お友達

「あっ!澪ちゃ〜ん!!」

『あ、』


昨日勉強出来なかったら翌日にとなって、次の日も警察学校へと向かうと、昨日の人が駆け寄ってきた。


『…えっと……』

「俺の名前覚えてる?」

『…なんとか原さん……ごめん、人の名前覚えるの苦手なの』

「いいよ、いいよ!萩原研二、次第に覚えてって!それで、どうしたの今日?」

『勉強』

「勉強?」


萩原さんに事情を説明すると、「なるほどね」と頷いて納得してくれた。どこで勉強するのか聞かれて、資料室だと答えれば車椅子の後ろに回って連れていってくれるようだ。


『1人でも行けるよ?』

「1人より2人で言った方が道中楽しいだろ?」

『…わかんない』

「ん?」

『友達いないし、いつも連れていってくれる人達は私の機嫌取りしてるみたいだし』

「…そっかぁ……じゃあ、俺が初めての友達!?」

『友達じゃないよ』

「え〜!」


彼は不満気な声を出して口を尖らせる。
そんなすぐに友達にならないでしょ、貴方のような軟派そうな男には特に。何も気にしない人ならともかく。


「じゃあこれからお友達になろう?」

『なんで?』

「なんで…って……俺が澪ちゃんと友達になりたいから」

『……ふーん…好きにしたら』

「やった!そういえば、この時間に来たけど…お昼どうするの?」


彼は腕に付けた時計を見て、聞いてきた。現在時刻は11時過ぎ。勉強すると言っても、お昼を食べに帰るなりするならすぐに帰らなくてはいけない。

お昼頃に来る時は、誰もいない時に食堂で食べるか誰かに資料室まで持ってきてもらっていると伝えると何かを考えるように顎に手を当てて、閃いたように分かりやすい程、顔を明るくした。


「俺も一緒に食べていい?」

『なんで?』

「仲良くなりたいって言ったじゃん!その為には、一緒にご飯食べるのが一番なんだよ」

『ふーん』

「だからね、いい?」

『んー…あ、鬼塚さん』


話しているとあっという間に資料室に着いた。お兄さんがドアを開けてくれて、中に入ると既に鬼塚さんが待っていてくれた。


「お、澪さん!昨日はすみません、勉強教えられなくなってしまって」

『ううん、気にしてないよ。それより体大丈夫?』

「えぇ、この通り!」

『そっか。ねぇ、鬼塚さん。あのね』

「はい」

『お昼ご飯ここでこの人と食べていい?』


そう言うと、鬼塚さんはなんとも言えない顔で私と彼の顔を何度か交互に見る。何回交互に見たか分からないくらいに見た後、唸り出して、「他に1,2人いるならいい」と許可が出た。


「うちの班全員じゃだめなんすか?」

「澪さんは人が多いと体調が悪くなるんでな。仲良くなるのは構わないが、少しずつ慣れてからにしろ」

「んー…教官は同席者誰がいいと思います?」

「俺に聞くなよ…」

『お兄さんが好きな人連れてきてよ』

「え、俺?」

『うん。お兄さんならいるでしょ、仲良い人』

「そうだねぇ〜……」


「ん〜」と考えた後、お兄さんは思いついたのか「分かった!」と言って授業へと行ってしまった。
お兄さんと仲良い人とは言ったけど、お兄さんみたいに軟派な人だったらどうしよう。ものすごい気まずいんだけど。


「それにしても、澪さんが萩原と知り合いだったとは」

『昨日初めましてだったよ』

「き、昨日…?」

『昨日初めましてして、今日は門の所で会ったの。で、お友達になろうって言われたから好きにしたらって』

「だから昼食を一緒にって…」

『うん』

「仲良くなるのは構いませんが、くれぐれも変な男に捕まらないでくださいね。まぁ、澪さんの人を見る目は確かなので大丈夫だと思いますが」

『大丈夫だよ、彼氏いるから』

「えっ」


彼氏いるくらいは言って大丈夫だよね。
…後で高明さんに確認しよ。

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