消去法

『蘭ちゃん、悪いんだけど高木刑事呼んできてもらえる?』


蘭ちゃんにお願いして高木刑事を連れてきてもらった。立ち上がったついでに蘭ちゃんはお手洗いに行ったみたいで、高木刑事は「なにかあった?」と膝を付いて聞いてきた。


『薬を飲む時間なんだけど、お水貰ってきて欲しくて。こういう時飲食物を提供する時、警察官の立ち会いが必要かなって』

「そうだね、場合によっては必要かな。水はどれくらいの量が欲しい?」

『えっと…このロンググラス分欲しい』

「分かった、持ってくるよ」


「よいしょ」と立ち上がった高木刑事は、近くにいたバニーのお姉さんに説明して厨房の方へ向かい、すぐにお水と小さなお皿を持ってきてくれた。聞けば厨房の人が「空きっ腹だったら胃が荒れるかもだから」とリンゴを剥いてくれたらしい。


「そういえば、車椅子なんだけど」

『うん?』

「ネジが錆びてしまっているところがあったから何本か新しいものに変えてもいいかと、さっき鑑識から確認の連絡があったんだけど」

『ほんと?もう、是非』

「分かった。大丈夫なものを使ってるはずだけど、もし返却後にネジが緩んだり合わなかったりしたら専門の人に見てもらってね」

『うん、わかった』


そう伝えてくれた高木刑事はすぐに携帯を取って鑑識さんに今言ったことを伝えてくれて、その後目暮警部の元に行き捜査の続きを始めた。

それにしてもこの事件長引くなぁ。容疑者の三人で考えたら犯人は執事さんだと思うんだけど。
車に向かう途中で横を通り抜けたと言っても、持ってたグラスに何かを混入させたら気付くと思う。本人じゃなくても「席を立って移動する」っていう、少なくとも同じ席についていた蘭ちゃんや小五郎さん達には目立つ行為をしていたんだから、気が付かないわけが無い。誰にも気づかれない速度で、グラスに砒素を入れるなんて忍者かって話。
それは黒髪のお姉さんも同じで、ぶつかったとはいえ、持ってたグラスに気づかれないように砒素を入れるのは難しいと思う。第一、あんなバニーガールのピチッとした服のどこに隠し持てるんだって話。

そう考えると、残りは警報音を鳴らして机にグラスを置くようにして意識を携帯に向けさせた執事さんになるよね。
メガネをしていなかったから、どのグラスが誰のかは分からないだろうけど、どれだけ視力が低くても色は認識出来るはず。あのお姉さんネイルしてたから、それを目印にすればいけるんじゃないかな。執事さん携帯持ってたからカメラのズーム機能とか使えば分かるんじゃない?

まあ、動機も証拠もないただの消去ほなんだけどね。

長引いて更にやることが無いとなると私は暇になり、欠伸が出てくるわけで。


「眠たい?」

『少しだけ』

「やることないもんねぇ」

『ある程度犯人も絞れるしね』

「えっ、そうなの!?」


「教えて教えて」と聞いてくる蘭ちゃんに、消去法になるけどと言って考えを伝えれば「あー…!」と納得したように頷いた。傍でメモを見返していた高木刑事が聞いていたらしく、小さく「なるほど…」って言ったのが聞こえ、そっちを見ると「えへ」と言いたげに小さく笑っていた。


「ごめんね、盗み聞きする気はなかったんだけど…」

『いいよ、別に。聞かれて困ることじゃないし』

「やること無くて退屈だろう?もう少し待っててね」

「今の目暮警部に伝えたら解決しないんですか?」

『動機とか証拠とか、全部無視してるから』

「あ、そっか」


「難しいね…」と腕を組む蘭ちゃんに、苦笑いして高木刑事は捜査に戻って行った。

消去法の決めつけで解決出来るなら、探偵いらないしね。

|

[ 戻る ]






×
nanoへのご支援
- ナノ -