初耳いっぱい
あれから二日ほど経った今日。ポアロに行くなら一緒にと言われて兄の車で行くことに。こういう時は大体何かしら私に話があるときだし、多分頼まれた工藤君の事かな。
「学校は楽しい?」
『それなりには。友達とかもちゃんといるし』
「それは良かった。頼んでいた事は、調べられそう?」
『工藤君のこと?それとなく聞いてみても、皆詳しく知らないって。先生達も同じだったよ』
そう伝えると、予想通りなのか少し考えて「直接調べに行こうか」と呟いた。学校の方だと噂が広まるのが早いから、少しでも何かわかるだろうと思っていたらしいけど、前にベルモットお姉さんでも分からなかったから無理だろうって言ったのを聞いて、さほど期待していなかったみたい。
だからか、今日の夜中にでも工藤邸に侵入して調べてみようかと考えているらしい。
『…やめた方がいいと思うけど』
「何故?」
『ご近所さん達にご迷惑かける程の喧嘩をしないならいいけど』
「喧嘩?誰と?」
『昴さんと』
「ああ、そういえば…」
「いたなそんな奴」と言いたそうに、零さんが眉を寄せたのがバックミラー越しに見えた。昔から思ってたけど何がそんなに不満なんだ彼の。景兄の件がある前から仲が悪かったけど、何をそんなに敵視する必要があるのかが分からない。
潜入捜査だから、気を許せないって話ではあるんだろうけど。
「君があいつと何故そんなに仲良く出来るのが不思議だ」
『それを言うなら私ジンお兄さんとかキュラソーお姉様とかとも仲良いけど?』
「前から思っていたんだが、その「お兄様・お姉様」呼びする人としない人の差はなんだ?」
『NOCはお兄様お姉様呼びしてるけど、キュラソーお姉様は純粋に仲良いから』
ラムのおじ様は私がそう呼んでる人達がNOCの疑いがある人達ばかりだって気付きだしたから、呼んで欲しいなら呼ぶけどって言えば「是非」って言われておじ様呼びに変わったかな。
年齢関係なく年上の人はお兄さん、お姉さん呼びする癖があるんだけど、「ラムお兄さん」がむず痒かったみたいで、変わるなら何でも良かったらしいけど。
景兄が「スコッチお兄様」、秀一さんが「ライお兄様」。キュラソーお姉様はNOCじゃないけど結果組織を裏切って逃走して、子供達を守るために亡くなった。キールお姉様も一時期NOCの疑いがあった。ここまで揃ってたら疑いたくもなるよね。
「じゃあ、僕と兄妹役じゃなかったら、僕のことはバーボンお兄様だったのかな」
『零さんと兄妹役じゃない世界線があるなら、他の人との兄妹はしないんじゃないかな私』
「どうして?」
『他の人なら多分景兄でしょ?絶対嫌がるよ、「兄さん騙せないから」って』
「確かに」
想像が容易に出来たのか、零さんは笑って納得した。
他に潜入捜査官がいたなら話は別だけど、零さんと同時期に潜入したのは景兄だけだから、多分ないな。
そんな話をしていればポアロ近くにある駐車場にたどり着いた。零さんに手伝ってもらって車を降りて、車椅子に乗り換える。
お店に行けば、女子高生のお客さんがいて、ドアが開いた音を聞いて彼女達がこちらを見た。
「あ、あむぴの妹ちゃんだ!」
「ねえねえ、良かったらちょっとここ来て欲しいんだけど、いい?」
『わ、私?』
「そう!妹ちゃん!ちょっと勉強してるんだけど、分かんないとこあって教えて欲しいんだ〜」
『わ、たしで、いいなら…』
頷くと彼女達は「ありがと〜!」と言って、椅子を移動させて私の席を開けてくれた。そこに兄が車椅子を押してくれて、彼女達がノートを広げて見せてくれた。
いつもなら兄を呼ぶのに、なぜ私なのか聞いたら、たまにいる私と同じ学校の子が「教え方が上手い」と話していたのを聞いて、「あむぴは仕事があって忙しそうだし、妹ちゃんと話してみたいし」という理由らしい。「あむぴの妹」という理由で何かと有名だと言うことも教えてくれた。
『そうなの?』
「妹ちゃん可愛いから、最初の頃はお人形さんみたい〜ってめっちゃ話題になってたんだよ」
「ウチらの中であむぴめっちゃ人気だから、妹ちゃんともお近付きになりたいって子達いっぱいいるよ」
『お兄ちゃんそんなに人気なの?』
「そりゃ、あんなイケメン人気にならないわけないじゃん?」
そう言われて兄の方を見る。
…イケメン、か?
『……分かんないや』
「兄妹だと分かんないもんだよねぇ」
ケラケラと笑う彼女達。
正直に言うと、身近にとてもかっこいい高明さんがいるから分からないんだよね。
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