八文字

秋橙さんに車を出してもらって手土産を買いに向かった。その時に工藤君は訳あって生きていることを黙っていることと、裕也さん達サポートしてくれる公安の人達は勿論、零さんもそれを知らないことを伝えて、秋橙さんも黙っていて欲しいとお願いをした。電話の内容的に組織絡みだと理解してくれたようで、深く聞かずに頷いてくれた。

手土産を買った後に工藤家に向かっている途中、零さんから連絡が来た。


『もしもし?』

《珠雨?今いいかい?》

『うん、なに?』

《工藤新一君と同じクラスだったよね?》


その言葉だけで、あぁ、と理解した。


《少し彼について調べて欲しいのだけど》

『誰に言われたの』

《ラム》


ラムのおじ様かぁ。ジンお兄さんやウォッカお兄さんじゃないのなら、どうにか出来ると思ったんだけど、ラムのおじ様は無理だなぁ…


『いいけど、あまり期待しないでね。皆詳しくは知らないみたいだから』

《蘭さんや園子さんなら知ってるんじゃないか?》

『よく「どこほっつき歩いてんだか」って言ってるから知らないと思う』

《そうか…》

『そもそも、少し前に潜入のプロのベルモットお姉さんが潜入して何も出てこなかったのに、素人が調べてなにか出るわけないでしょ』

《まあ…とりあえず何か分かったら教えてくれるかな》

『分かった』


そう言うと電話は直ぐに切れてしまった。ポアロのシフトに入ってる時間だから急ぎの用とかで梓さんに許可取って連絡してきたんだろうな。

というか、調べて欲しいと言われたってね。

うんうん唸っていればいつの間にか工藤宅の前に付いていて、秋橙さんが車椅子をトランクから取り出してる間に着いたことを有希子さんに連絡すると、隣の阿笠博士の家に皆いることを教えてくれた。
秋橙さんは、いつまでかかるか分からない状態でずっと路駐してるわけにもいかないので、話が終わるまで適当にドライブしてくるらしい。

阿笠博士の家のインターホンを鳴らせば、博士が出迎えてくれて、中に入れば有希子さんと優作さん、コナン君が既に居た。


『綺麗に報道陣いなかったね』

「ああ、騒ぎの元になった我々工藤家のファンだという人に会って、私と有希子のサインで清水寺の事は無かったことにして貰ったんだよ」

『なるほど…』

「学校側にも注意喚起は出したし、服部君の方もなんとか収めてくれたみたいだけど…世間的にだけなのよね」

「組織側は何か動きなどはないのかと思って、君を呼び出したんだよ」

『ジンお兄さんは多分興味無いから…ウォッカお兄さんとかは分かんない。ただ、お兄ちゃんがラムのおじ様から工藤新一について調べるようにと連絡はあったみたい』

「やはりか…」


予想はしていたみたいで、優作さんは顎に手を当てて考え込んでしまった。


『同じクラスだからって私にも調べるように言われたけど…』

「あら、それはどうするの?」

『前に潜入のプロであるベルモットお姉さんが行って何も情報掴めなかったのに、素人の私が行っても無駄足だと思うとは言っておいたよ。一応調べて欲しいとだけ来たから、そんなに期待してないと思うけど』

「なるほど、確かにシャロンで無理なら他の人にも無理よねぇ」

『修学旅行だからってはしゃぎすぎよ。聞いた時息止まるかと思ったんだから』

「ご、ごめん…」

「まっ、そのおかげで蘭ちゃんといい事あったみたいだけど!」

「なっ、!」

『…へえ?』


有希子さんの言葉に顔を赤くするコナン君。これは本当に蘭ちゃんと良いことがあった反応。

というか探偵なんだから、少しは表情に出ないようにしなさいよ。


『蘭ちゃんと良いことあったんだ?ふーん?』

「べ、別に…いいだろ…」


恥ずかくて目を逸らしたコナン君。この子本当に初心で可愛い。既に付き合いはしてるから、良いことと言えばなんだろう。手繋いだとか?いや流石にそこまで初心じゃないでしょう。キスしたとかかな。

ニコニコして見つめれば「なんだよ」と怒ったような、恥ずかしいような、おそらく両方が混じった顔で聞いてくるコナン君。


『可愛いなと思って』

「…」

「それと、だ」


空気を変えるように口を開いた優作さん。羽田浩司殺害現場に落ちていた鏡の破片に書かれた文字、「ASACA」と「RUM」の八文字。私が来る前に秀一さんとそれについて話したらしく、二つの単語に分けるのではなく一つの名称じゃないかという結論に達したらしい。


『一つの名称?人の名前ってこと?』

「ああ、その通り。ボスへのメールアドレスを入力した際のプッシュ音が、とある曲になっているのは知っているかね?」

『えっと…確か、七つの子?』


昔、と言っても去年か一昨年くらいだった気がするけど。ベルモットお姉さんとお出かけしてる時に、偶然組織のターゲットだった人物を見かけたらしく「ボスにメール出すから待ってて」と言われた時に耳にして、不思議に思ってたから覚えてる。アドレスがそんな偶然曲になることあるんだ、って思った記憶がある。


「そう。組織の色が黒である事と、その七つの子を踏まえると、分かるのが」

「CARASUMA…!?」

「烏丸蓮耶…この推理が正しければ、お前はこの日本で最も強大な人物を敵に回そうとしていることになる」

『でもその人…確か亡くなってなかった?』

「ああ、もうこの世にはいないはずだ。なので、事が終結するまで私と有希子は日本にとどまり、一緒に策を練ることにした」


烏丸蓮耶は警察学校に出入りさせてもらっていた時に、特にやることがないときに授業を後ろの方で見ていたのだけど、その時何度か耳にした事がある名前で覚えている。そういえば羽田浩司殺害事件の事も警察学校で見たんだった。
お父さん辺りに聞けば資料見せて貰えないかな。無理かな。無理か。私一般人だもん。

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