イニシャル

「あれ…えっと、安室…さん?」

『…?はい』


昴さんの家から帰る途中、声をかけられた。
それは同じクラスの毛利蘭さんで、家族で外食した帰りだという。


「でももう夜遅いのに…安室さん確か体弱いって…」

『うん。でも大丈夫、家すぐそこだから』

「なんだ、病弱なのか?なら心配だし、家まで送って行こう」


毛利さんの父にそう言われ、断ったが「病弱」というのが気にかかるんだろう。人の好意を何度も断るのも気が引けるから、言葉に甘えて送って貰う事にした。

一緒にいたのは、毛利さんと父親の小五郎さん。預かっているコナン君の3人。小五郎さんは有名な探偵なんだそう。あまりテレビとか見ないから知らなかった。


「あれ、立野巡査じゃない?」

「ホントだ。…何かあったのかな」


少しすると、交番勤務だろう警官の人と、女の人が話をしているところに出くわした。
話をしていると言うより、女の人がなにか訴えてるような感じだけど。


『巡査?』

「うん。米花町五丁目交番に勤務してて、真面目で親切で近所の人達からの信頼も厚いんだよ。確か、今度米花署の刑事課に異動するんだって」

『へぇ…』


毛利さんに彼について聞いてる時、小五郎さんが何事かと尋ねた。

どうやら、最近ここら辺のゴミ置き場を漁る人がいるらしく、見張ってひっ捕らえて欲しいと頼んでいたところだそう。巡査曰く、この辺りは重点的にパトロールをしているとのこと。
探偵の出る幕じゃない、と小五郎さんは笑っていた。

その時、近くの家からフードを被った女の人がふらふらと出てきた。


「大丈夫ですか!?」


女の人は外に出るなり膝をついてしまった。毛利さんが駆け寄ると女の人は「中で人が死んでいる」と。よく見るとその人の服や手には血の跡があった。

小五郎さんとコナン君、立野巡査が確認のため家に入り、私と毛利さんは外で女性を落ち着かせた。

女性が落ち着いた頃、車椅子を下りて中に入ると確かに老人が血塗れで倒れていた。近くには壊れた携帯電話、血の付いた包丁、座布団。手には防御創。座布団は犯人が返り血を防ぐために、被害者に押し付けた上で刺したんだろう。被害者の口は空いており、歯が1つ無かった。綺麗に抜けていることからおそらく差し歯が抜けたんだろう。

そして、右手の先には「K」の文字。

立野巡査が既に本部に連絡をしており、同時に建物内に不審人物がいないかの見回りを行い、窓や勝手口には内側から施錠されていることが確認されていた。

しばらくすると、本部から警察の人達が駆けつけた。まず、第一発見者である女性に名前を聞くと、「甲斐谷貴和子」と。イニシャルがK。立野巡査にゴミ置き場の事を伝えていたのは花沢さん。
この人は、友人と玄関先でずっと話し込んでいて、6時過ぎに被害者の老人が帰宅し、すぐあとに50代くらいの男性が被害者宅に行くのを見たが、10分程で出たのを見たと言う。20分くらいして、甲斐谷さんが来たのを見て、友人が帰り、パトロール中の立野巡査を見つけ5分程話をしていたら私達が来て、甲斐谷さんが家から出てきた。


「私の前に来た男の人が…」

『ねえ、お姉さん』

「な、なに…?」

『あのお姉さんが言うには、入って5分してから出てきたって事だけど、5分間何してたの?』

「…それは……」

『お姉さんが犯人じゃないのは分かってるから大丈夫だよ』


耳元でそう言うと、彼女は少し安心したように息を吐いて「携帯を壊したの」と自白した。
何故壊したのか理由を聞こうとした時、警察の人から事情聴取するからと彼女は連れていかれてしまった。お姉さんと話している間に、彼女の前に来たという男性も見つかった為、今日中に2人から話を聞くんだとか。


「俺たちも発見者だから行くが……お嬢さんはどうする?」

「安室さんは帰った方がいいんじゃない?夏とはいえ夜は冷えるし、風邪ひいちゃうかもだし…」

『ううん、ついてく』

「そうか?まあ、体調悪くなったらすぐに言いなさい。無理はしないように」


小五郎さんの言葉に、頷いた。


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