カメラの映像

コナン君が伝えたのか、夕方にお姉ちゃんから博士の家でドローンを飛ばして遊ぶからと誘われた。子供達も楽しみにしてるからと言われたら行かない訳にも行かず、午前中だけでいいならと博士の家にお邪魔した。

庭に置かれたドローンを阿笠博士がリモコンで操縦すると空高く舞い、子供達の反応からするに随分高い位置にあるらしい。
らしいというのも、私はリビングのソファに座り窓から飛ぶのを見ているから。お姉ちゃんが長時間外にいるのは危険だからと、徒歩で来て少し疲れていた私を見て怒られたから現在リビングにいる。


「にしても、あんな高度でどうやって操縦するんだ?」

「衛生の通信を使ってるのよ」


ドローン本体にあるカメラから送られてる映像と、緯度経度の情報を元に操作するものらしく、方向や速度、カメラの操作を同時にしないといけないとかで博士の指は忙しなく動いている。


『程々にしないと、法律に触れるよ』

「それはうるさい程言っているから大丈夫よ。……多分」

「オイオイ…」


「どうぞ」とお姉ちゃんがお茶を持ってきてくれた時、テレビからもうすぐ開催される東京サミットの情報が流れ出した。各国首脳が集う会議が来週東京で行われると言うことで、ワイドショーなどではこの話が毎日のように特集されていた。

裕也さんのいる公安部の刑事達も警備の下見で大忙しで、ここ最近は毎日のように走り回っている。今日から零さんも警備に当たるようで、数日帰ってこないって昨日改めて言われた。

東京サミットの特集が終わると、次はもうすぐ地球に帰ってくるという無人探索機〈はくちょう〉の話題へと移る。それをぼーっと眺めていると、途中で画面がまた切り替わる。


《番組の途中ですが、たった今入ったニュースです。来週、東京サミットが行われる国際会議場で、先程大規模な爆発がありました》


緊迫したアナウンサーの声で、そう伝えられる。爆発時の防犯カメラの映像が流れ、それには凄まじい音と共に国際会議場が爆発。爆発の衝撃とそれらで飛び散る瓦礫で一瞬にして画面が真っ白になる。


《現場となった総合型リゾート、〈エッジ・オブ・オーシャン〉はまだ開業前だった為、利用客はいませんでしたがサミット警備の下見をしていた警察官数人が死傷したとの情報が入っています》


その一言で一気に血の気が引いていった。
零さんは分からないけど、裕也さんは確か施設の中の下見だったハズ。確実に爆発に飲み込まれてる。

慌ててカバンからスマホを取りだして、裕也さんに連絡をするとすぐに通話が繋がった。


『今爆発が起こったってテレビで…』

《自分は無事です。少し瓦礫が当たりましたが、大した怪我ではありません》

『他の人たちは?』

《全員を確認できたわけではありませんのでなんとも…》

「珠雨!」

『どうしたの、お姉ちゃん?』

「爆発直後の防犯カメラの映像に…見間違いかもしれないけど……ポアロで働いてるあなたのお兄さんが……」


歯切れが悪そうに言うお姉ちゃんのその言葉に、背中が冷えた気がした。


『…今の聞こえた?』

《聞こえました!直ぐに確認します!》


そう言って裕也さんは通話を切った。

防犯カメラの映像がテレビで流れたのはまだ仕方ない。問題はそこに「安室透」が映っている事。
少し前に零さんは、組織に入り込んだスパイかもと疑われていた。彼を始末するためにやった…とは考えられないか。何事も無かったかのように始末をするのが組織のやり方。こんなド派手にする事はまず有り得ない。
となると、テロか事故か。テロだとすると、下見の時点でそれを行ってしまうとただ当日の警備が厳しくなって、犯人の首を絞める事になるだけ。


『大丈夫かな…』

「大丈夫だよ。あれくらいじゃ、擦り傷で済ませるような人だって、珠雨さんが一番分かってるでしょ?」

『……そうだね…』


零さんに関しては特に心配してないのだけど。私が心配しているのは、零さんがこれから「何をするのか」よ。

何事もないならとお姉ちゃんが外にいる子供達の元に行って、少ししてから裕也さんから電話が来た。零さんが無事である事が伝えられて、安心して小さく息が零れる。それを見たコナン君も安心したようで、「よかった」と小さく呟いた。


《それで、ですね》

『うん?』

《…澪さんの護衛は降谷さんと自分ともう一人、眞鍋が担当していたと思うのですが》

『うん、そうだね?』

《明日から、眞鍋は外れます》


「なんで?」と聞く前に察した。
あの人も確か警備に携わるから今日下見だったはずだ。大怪我したか、それとも…


『分かった』

《新しい護衛の人物が決まり次第また連絡しますが、サミット開催日が近いことと今回の爆発事件でこちらも慌ただしいのですぐには配属されないかと》

『大丈夫だよ』

《…澪さん》

『ん?』

《…いえ、なんでもありません。自分は捜査に入りますので、これで》

『大丈夫だよ』


そう言って電話を切る。息を吐くとコナン君が心配そうに私を見ていた。


『お兄ちゃん大丈夫だって』


笑って言って立ち上がり、お姉ちゃん達のいる外に出る。歩美ちゃんに、「一緒に遊ぶ?」って聞かれたけど用事が出来たと言って断り、そのまま公安部署に向かった。

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