コスプレ
救急車が先に到着し、お姉さんは担架で運ばれて行った。兄が私のことを救急隊員に話したらしく、私もその場でお腹辺りを診てもらった。特に大きな怪我でもなさそうだから、一旦湿布だけ貼られて、もしかしたら肋骨にヒビが入ったりしているかもだから、後日痛みが出たら病院に行くように言われて救急車は病院へ向かった。
その後警察が到着し、すぐに鑑識さんが現場を捜査し始め、少し遅れて来た目暮警部と高木刑事が事情聴取を始めた。
「あれ、珠雨ちゃん…車椅子は?」
『被害者のお姉さんが倒れた時に、私巻き込まれてお酒掛かってたから証拠品でさっき鑑識さんに押収された』
「なるほど…出来るだけ早く返すように伝えておくよ」
小五郎さん達からある程度の話を聞いたあと、高木刑事から車椅子の事を聞かれて説明すると、笑ってそう言われる。普通に椅子に座ってるのに足付けてないから、不思議に思うのは当たり前だよね。
高木刑事は私からも話を聞きたいらしく、私の椅子の前に膝を付いて目線を合わせてくれた。でもお姉さんが倒れる前まで近くのコンビニに別のお姉さんと行っていたから詳しくは分からないと伝えれば「そっか…」と呟きながら警察手帳にメモしていった。
「ちなみに、なんでコンビニに?」
『お手洗いに行きたかったんだけど、車椅子だと狭いかもだからコンビニの方がいいよって。あそこにいるお姉さんが付き添いで一緒に』
「じゃあ、帰ってきて席に戻る途中で被害者の人が倒れて来たんだね?」
『うん』
「怪我はしてないかい?」
『大丈夫』
そう言うと、高木刑事は「移動したい時は遠慮なく言っていいから」と言って立ち上がり目暮警部の元へ向かっていった。目暮警部は鑑識さんから話を聞いていて、運ばれて行ったお姉さんの事も丁度連絡が来たようで教えてくれた。どうやらお姉さんの飲み物に砒素が入っていたらしい。
脅迫状が来ていて狙われていた諸岡さんのグラスと間違えて砒素が入れられたのではと思ったけど、二人が飲んでいたグラスは別々で、諸岡さんはロンググラス、お姉さんはシャンパングラスだったから間違えたとは考えにくい。
私がコンビニに行っている間に諸岡さんは席を立ち車に向かう時に、グラスを持ったお姉さんとすれ違っていて、その後少し騒ぎがあったらしく、その騒ぎの元が携帯の警報音。それが鳴った時、地震速報だと思ってグラスを机に一度置いていて、警報音を鳴らした執事さんは置かれたグラスのそばに居た。その後、お姉さんとぶつかってカフスにワインをかけてしまい、お姉さんが席を外すきっかけを作った黒い髪のバニーのお姉さんが容疑者の三人となった。
『そんなことがあったんだね』
「警報音は執事さんがメールをチェックしていたら間違えて鳴らしちゃったみたい。諸岡さんが席を立ったのは、床に落ちた執事さんのメガネを踏んじゃったからだったよ」
『床に?』
「うん。メガネを拭いて、机の上に置いてたみたいなんだけどいつの間にか落ちちゃってたみたいで。諸岡さんが執事さんの前にあるソースを取ろうとして、踏んでた」
『ソースかけるようなものあったっけ?』
「玉子焼きにソースかけるんだって。珍しいよね」
蘭ちゃんが隣に座って色々教えてくれる。玉子焼きにソースなんて初めて聞いた。美味しいのかな、今度やってみよう。
話を聞いている最中、容疑者三人から詳しい話を聞き始め、その中で運ばれたお姉さんも玉子焼きにソースをかけるんだと他のお姉さんが言っていた。
『それにしても、お姉さん達みんな肌綺麗だよね』
「本当にね!バニーガールの服って体型が分かるくらいピチッとしてるけど、皆さん細いから本当に羨ましい…」
『蘭ちゃんは細いから大丈夫だよ』
「珠雨ちゃんは、こういう…コスプレってしたことあるの?」
『んー……幼稚園の時のお遊戯会くらい?あれをコスプレって言っていいのか分かんないけど』
「多分それは違うと思う…」
『じゃあないや』
あるとすれば、特別な許可が出て「東条澪」として人前に出る時にする変装くらいかなぁ。滅多にないけど。
意味わかんないよね、安室珠雨が偽名なのに本名を名乗る時は変装するって。逆だよね普通。
そういえば少し前に高明さんと、そういう事をする時に好きかなと思って調べたことある。なんだ逆バニーって。ほぼ出してるじゃないって当時思った記憶。
ここのお姉さん達が着ているものは多分バニーガールの基本みたいな形なんだろうけど、調べた時に見たのは背中からお尻くらいまで開いているものもあったり、胸元ほぼ出てるようなものもあったり。
結局高明さんは着衣したままするの好きじゃないみたいだから、それならいいかって何も買わなかったんだけど。最終的に全部脱いでるしね。
そんな事を思い出しながら蘭ちゃんと話していると、いつの間にか外に行っていたらしいコナン君と兄が店内に入ってきた。兄は考え事をしているようで、顎に手を当てて入口付近で立ち止まっている。コナン君に何かあったのかと聞くと、駐車場にいるボディガードに話を聞きに行ってその途中からぼーっとしているようで。
「もしかして安室さん、忙しくて体調悪いとかじゃないよね…?」
『それは無いと思う。多分、何か思い出したとかじゃない?事件に関係あるかどうかは分からないけど』
「そうなのかな…」
『ほら、お姉さん達が目暮警部と何か話してるから聞いておいで。きっとあれは事件に関係あると思うから』
「あ、うん」
離れた場所にいる目暮警部を指さすと、コナン君は早足で目暮警部達の元へ行った。そこに兄もいるから、考え事はそれ程大きな悩みではないんだろう。私に言ってこない辺り組織関係の事でも、陣平さん達関係の事でもなさそうだし。言われても何も出来ないんでしょうけど。
「安室さんも体調崩すこととかあるの?」
『あるよ〜。でも体調崩すと仕事に影響出るからって、健康には気を使ってて滅多にないんだけどね』
「あ、そういえば前に夏風邪引いたとか言ってたっけ」
そんな事言ってたような、言ってなかったような。園子ちゃんにテニス教えて欲しいって言われた時だっけ?
あれは単純にあの人が、キールお姉様の首につけた隠しカメラで録画していた秀一さんの死亡偽造時の映像を細かく見ていたのと、ミステリートレインでの爆発が組織絡みだったから公安が動いて皆徹夜で働いてたのが重なったから、表に出るのが出来なかっただけなんだけどね。
同時にするなって話なんだけど、あの人は出来るだけ早く赤井秀一が生きていることを組織に伝えたかったから、同時進行でやるとかいうアホな事してたのよね。
秀一さんのことになるとアホになるの何なんでしょうね、ほんと。
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