足をじっと見ていた。


『…なんでしょう?』

「いえ、可愛い動きだなぁと…」

『……高明さんって、私と話す時…三国志の名言とか言わないようになりましたよね』

「直球で褒めるとあなたが可愛い顔になるでしょう?」


要は、褒められられてない私を直球の言葉で褒めると、顔が赤くなってるのを見るのが楽しいと。そういうことか。意地悪いぞこの人。

少し眉を寄せると、「すみません」と笑いながら頭を撫でられる。撫でられるのは嫌いじゃないから、そのままにしていると携帯が鳴る。確認すると鳴っていたのは私の携帯で、真純ちゃんから電話だった。
廊下に出て電話に出ると、お兄さんに頼まれ事をされたらしく、明日森林浴も兼ねて一緒に長野に出かけないか、ということだった。行くと返事をすると、嬉しそうに「じゃあ明日迎えに行くから!」と言われて電話が切れた。すぐに今長野にいる事をメールで伝えると「じゃあそこに迎えに行くよ!」って返ってきた。住所を送って、リビングに戻ると、ソファに座ったまま寝ている高明さんが。

やっばり疲れてたんだよ、この人。
頬をつついても起きないから、ここ数日大変だったんだろうなと。


『おやすみなさい』


そう言って頬に口付けして、自分の部屋に荷物を持っていく。高明さんが起きるまで暇だから、少し前に従姉妹が送ってきた本でも読もうと本を持って、もう一度リビングに行き、高明さんの横に座った。

半分ほど読んだ頃。時計を見るとここに来てから二時間くらい経っていた。ふと横を見れば高明さんがいない。起きたことに気づかないくらい集中してたのか。


「読み終わりました?」

『いえ、まだ半分程で…』

「すみません、寝てしまって」

『大丈夫ですよ』

「夕飯の買い出しに行きましょうか。それとも食べに行きますか?」

『買い出し行きましょ。何食べたいですか?』

「そうですねぇ…貴女が作るものはなんでも美味しいですから…」


そう言って高明さんは手を差し出した。握ってソファから立ち上がり、カバンを持ってそのまま外へ。手を繋いで近くのスーパーまで歩いて行くのが、お決まりのようになっていて、ぎゅって握ると、「どうしたんですか?」と首を傾げて聞いてくる。


『可愛い顔なのに、お手手は骨張ってるんですよねぇ…』

「…褒めてますか?」

『褒めてますよ』

「複雑な気持ちですね」


あまりにも手をにぎにぎと触っているものだから、こそばゆいのか「やめてください」と言われてしまった。それでも手を離さない辺り私の事好きなのかなぁ、と嬉しくなる。

ご飯はこの前「好き」って褒めてくれたハンバーグにしようかなぁ。

|

[ 戻る ]






×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -