ボーガン
蘭ちゃんに一緒に長野には行けないと断った数日後。結局長野に行くことになってしまった。
いや、蘭ちゃん達と一緒にではないのだけど。
父が戸籍やらなんやらをやってくれる話だったのだけど、まず私自身の現住所があやふやになっていたらしく別荘に移行しよう。ついでに所有者も私にしよう。となったとかで、そこまでは別にいいのだけど、それに必要な別荘関連の書類が実家にではなく別荘にあるらしい。よく行くけど全然知らなかった。
で、それを取りに行くために一泊二日で長野に向かって、それを聞いた高明さんが「せっかく夫婦になったのだから」とお泊まりして、二日目の朝。
高明さんを送り出した後、ちょうど今日蘭ちゃん達が長野に行く日で、本来行く予定だった蘭ちゃんとあの後誘った園子ちゃんが行けなくなったとかで零さんが行くことになり、終わったら迎えに来てくれるとの事で待っている間。寝室から聞きなれない着信音が聞こえた。私の設定している着信音じゃないから、まさかと思って確認すればそれは高明さんの携帯。表示されているのは知らない名前だから、同じ長野県警の人か任されている事件の関係者か。出るべきか悩んでいればそのまま電話は切れてしまった。
外を見れば雪は降っているが今はそこまで吹雪いている訳でもないし、ここから県警本部は近いから届けに行く事にした。
出来るだけ暖かい格好をしてから、転けないように気をつけて歩いて県警本部へと向かう。入館証をもらって「捜査一課の諸伏高明に用事がある」と言うと、捜査で出払っていると言われてしまった。
「君、この前の竹田班の事件の時にいた子だよね?」
どこかで暇潰すかなぁ、って考えてると後ろから声を掛けられた。知らない人だったけど、高明さんと同じ捜査一課でその人も私のことは啄木鳥会の事件で解決に協力した人物とだけ覚えていたらしい。
「どうしたの?」
『えっと、諸伏高明警部に用事があって』
「あー、だいぶ前に捜査で出てったからそろそろ帰ってくると思うけど…廊下で大丈夫なら待ってて大丈夫だけど、どうする?」
『え、いいの?』
「いいよ。この雪の中、また帰れって言うのも酷だし…外寒いからね」
一瞬足をチラ見したから、歩きにくいかもと言う親切なんだろうけど、口にすると申し訳ないという遠慮なのか「寒いから」という理由で待つことを許可された。
廊下は啄木鳥会の事件の時に小五郎さん達といた自動販売機の前のところで、その人は捜査会議があるらしく「何か困ったことがあればその辺の奴に声掛けて」と言って走って行ってしまった。
ホットココアを買って座って待っていれば、大和さんと由衣さんが捜査から戻って来たのか、コート姿で歩いてくる。私に気がついた由衣さんが早足で駆け寄ってきて「どうしたの?」と声をかけられる。
「諸伏警部に用事?」
『うん。もうすぐ戻ってくるだろうからって、ここで待ってていいって言われて。高明さんは一緒じゃないの?』
「駐車場に車停めてから来るから、もう少しすれば来ると思うが…大丈夫か?寒くねえか?」
『大丈夫』
「どれだけ暖かい格好しても顔は寒いわよね、鼻が赤くなってるわ」
由衣さんに手袋を付けたままの手で頬を挟まれる。もふもふしてるから暖かい。
二人に暖かくしてもらっていれば、後ろから高明さんが歩いてきた。入り口で自分に用事がある人が来ているということだけ聞いていたらしく、珍しく走って来てくれた。
「どうしたんですか、こんな雪の中」
『携帯を届けに。電話が鳴ってたんですけど、出るのが間に合わなくて…大事な用件だったら、届けなきゃと思って』
「なるほど。ありがとうございます」
携帯を渡すと、高明さんは頭を撫でてくれた。
「んだよ、仲良くお泊まりかよ」
『私がこっちにいる時はいつもお泊まりだよ』
「…もしかして、たまに帰り道違う時って…」
「珠雨が来ているときですね」
『休み取れなくても、ここにいる間寝泊まりは私のところだからね』
「仲がよろしいことで。…っと、すまん、電話だ」
大和さんの胸ポケットに入っている携帯が鳴った。と同時に私の携帯も鳴る。画面には「お兄ちゃん」と書いてあるから、零さんが何かあったのだろう。
『もしもし?』
《珠雨か?すまないが、今日そっちに行くのは難しそうだ》
電話を取ると兄は申し訳なさそうな声でそう言った。理由を聞くと、今いる廃教会で人が殺害されてしまったのだと。
『「はぁ?人が殺害された?」』
大和さんと同時に発言が被った。小五郎さん達と一緒だって聞いてるから、多分大和さんの電話相手は小五郎さんかな。
確か朝来た連絡だと兄達は今日、小五郎さんに手紙で届いた依頼で、古い友人が自殺した理由と遺体の足元に落ちていた暗号を解くためにその友人が自殺した場所である山奥の廃教会に行っている。本来なら蘭ちゃんと園子ちゃんを入れた四人で行く予定だったらしいのだけど園子ちゃんが風邪を引いて、蘭ちゃんはそのお見舞い。代理として兄と、ポアロの隣のお寿司屋さんにいる脇田って人がついて行った。
特徴を聞く限りこの前会ったスキンヘッドで眼帯の人がその人なんだろうと思う。
それでどうして人が死んだのか聞くと、その廃教会で出会った男女四人から手紙の差出人がその自殺した本人だと教えてもらったらしく、更に建物内に別の暗号もあったりして手分けして廃教会を見回っていたら一人帰ってくるのが遅く、全員で確認しに行ったらボーガンで頭を撃たれて亡くなっていたという。
《手分けして探す前にくじ引きで各々の場所を決めたんだけど》
『くじ引き?』
《ああ。紙を九等分にちぎったものに、各々の名前を書き箱に入れて、今から引く人はここ、次の人はここって感じで決めていたよ》
『ふーん…名前を書いたのって自分で?それとも一人の人が全員分書いたの?』
《自分達で書いたよ。一応言うと、紙をちぎったのも、その紙に名前を書いて欲しいって僕達に渡してきたのも、箱からその紙を取り出してたのも同じ人だよ》
『ふぅん…?頭を撃たれてたんだよね?』
《ああ。被害者は身長が高いんだけど、くじ引きで当たった場所とはいえ、偶然とは思えないんだ》
「じゃあ、現場の動画を撮ってこっちに送ってくれ!」
《…お願いできる?》
『努力はしてね』
後ろでおそらく小五郎さんと話しているんだろう大和さんの声が聞こえたのか、「動画に自分が映っていた場合の対策」をお願いされた。細かく言わないって事は近くに誰かいるのかも。
自分で映らないように努力はして欲しいと伝えれば、「頑張る」とだけ返ってきた。頑張るじゃなくてやって欲しいのだけど。
《何か分かったら僕か、コナン君もいるから彼か、どちらでもいいから教えて》
返事をすると電話は切れた。大和さんの方もほぼ同時に電話が終わったみたいで、今聞いた事をそのまま伝えれば「少し時間いいか」と近くの会議室に案内された。
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