よろしくお願いします

「このクラスに転校してきた安室珠雨さんです。病弱で、あまり教室には来れないけど…えっと、今日は一限はいれるんだ…っけ?」

『はい。今まで家族と主治医としか話したことなくて、世間知らずだったり無礼だったりするかもですが、よろしくお願いします』


帝丹高校、2年B組。

生まれつき身体が弱くて、あまり学校には来れないのだけど、とある都合で高校に入学。

親は仕事で普段いない。今は兄と一緒に暮らしてる状態。兄もあまりいないけど。

軽い自己紹介が終わり、席に案内されすぐに授業が始まった。授業はそれほど難しいものじゃない。というのも最初に言ったように生まれつき身体が弱いから学校にあまり行けなくて、父の職場の人が代わりに教えてくれていて、学校で習う様なことは既に復習となっている。

授業が終わるとすぐに帰る準備。少しでも慣れるために今日は一限だけ居れたけど、この後はすぐに病院に行って検査がある。駐車場に兄の知り合いが待っているから転校生特有の「質問責め」に逢う前に先生に手伝ってもらいながら下に降りる。

実は幼少期に事故にあって両足がない。
要は、身体が弱いのと同時に生涯車椅子生活。

門まで車椅子を押してもらい、外にいる迎えの車を見つけるとそこからは自分で行くと教師に伝えて急いで車椅子を動かす。


『ごめんね、お姉さん。待たせちゃった』

「構わないわよ、予想より早く来たから。それより病院の場所ここであってるかしら」

『うん、大丈夫』

「じゃあ、行きましょうか」


兄の知り合いのお姉さんの車に乗り込み、すぐに出発する。
校舎の方を見ると窓から顔を出し、私に向かって手を振る男子生徒を見つけ、手を振り返す。


『ところでお姉さん今日お仕事は?』

「午前中は暇なの」

『ジンお兄さんに怒られない?』

「珠雨を送っていったって言えば大丈夫でしょう」

『お姉さんの説教回避のために使われたくないな』

「ジンはあなたには何故か甘いから。それより、約束ちゃんと守ってよね」

『うん、分かってる』


ベルモットお姉さんのお仕事を詳しくは知らない。兄の仕事仲間ではある事だけ。仕事内容はよく知らない。というか、興味が無い。知ってるのはただ全員がお酒の名前がついてること。兄も「バーボン」と付けられていた。

病院に着くと、お姉さんはすぐに仕事に向かってしまった。すぐに受付に行きいつものように検査を行う。異常はなく、安静にしているようにと言われ、薬を受け取り病院を後にする。


『……そういえば本返さなきゃ』


知人に借りていた本を思い出し、携帯を取り出す。連絡先から「沖矢昴」の名前を探し出し、電話をかける。


《もしもし》

『昴さん?』

《ええ、どうしました?》

『本返しに行っていい?』

《大丈夫ですよ》

『じゃあお昼食べたら行くね』

《分かりました。…ああ、もし良ければ一緒にお昼食べますか?》

『昴さんの手作り?』

《はい》

『…食べる』

《では昼食作って待ってますね》

『うん』


昴さんは住んでいたアパートが火事になってしまって、それから色々あって今は有名作家の工藤優作さん、女優の工藤有希子さん、高校生探偵の工藤新一君の家に住まわせてもらっているようで。

工藤宅に着いて、インターホンを押すとすぐに昴さんが出てきてくれた。
中に入るとすでにいい匂いが漂っていて、もう後はお皿に盛り付けるだけなんだそう。


「お兄さんは元気ですか?」

『元気だよ。いつもそれ聞くね』

「おや、そうでしたか?」

『そんなに気になる?』

「……多少は」


昴さんのところに遊びに来るといつも兄の事を聞かれる。仕方ないのは分かっているけど、そんなに頻繁に聞かれると流石に気にはなる。


『大丈夫だよ、昴さんの事何も言ってないから』

「そうですか」

『お友達って言ってる』

「それは光栄ですね。はい、どうぞ」


車椅子を玄関に置き、抱えられてリビングに通される。そのままソファに下ろされ、少しすると目の前の机にお皿が置かれた。お皿には色々な種類の小さなサンドウィッチが並べられていた。

「こちらもどうぞ」と置かれた紅茶は、カップの底が鮮明に見える程透き通っていた。

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