怪盗キッド

快斗君はすぐに行動に移し、中森さんを予告状のある場所へと誘導した。予告状は中森さんの靴の裏に貼り付き、それには「今夜零時に妖精の唇を頂きに参上する」と書かれていた。


「いつの間にこんなカードを貼り付けやがったんだ?」


靴の裏に付いていたカードを首を傾げて見つめる中森さんに、小五郎さんが「ここに来る途中じゃないか」と言うも高明さんが「いや、」と否定した。
その高明さんは手に別のカードを持っていて、それには「明日20時参上」と書かれている。それを聞いて平次君とコナン君が床を見渡すと、「明後日来る」「今回はパス」と書かれたカードも見つかった。


「予め色々なパターンのカードを用意して床に仕込んでおき、これと決めたカードの上を中森警部が通るように仕掛けることで、たった今決行を決めたが手の内に熟考した計画があると思わせたかったんでしょう」


全部バレてて笑う。

快斗君の方を見ると、高明さんのその言葉に彼の顔には焦りが出てた。
盗まないなら手伝ってあげたいけど、きっと何も出来ないのよねぇ。コナン君と平次君は誤魔化せると思うけど、高明さんいるし。バレたら絶対怒られるし。情報を引き出すくらいなら出来るだろうけど。


『ねぇ、これなに?』

「ん?どれじゃ」

『この、扉の横の…これ。次郎吉さんの事だからただの扉の開閉スイッチじゃないでしょ?』


硬質ケースの入口にある白い縁にある、ボタンを指さして聞いた。それは非常ボタンで、押せば10分間扉が閉まりロックが掛かるらしい。


「つまり、予告時間一分前に扉を閉めれば、キッドの犯行予告は史上初めて失敗に終わるという寸法じゃわい!!」

「それに、指輪のリング部分を内蔵センサーを取けたものと入れ替えていてね。もし盗まれたとしてもこの出入り口から出れば、警報音がなるんだ」

『へぇ…じゃあ、予告の時間を前後したとしてもセンサーでバレちゃうんだ』

「うむ、そういうことじゃ!!奴が来るまでまだ時間もある。お主らはそれまで館内を見て回ると良いじゃろう!!」

「そうしよっか」

「お主も気を張り続けても疲れるじゃろう。警備の者が待機しておるから、お嬢さんと一緒に時間までゆっくり館内を回るとよい」

「では、お言葉に甘えて…珠雨、一緒に回りましょうか」

『はい』


次郎吉さんのお言葉に甘えて、高明さんと一緒に館内を巡る事になり、入口の方からゆっくり回ろうと高明さんが腕を差し出してくれたから、腕を組んでくっついて歩く。
手を繋いで歩いたりする時毎回歩幅も歩くスピードも全部合わせてくれるけど、歩きにくくないのかなぁ。そう思って顔を見ると「何か?」と首を傾げる。

かっこいいな。


『かっこいいなって思って』

「あまり顔に出すとバレますよ」

『久しぶりに会えたから顔が緩んじゃうんですよね』

「それなら、支えるという名目でくっついていない方がいいですかね」

『やだ』


高明さんの腕にしがみつくようにぎゅってすれば、後ろから「仲良すぎちゃう?」と平次君の声が聞こえた。振り返るとコナン君と平次君がいて、蘭ちゃんと和葉ちゃんはいなかった。聞けば外国人のお客さんがいて、和葉ちゃんの服にコーラを思いっきりぶちまけたからお手洗いに着替えに行ったらしい。蘭ちゃんも一緒に行ってくると言ったから二人で待っているんだとか。


「ねーちゃん、彼氏おんのにそないにくっついてええんか?」

「おや、いることは話してるんですか?」

『はい。平次君は私の本名も知っている子なので、割となんでも話してます』

「なるほど、そうでしたか」

『で、平次君。この人が私の彼氏』

「どうも、彼氏です」


そう言うと平次君は私と高明さんの顔を交互に見て、コナン君の方を見た。コナン君はそれに頷いたから、「ほ、ホンマに…?」と目を見開いて聞かれたから私も頷いた。
高明さんと平次君は初対面だったらしく、お互いに自己紹介をすると、平次君の事を由衣さんから聞いたことがあるとかで高明さんは「君が例の大阪の探偵君ですか」と呟いていた。由衣さんが一時期警察を辞めていて、その時に事件に遭遇して現場に居合わせたのが平次君と和葉ちゃん、そして小五郎さん達らしく、それで顔見知りだと教えてくれた。


