すぐに蘭ちゃんが警察を呼んで、高木刑事が来た。事情を説明して、エレベーターの内側に赤いスプレーでサヨナラと書かれているし、こめかみを撃つところを私達が見たことを聞いて、高木刑事は現状では自殺だろうと。
しかし、階数表示の上にある防犯カメラにスプレーが吹きかけられていることと、スプレー缶を持った誰かの右手が映った事を管理室に連絡取って確認した平次君が他殺だと判断した。私もそう思う。

こめかみを撃った時、拳銃は左に持っていたからおそらくこの人は左利き。拳銃で左手が塞がっていて右手で防犯カメラを潰したのなら分かるけど、その後に扉のサヨナラの文字を書いただろうから、態々左手に持ち替えたとは考えにくい。


「死体見つけた後、管理室に電話して階段見張らせとったさかい、あんたら警察が来るまで階段使て降りてきた奴は一人もおらんから…この三階より上にまだ犯人がおるっちゅうこっちゃ」

「なんなら一部屋ずつ聞いて回りましょか」

「じゃあ、この上の四階から…」


大滝さんと高木刑事は四階の住人さんに事情聴取をしに行き、現場に居合わせた人は一旦帰らせた。高木刑事達を待つ間、平次君が私の近くに来て耳打ちしてきた。


「この事件、今の段階でわかるか?」

『無理だよ』

「…せやろな…なぁ、ひとつ…失礼な事聞いてもええか?」

『いくらでもどうぞ?』

「あんた…生まれつき足無かったか?」

『九歳まではあったよ。平次君に会ってた時はまだ足あったから、違和感なんでしょ?』

「せ、せや!やっぱりあったやんな!?」


彼の記憶にある私と、今目の前にいる私が一致しなくて頭の中ごちゃごちゃで気持ち悪かったんだろう。それが無くなって、平次君スッキリした顔になった。と思えばすぐに神妙な表情になった。


「でもなんで名前変わったんや?下の名前までちゃうやろ?」

『んー…まぁ、色々と』

「……ほーん?」

『コナン君達に本名言ったら、平蔵おじ様に「東京にまで出張ってきて探偵ごっこしてて邪魔だ」って言うから』

「あんたなぁ…」

『しかしまぁ、大きくなったねぇ』

「……ねーちゃんと最後に会ってから何年経ったと思ってんねん…俺記憶無いで…」


頭をわしわしと撫でると、平次君は恥ずかしそうに目を逸らす。手を払わずに、逆に撫でやすいようにと頭を下げてくれる辺り嫌では無いらしい。

最後に会ったのはお母さんのお葬式の時で14年前だから、平次君三歳じゃない?


『…なんで私の事覚えてるの?』

「オカンが写真でよォ見せてくれてたからや。あんたの話も耳にタコが出来るくらい聞かされとるで」

『平蔵おじ様も静華さんも変わりないようで何より』

「…まぁ、とりあえず、大滝ハンが戻ってきたら俺らも事情聴取行くさかい。あんたも付いてくるやろ?」

『行かないけど?』

「え!?な、なんでや!」

『…別に、警察もいるし…小五郎さんと平次君に、コナン君の探偵3人もいるんだから…人足りるでしょ』

「…あんた、アイツのこと知っとんのかいな」


びっくりした顔で私の顔を見てくる。普通に過ごしてたら警察関係者でも関わらない事案だしね。

平次君と話していると、大滝さんと高木刑事が戻ってきた。先月の自殺が理由でかなりの住人が引越ししており、残っている住人も電話していたり、ホームビデオを撮っていたりとで、アリバイが証明出来ない人は三人しかいなかったらしい。詳しい話を聞きに、平次君と小五郎さん、コナン君は、高木刑事達ともう一度その住人に話を聞きに行って、私と蘭ちゃん、和葉ちゃんはエレベーターのところに残っていた。


「な、なぁ!珠雨、ちゃん…!」

『ん?』


ボーッとエレベーターをまだ調べている鑑識さん達を見てたら、和葉ちゃんに声を掛けられる。


「やっぱり、平次と知り合いなん?」

『うん、顔馴染みっていうか、昔馴染みっていうか…』

「…ほ、ほんなら…平次のこと、好き…?」

『え?うん。好きだけど』


嫌いでは無いし。というか嫌いになる要素ないし。


「ほ、ほら〜!言った通りや!!アタシ珠雨ちゃんに勝てへんよ!」

『な、なに?』

「えっと、実はね…」


蘭ちゃんに泣きついた和葉ちゃん。何のことか分からなくて首を傾げると、蘭ちゃんが説明してくれた。
和葉ちゃんは昔から平次君に片想いしていて、ずっと私が平次君と仲良くしてるのを見て不安になったと。お詫びに抱えたらと提案したのは自分だから、仲良い二人に割って入れなかったんだって。

つまりさっきの「好き?」は「恋愛的に好き?」って質問だったのか。


『平次君は、友達として、好きだよ』

「へ?」

『私も平次君もお互いに友達としか見てないし、大丈夫だよ。紛らわしい答え方してごめんね?』

「ほ、ほんまに…?」

『本当に。私、好きな人いるし』

「え!?い、いるの!?誰…?」

『内緒』


まあ、これくらいは言っていいでしょう。

和葉ちゃんも落ち着いたみたいで、私の好きな人を「知ってる人かなぁ」とか「どんな人かなぁ」とか蘭ちゃんと一緒に考え始めた。蘭ちゃん達が高明さんと少し前に会ってるのは知ってるけど、和葉ちゃんは無いんじゃないかな。

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