ヘアピン

持ってきていた本を読んで時間を潰していると、お昼が出来たらしく、蘭ちゃんと園子ちゃんが冷やし中華の入ったお皿をお盆に乗せて持ってきてくれた。


「はい、これ安室さんの分。食べられないのは残してていいからって、お兄さんが言ってたよ」

『ありがとう』

「あれ?コナン君は?」

『エアコンの調子が悪いからって、石栗さんの部屋に行ったよ』

「そういえば効いてないね…珠雨ちゃん、暑くない?大丈夫?」

『うん、平気』


「そっか」と言って、蘭ちゃんと園子ちゃんはコナン君にお昼の冷やし中華を届けに2階へ上がって行ったが、直ぐに戻ってきた。ノックをしても全く返事がなく、ぐっすり眠っているらしい。

しかし、それから2時間ほど経ったがコナン君は兎も角、石栗さんが部屋から出てこない。団体戦をやろうと言い出したのは彼なのに。時計は既に15時を回っていた。
部屋の扉をノックしても出てこないから、鍵をかけて寝てるんだろうと梅島さんが言った時、二階から何かが床に落ちたような、大きな物音がした。


「な、なんだ?今の音…」

「石栗君の部屋の辺りじゃない?」

「もしかして、何かあったんじゃ…琴音、あなた部屋の合鍵あったわよね?」

「それが…石栗君の部屋の鍵だけ昨夜から見当たらなくて…」


鍵がないなら入る事も出来ないと、高梨さんが隣の部屋からベランダを伝って窓から確認しようかという話になった。以前も同じことをしたらしいので、言い出しっぺの高梨さんがやる事になったが、兄がピッキングのコツを知っているとかで、鍵を開けて部屋に入ることになった。

皆で二階へ向かって、桃園さんが「ここが石栗君の部屋です」って案内してくれた。


「珠雨、ヘアピンあるかい?」

『あるけど…』

「2本貸してくれる?」

『はい』

「ありがとう」


常に持ち歩いている小さいポーチからヘアピンを取り出して渡すと、2つに曲がっていたピンを真っ直ぐにして鍵穴に刺した。カチャカチャと弄り、暫くするとカチャッと鍵が開いた音が聞こえた。


「開いたようですね」

「すっごい、安室さん!」

「まるで怪盗キッド!!」

「セキュリティ会社の知り合いがいまして…珠雨、これどうする?」

『返して』


もう使えないだろうヘアピンを「返せ」という返事が意外だったんだろう。兄はキョトンとした顔でそれを私の手のひらに乗せた。そして鍵を開けた扉を開けようとドアノブに手をかける。だが、何かで扉が塞がれてて少ししか開かないようで、何度か開け閉めを繰り返しすと中からコナン君の声が聞こえた。


「開けるなァ!!」

「コ、コナン君?」

「開けちゃダメだよ…ドアふさいでるの、石栗さんの死体だから」

「え!?」

「な、なに?どうしたの?」

「石栗さんが中で死んでいるようで…」

「な、なにィ!?」


兄がそう言うと、小五郎さんはすぐに蘭ちゃんに警察を呼ぶように言った。蘭ちゃんは連絡を入れてすぐに警察がやってきて、場所が二階で扉が遺体で塞がれてるというと、鑑識さんと警部さんが梯子を使って窓から部屋の中に入っていった。
小五郎さんと知り合いみたいだったから、多分コナン君とも知り合いなんだろうなぁ。

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