副担任

『それで、聞きたいことってなぁに?』

「いや、聞きたいことはあるけど…ここホントにいいの?」


お散歩が終わってポアロに行ったら歩美ちゃんや光彦君、蘭ちゃん達がいて、私を見るなりコナン君が「聞きたいことがあるんだけど」と言われた。ただ、ポアロだと話しづらい事らしく、おそらく組織関係かなんかだろうと思ってコナン君を実家に連れてきたのだけど、場所が場所だからかコナン君はあたふたしていて、落ち着かないらしい。


『安室の家に行くにはお兄ちゃんの許可がいるし、なんなら監視役の人に盗聴されてるもの。私は慣れたけど君が嫌でしょ』

「ま、まあ…」

『お手伝いさんしかいないし、リビングには来ないようにさっき言ったから大丈夫だよ。用があれば内線来ると思う』

「お手伝いさんいるんだね」

『私も父も基本いないから、お掃除だけ頼んでるの』


父が帰宅しても、あの人忙しいから掃除なんてする暇ないしね。


『それで、聞きたいことって?』

「あ、うん。あのね、最近僕達のクラスに若狭瑠美っていう副担任が来たんだけど」

『若狭瑠美先生?』

「うん。知ってる?」

『ううん。今朝名前知ったくらい』

「今朝?」


首を傾げたコナン君に今朝電話が来たことと、黒田のおじ様も気になっているらしいという事を教えた。


「黒田管理官が?」

『うん、その先生なにかあるの?』

「ううん、今のところは右目が見えてないらしいって事くらいなんだけど…黒田管理官の事すごく睨んでたんだ。灰原から聞いたラムの特徴が片方の目が義眼らしいから…」


組織の人間に敏感なお姉ちゃんは何も言って来ないのか聞けば、お姉ちゃん的には好感度は高いらしい。
学校で白骨遺体が見つかった時、犯人によって倉庫に閉じ込められてしまった際に複数犯だったのを助けてくれたり、皆でキャンプに行った時には人質に取られた歩美ちゃんを助けてくれたりして、普通に見れば勇敢で子供に優しい先生だ。新聞に載った事件の時も、子供達に襲いかかってきた犯人に足を引っ掛けて、犯人に突き飛ばされる振りしてこめかみに肘を入れたらしい。


『突き飛ばされる「振り」?』


どうやらその先生、確信はないけどどことなく「ドジな先生」を演じているように見えるらしい。ただ、本当に確信がなく、その新聞に載った事件の時になんとなく不自然だなと思ったみたいで、コナン君が言うには「事件が起こることを分かっていて自分達がそこに行くように仕向けたように感じた」らしい。
事件が起きたのが先生が住んでいるマンションの、先生の部屋の隣で、学校の演劇で使う小道具を先生の部屋で仕上げる手伝いをしに行った時に事件に遭遇した、というより第一発見者になったらしいのだけど、先生の部屋のリビングにレシートが落ちてあって、それがその日先生の家に行った少年探偵団の人数分の食材だったという。


「その日、先生遅刻してきたんだけど、一人暮らしの先生がコンビニでまとめ買いするかな」

『コンビニ?スーパーとかじゃなく?』

「コンビニのレシートだったよ」

『うーん…お姉ちゃんが気にならないなら組織とは関係なさそうだけど、黒田のおじ様が聞いてくるってことはちょっと気になるね』

「うん…」

『でも、もし組織の人間なら、学校の先生する必要あるかな…』


そう言うとコナン君は、少し前にベルモットお姉さんが学校の教員に成り済まして潜入していた事を教えてくれた。その時に彼女はコナン君とお姉ちゃんの事を調べて、組織に報告しようとしたのをコナン君が止めたらしい。だから彼女は今、コナン君達のことを知っていて尚且つ組織には報告していない。
だけど、もし他の組織の人間が何かに気がついて潜入していたら。そうなると危険なのはお姉ちゃんだけではなく、その事を知っているコナン君とベルモットお姉さん、私や博士にも危険が及ぶ可能性があるし、もしかしたら私達と関係が強い少年探偵団や小五郎さん達にも手が回る可能性がある。


『…分かった。父と零さんにもその事共有してもいい?』

「零さん?…あ、安室さんか」

『そっか、本名の方だと分かりにくいかな』

「ううん。下の名前で呼んでると思ってなかったから…」

『私、お友達と古い知り合いは基本下の名前で呼ぶよ?』

「え?安室さんと友達なの?」

『そうだよ?』


そこに疑問持たれると思ってなかった。安室珠雨が安室透を嫌いすぎているからかな。

コナン君は公安に情報を共有することに賛成してくれて、FBIの人達にはコナン君から伝えてくれる事になった。


『キールお姉様には言わないの?』

「彼女はまだ、俺や灰原が幼児化した事は知らないから」

『そっか…ラムのおじ様は、キュラソーお姉様という優秀な右腕を亡くしてからは、自分で行動することが多くなったから、もしかしたらその若狭先生とは別でいるかもしれない。なんにせよ気をつけてね』

「分かった。珠雨さんも、気を付けてね。特に諸伏警部の口止めちゃんとしないと、また言うよあの人」

『あの後しっかり言ったから大丈夫』

「そう言えば諸伏警部と最近どうなの?」

『どうって…特にないけど』

「え〜?本当〜?僕、珠雨さんと諸伏警部のお話聞きたいな〜」

『高明さんの話と平次君の幼い頃の写真どっちがいい?』

「服部」

『いい子』


即答したコナン君に笑いながら、少し待つように言って自分の部屋にアルバムを取りに行った。すれ違ったお手伝いさんに、お話が終わったから入って大丈夫だと言えば、すぐにコナン君にお茶のおかわりがいるかを聞いていた。

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