赤い女

その後、峰岸さんにお昼が出来たと呼ばれて、皆でリビングに集まった。


「そういえば、皆さん何の集まりなんですか?」

「高校のアウトドア部」

「皆で山登ったり、キャンプやったりしてたよ」

「部員は同級生の五人だけだったけど、楽しくやってたよ」

「じゃあ、さっき森で見かけた赤い服の女の人がもう一人の部員さんなんですか?」

「!?」


蘭ちゃんのその言葉に、皆驚いた様子で。峰岸さんは水の入ったコップを乗せたトレイを落として、コップを割ってしまった。


「そ、それ!!どこで見たの!?」

「森の中で、園子と…」

「赤い服を着てたって、本当!?」

「は、はい…赤いレインコートに、赤いブーツ履いてる上から下まで赤くて、髪の長い女の人でした…」

「おい、それってまさか…」

「嘘だ!!」


一番青ざめた顔で、薄谷さんは椅子が倒れるほど勢いよく立ち上がった。


「そんなわけない!!聡子が、生きてるわけないじゃないか!!」

「あ、いや、俺は15年前の殺人犯じゃないかって…」

『殺人犯?』

「その話、詳しく聞かせてくれない?」


真純ちゃんが言うと、皆落ち着いてきたようで。峰岸さんが「デザート食べながら話しましょうか」と言い、奥から人数分のデザートの乗ったお皿を持ってきてくれた。

15年前に、近くの貸別荘で殺人事件があったらしい。
殺害されたのはどこかの会社員。浮気相手とお忍びで貸別荘に旅行に来ていたところ、乗り込んできた奥さんに刺された。警官が来た時には部屋の中は血で真っ赤に染まっていたようで、奥さんが着ていた白のレインコートが真っ赤に染まるくらい血が飛び散っていたという。そこから付いた名前が「赤女」。
その赤女は駆けつけた警察官を切りつけて森の中に逃走し、まだ捕まっていないと。

その事件のあった三年後。高校の夏休みにもう一人の部員の聡子さんが赤女を見たと言い、皆でその赤女を探そうという事になった。しかし、探している途中で聡子さんがいなくなり、辺りも暗くなってきて来た頃に警察を呼んで一緒に捜索したら、一週間後に沼の底で聡子さんは遺体で発見された。
発見された沼の近くには、殺人事件で使われた包丁も見つかり、聡子さんは赤女に追いかけ回され沼に嵌って死んだのではないかと。


『それで、その赤女を捕まえて欲しいっていうのを、真純ちゃんのお兄さんに?』

「いや、それは警察の仕事だろ?」

「卒業後も聡子の遺体が見つかった日にこの貸別荘に集まるようにしててね。一昨年辺りから窓ガラスが割られて、林檎が大量に投げ入れられていたり、給湯器のタンクの中に赤い薔薇の花びらが詰まっていたり。玄関の扉に赤いペンキが掛けられていたりとかしてて…」

「だから玄関の扉が真っ赤だったんですね」

「ええ、玄関は管理人が上から赤く塗って何とかしたみたいだけど」

「林檎や薔薇の花びらも、君達が見たっていう赤い服着た女も誰かのイタズラだろうし、その犯人を突き止めて欲しくて、頭のキレる世良を呼ぼうってなったわけさ」


今の話は赤女事件と、聡子さんの事件と、貸別荘荒らしの三つにわけられるけど、一件全く関係なさそうで関係ある事件だろう。真純ちゃんはすぐに森の中を散策に行き、コナン君も彼女について行った。


「あ、ちょっとコナン君!?」

『私もついて行くから大丈夫だよ』

「本当?ごめんね、珠雨ちゃん」

『気にしないで』


すぐに私も別荘を出て真純ちゃん達の元へ向かう。


『真純ちゃん』

「珠雨君。僕たちに付いてくるのは構わないけど、結構歩くと思うよ。大丈夫かい?」

『大丈夫。私も赤女気になるし』

「そう?辛くなったらすぐに言ってね?」

『うん、ありがとう』


真純ちゃんの提案で、近くの沼や他の貸別荘の近くを散策する事になった。でも、既に警察が調べきっているから、これといった発見はないかも。


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