追跡

パソコンのパスワードを入力し、フォルダなどを見ていくと、先日起こった銀行強盗の計画書が書かれたものを見つけた。それと一緒に実行犯だろう3人が拳銃を持って撮った写真まで載っていた。


「やだ!真ん中の男の人、探偵事務所で自殺した人じゃない!?」

「右端の男はスーツケースに入ってた男だ!!」

「じゃあ、左端の女性がもう一人の強盗犯でしょうか」


他にもメールで「拳銃は用意出来たか」などのやり取りも見つけ、その中に強盗犯の一人の女性の住所が載っていた。どうやら引越し祝いに行くからと住所を教えて貰っていたようだ。


「行ってみましょうか」

『え、でもコナン君は?』

「あぁ、コナン君の知り合いに頼んでいるよ。ですよね、蘭さん」

「はい。コナン君いつも発信機付きの探偵バッチ持ってるから、追跡メガネ使って探して貰ってるの」

『そう…じゃあ大丈夫だね、行こ』


すぐにその家を出て兄の車に乗る。
もしかしたらあのお姉さんは、庄野さんの復讐をする為にさっきの強盗犯の1人の女性の元に向かったのかもしれない。

後部座席に乗ると、隣に小五郎さんが、助手席に蘭ちゃんが座った。


「珠雨。何か分かったことはあるかい?」

『んー…特に…』

「そうか。もし、樫塚さんの乗る車を見つけたら無茶なことをするかもしれないが、少々我慢できるかい?」

『うん、わかった』

「む、無茶なことって…」

「大丈夫です、毛利さんや蘭さんに怪我はさせません。勿論、珠雨にもね」


多分、あの強盗犯の一人が樫塚さんとコナン君の乗ってる車にいた場合の事を言っているんだろう。無茶だけはしないで欲しいけど、事情によっては仕方ないのかな。

車が大通りに出た頃、小五郎さんの携帯が鳴り、コナン君の場所を追跡してもらっているという知り合いの人から、乗っている車を見つけたという連絡が入った。


「王石街道を北上中!?」

「お、王石街道ってこの道じゃない!!」

「んで?車は?…青い小型車…ナンバーは!?」

『お兄ちゃん、あれ!あの車!』


反対車線を見ていると、そこに小五郎さんが口にした「青い小型車」がいて、運転席に樫塚さん。助手席にコナン君がいた。


「いたのか、コナン君が!」

『拳銃持った女の人に捕まってた』

「何!?…何かに捕まって!!」


すぐに車を反対車線へと移動させ、車を追いかける。
多分だけど、樫塚さんの車の後ろにいるのが追跡してるって言う知り合いなんだろう。誰か予想は付くけど。


「毛利先生、そのまま右側のシートベルトを締めていて下さい。珠雨と蘭さんはシートベルトを外して。珠雨、毛利先生にしがみついて、僕がいいと言うまで目を瞑っていろ」

『うん』

「は、外すんですか?」


言われた通りにシートベルトを外して、小五郎さんにしがみつく。ぎゅって目を瞑っていると、車が大きく振動しドンッて大きな音もした。
「もういいよ」って聞こえて、目を開けたらさっきまで私が乗っていた場所にガラスが散らばっていて、足につけていた義足はぽっきり折れていた。きっと、車をぶつけて無理やり停めたんだろう。

小五郎さんから離れて外に出ると、コナン君は無事で、知らない女の子がコナン君に抱きついていた。拳銃を持った女の人は気絶しているようで、何かされたんだろうか。


「珠雨、大丈夫か?」

『う、うん…』

「震えが止まってねぇが…本当に大丈夫か?」

『だ、いじょう、ぶ…』

「しかし、ぶつかる前から震えてたぞ?」

『大丈夫、だから…本当に』

「ごめんな。こうするしか無かったんだ」


手を握って、頭を撫でられる。「ゆっくり息をしなさい」と言われて、その通りに呼吸をする。しばらくすれば落ち着いてきて、その頃には誰が呼んだのか警察と救急車が到着していた。
事情を話すために、お兄ちゃんは警察の人の方へ行って、私の横には蘭ちゃんとさっきの女の子が来た。


「大丈夫か?」

『うん』

「安室さんから聞いたけど…本当に大丈夫?フラッシュバックとかしてない?吐くなら吐いていいんだよ?」

「フラッシュバック?」

「珠雨ちゃん、昔事故にあって両足を失くしたみたいで……車の事故がトラウマになってるらしくて。一応、ぶつける前に目を瞑るように言ってたんだけど…」


私が足を失くしたのは交通事故が原因。居眠り運転のトラックが突っ込んできて、両足が挟まれてそのまま切断を余儀なくされた。それ以降、車に乗ること自体がトラウマになったて、なんとか克服したが、今でもその時乗っていた助手席に座れない。

ただ、今回のは仕方ない事だから、あの人も車をぶつけたのは分かってる。精神的負担が少ないように目を瞑れと言ったことも。怖かったのはあるけど、そこまで酷くない。


「何かあればすぐに言うんだぞ?」

『うん。…ところで、この女の子、誰?』

「え?……あぁ、そういえば顔を合わせるのは初めてだったね。僕は世良真純。君と同じクラスだよ!」

「珠雨ちゃん、学校に来てもあまり教室にいないもんね」

「でも、よく僕が女の子ってわかったな?皆、男の子だと勘違いするのに…」

『?普通にわかるよ?』


どう見たって女の子だもん。


『それで、どうしてここに?』

「夕方、探偵事務所で男が自殺した事件あっただろ?それで気になって蘭君に連絡したら、コナン君が拐われたって聞いて…心配で来たんだよ!小五郎さんの弟子も気になるけど…そんなこと言ってる場合じゃないしな」

『そう…』

「まぁ、ずっと君とも話してみたかったし、コナン君も無事だったし!今日はこれで十分かな!じゃあ、僕も事情聴取されるらしいから、行ってくるよ」


真純ちゃんはそう言って、小五郎さん達の元へと掛けて行った。

というか、あの人が警察に事情聴取されてるのシュールだなぁ…

|

[ 戻る ]






×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -