FBIと小学校

「検査で疲れているところ申し訳ないが、少々寄り道してもいいかな」


病院で定期検査を終えて、帰る為に車に乗り込んだ時。兄にそう言われた。何か聞くと、探偵として依頼してきた人が襲われて意識不明の重体だそうで。襲われたのは昨日で、通話履歴に兄もいたから呼ばれたんだそう。大丈夫だと答えると、兄は直ぐに指定されて場所に車を走らせた。場所は小学校。
到着して兄は、既に待たせているのに車椅子を取り出して、校舎内に入って玄関先でタイヤを拭いてとしていると更に待たせることになるからと、私を抱えて校舎内に入った。


「遅くなって申し訳ありません、警部さん。妹の検査に付き添っていたものですから」


職員室の前に数名の教師と思われる人達がいて、そこに行くと中に高木刑事と目暮警部が見えた。中に入ると、コナン君と外国人と思われる2人もいて、容疑者から事情聴取をしている最中だった。

兄が、近くにいた教師の人に椅子を借りて私をそこに下ろす。


「ところで、そこのお二人は英語の先生か何かで?」

「あぁ、こちらはFBIの方達で…訳あって捜査に協力を」


高木刑事は、近くにいた外国人と思われる二人をFBI捜査官だと紹介してくれた。

兄は個人的な理由でFBIが嫌いだし、この人達もきっと秀一さんの事で私達が嫌いなはず。正確には兄を、か。
どうしよう、ここ空気最悪なんだけど。テストでよくある筆者の気持ちを書くなら帰りたい気持ちでいっぱいです。


「ほぅ…FBI、ですか。アメリカ合衆国連邦捜査局ってやつですね?よく映画やテレビドラマでお見かけしますよ。手柄欲しさに事件現場に出張って来て、ドヤ顔で捜査を引っ掻き回し地元警察に煙たがられ、視聴者をイラつかせる捜査官」

「何ィ!?」

『ちょっと』

「あ痛っ」

『失礼なこと言わない。ごめんなさい、兄が』


FBIの一人の男の人が、イラつきを表に出していたから場を落ち着かせる事と、単純に兄にイラついたから、兄の背中を思いっきり叩いた。代わりに謝れば、もう一人の女の人が「気にしないで」と笑って許してくれた。男の人も落ち着いて、「大丈夫」だと言ってくれた。

目暮警部が兄に被害者との接点を聞くと、兄は探偵としてストーカーの調査と身辺警護を依頼されて、尚且つこの事件の通報者である事が発覚した。犯人のシルエットは見たものの、車の中に別の依頼人を乗せていて、その人が関わり合いたくないというから救急車が来てからその場を立ち去ったと言う。
確か昨日はベルモットお姉さんと一緒に出掛けていたし、関わり合いたくないと言ったのは本当なんだろう。人目を引く訳にはいかないから。


「じゃあ、珠雨君も見たのかね?」

「妹は三日ほど前から連日検査でしたので入院を」

「なるほど…ごめんね、検査で疲れてるだろうに」

『大丈夫』


高木刑事は私のところに来て、目線を合わせてそう言ってくれた。高木刑事は兄よりお兄ちゃんみたいな所ある。


「もしかして、寒かったり、体調悪かったりする?」

『ううん、大丈夫だけど…どうして?』

「この時期にしては珍しくハイネックのセーターだから…寒いのか風邪引いてるのかなって…」

『あっ、ううん。気分的なものだから、気にしないで。ごめんね、気を使わせて』

「そうかい?ならいいんだけど…」


首元隠すためのハイネックの服が厚手のものしかなかったから着ているだけなのだけど、体調不良なのか寒いのかと気を使わせてしまった。

高木刑事は航さんと同じく、よく人を見てると思う。


『ところで、被害者の人ってこの小学校の先生なんだよね?』

「うん、そうだよ」

『どうしてFBIの人も捜査してるの?被害者の人は大きな事件に関わってるとか?』

「いいえ、被害者の夏子は私の友人。昨日彼女に連絡をしたから、参考人として呼ばれたのよ」

「なるほど。だとしたらFBIに恨みを持った輩の仕業ってことも…」

『ないでしょ。いい加減にして』

「いてっ」


兄の背中をグーで殴る。すぐFBIに挑発するんだから、やめてよ本当。裕也さんが胃に穴が空きそうな理由分かる。この空気の中にずっといるからだろう。そりゃ穴も空く。いや穴が空くだけで済まないと思うけど。

コナン君も少し焦ったように空気を持ち直そうと、先にこの事件を解決しようと提案して来た。確かに現状優先するべきはFBIと組織の喧嘩より、犯人を探すこと。小学生に言われてどうするんだ。


『コナン君』

「なに、お姉さん?」


小声でコナン君に手招きをする。


『ごめんね。あの人FBI嫌いだから…』

「ううん、大丈夫」

『でね、これ』

「…?なにこれ?」


検査の間に病院で書いたメモをコナン君に渡した。まだいいかなと思ってたけど、今渡した方がよさそうだと判断したから。


『連絡先。昴さんと、組織のキールお姉様と、後は大事な人達しか知らない。念の為渡しておくね』

「い、いいの?」

『勿論。兄も知らないし、組織の誰も知らないからハッキングされる恐れもない。こっちの方が安全でしょ?』

「うん…ありがとう」


「後で登録しておくね」って言ってコナン君は紙をおしりのポケットに仕舞った。「昴さんとキールお姉様しか知らない」で信用してくれたんだろう。二人とも潜入捜査官だから。

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