「僕が所轄にいた頃の話ですね」

『所轄にいた頃…葵さんの旦那さんの事件の頃…?』

「その少し前です」

「葵さん?」

『あれ、コナン君もその事件の調査に居たって聞いたけど…』

「希望の館の事件ですよ」

「あぁ、小橋葵さん?」

「ええ、」


葵さんは高明さんが昔好意があった人で、車のグローブボックスにある本の作者さん。私もその本が好きで実家の自室にある。

話をしていると蘭ちゃんが戻ってきた。和葉ちゃんは着替えにもう少し時間が掛かりそうだとかで、「先に外出とってー」と言われたから一人で戻ってきたって。


「珠雨ちゃん、そのネックレスって指輪?」

『うん』

「可愛いね!贈り物とか?」

『そんなところ』


そう言うと蘭ちゃんは「似合ってるね!」と笑って言ってくれた。「指輪」の言葉にコナン君は何か言いたげな顔をしていたけど、これはお母さんの形見。高明さんに貰ったものは今日はお財布に入ってる。

蘭ちゃん達三人は和葉ちゃんを待つので、別れて高明さんと博物館の見学に戻る。


「ここ最近で珠雨にはご友人が増えましたね」

『そうですね、結構増えました』

「赤女の事件の時にいたお二人も、ご友人でしょう?」

『はい。園子ちゃんと、真純ちゃん』

「ご友人が増えて安心する反面、少し寂しくも思うんです」


高明さんの方を見ると、少し悲しそうな顔をしていた。


「澪が楽しそうにしてるのを、僕ではなく別の人物が見る事に、嫉妬してしまうんですよ」

『…め、珍しいですね、高明さんがそんなこと言うなんて…』


眉を下げて困ったように言う高明さん。
高明さんが嫉妬心を表に出す時は大体が、そういう、えっちな事をしている時だったりする。嫉妬して少し乱暴な時の高明さん、凄い気持ちいいからわざと嫉妬させちゃうとか、そういうのは今は置いておいて。
でも確かにずっと遠距離状態だから、楽しい時間のほとんどは高明さんの隣じゃない。そろそろ組織の方終わらせて貰いたいなぁ。


「澪の「手伝い」が終わるまで待つとは言いましたが、ここまで嫉妬する事になるとは思いませんでした」

『あの頃は友達いなかったですしね』

「終わったら、ご友人達とは関係を続けるんですか?」

『…分かんないです。そこはまだ何も言われてないので』


コナン君や零さん、秀一さんみたいに、私の事を知っている人達だったら大丈夫だと思うんだけど、蘭ちゃんや和葉ちゃんはどうなんだろう。零さん次第になるのかな。


「話は変わりますが、澪は東京の刑事さんに知り合いはいますか?」

『え?あぁ、まぁ…』

「先日も話しましたが、私宛ての封筒がとある刑事のロッカーに入っていて確認するために東京へと来たんですが…実はその刑事の名前、聞き覚えがなくて」

『知らない人のロッカーに、高明さん宛の封筒…ですか?』

「えぇ。ですから、澪は何か知らないかと思いまして」

『その刑事さんのお名前、分かりますか?』

「確か……伊達航、でしたかね」


伊達航。航さん。

航さんのロッカーから高明さん宛の封筒?なんで?
零さんが入れた?なんで?何を?景兄の遺品?

というか、そうだとするとなんで零さんが高明さんの事知ってるの。…いや、景兄のことだから自慢してたんだろうな。あの人高明さん大好きだったし。


「澪?」

『あ…はい』

「どうしました?その伊達航という方、ご存知ですか?」

『景兄の警察学校時代の同期で、班長をしていた人です』

「なるほど、弟の…もしかすると、弟の忘れ物かもしれませんね」

『忘れ物?』

「随分と前に警察を辞めて、別の職に就いたときいているので。辞める時に忘れていった物かもと」


高明さんは景兄から何も聞いてないのか。いや、言えないんだっけ。公安に異動して組織に潜入中なんて。


「澪は、景光と仲が良かったですし、今何してるか知ってますか?」

『いえ…特には』

「そうですか…」


私と関わりのあるところで死んだなんて、言えるわけない。

思わず顔を逸らしてしまった。今どんな顔してるか見られたら、絶対にバレてしまうから。


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