チョコレート

『ねえ毛利さん』

「なぁに?」

『伴場さんが歩いたところに茶色の何か付いてるんだけど…』


先程から伴場さんが歩いたところに少しだけど茶色の何かが残っていた。
外に出たのなら雨降ってるから濡れた土だと思うけど、それにしては少量すぎるしずっと付いてるからおかしいなと。


「あぁ、チョコレートのクリームじゃない?さっき安室さんのお兄さんがケーキ落としちゃって、それ踏んじゃってたから」

『そっかぁ』


チョコレートのクリームなのか。
つまり彼は「外に出ていない」。

だって出ていたら生クリームが落ちてしまっているから。靴を履き替えて外に出たとしたなら今頃その替えの靴が見つかっているはず。


「……彼の事を色々詳しく調べてたんですけど」

『ん?』


伴場さんの靴の事を考えていたら兄と刑事さんの会話が耳に入ってきた。


「彼は彼女と同じホテル火災で助け出された2人で、身元不明のまま同じ教会で育てられていたことが」

『お兄ちゃんそれ本当?』

「ん?あぁ。かなり大きな火災で死者も多く、2人とも赤子だったらしいよ。彼の方はすぐに里親に引き取られたらしいけどね」

「だが何故それで彼女は顔を曇らせたんだね?」

「さあ…あとは自分で調べると言ってましたけど…」


そこで刑事さんと兄の会話が終わったらしく、兄の裾を引っ張って気になったことを聞いた。


『加門さんって身長小さかった?』

「うーん…かなり高いヒールを履いていたけど……それを含めてもこの位だったかな」

『日本女性の平均身長は?』

「このくらい。何かわかったのか?」

『うん、大体』

「…相変わらず頭の回転が早い子だ。探偵の兄が負けてしまうよ」


そう言って私の頭をわしゃわしゃ撫でた兄は、刑事さんの所へ言って話を聞きに行ってしまった。

その場に居合わせたかった訳じゃないし、人から話を聞いただけだけど。私の考えが正しいのなら加門さんの自殺で伴場さんは何もしていない。

というより、何も知らないのでしょう。


「ねえ、お姉さん」

『ん?』


可哀想と思って伴場さんを見ていたら、コナンくんがトントン、と軽く指でつついて来た。


『なぁに?』

「お姉さんがお店に来た時って、雨降ってた?」

『止みかけだったから小雨だったけど降ってたよ』

「そっか…」


んー、と考える彼に、少しだけヒント…というより答えを教えることにした。


『……伴場さんの靴、汚れてないよね』

「え?」

『外に出てたら靴の裏のチョコレートは落ちてるはずだよね』

「あっ、うん、そうだね…」

『それに加門さんの身長は低かった。同じホテルの火災で救出された赤子。加門さんとほぼ同じDNAが検出された伴場さんのヘアブラシ』

「……」

『考えられるのはひとつじゃないかな、小さな探偵君?』

「……お姉さん、すごいね」

『あとは君の仕事だよ』


「新一くん」と口パクで言うと、彼はとても大きく目を開いた。それににっこり笑って返して私は何事も無かったように窓の外を眺めた。


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