貸別荘

『よかったの?私まで』

「勿論!それよりおしり痛くないか?」

『うん、平気』


真純ちゃんが誘ってくれた森林浴も兼ねたお兄さんの代理依頼。お兄さんの高校時代の友人が貸別荘の謎を解いてくれと依頼したらしいけど、当の本人は行けないと。

お兄さんは探偵ではないものの、高校時代によくクラスで起きた事件などを解決していたから、今でもよく謎を解いてくれと依頼をされるらしい。が、本人は超がつくほど忙しいらしく、大体真純ちゃんが派遣されるようで、今回もそのひとつなんだとか。
その依頼主の人に、私や蘭ちゃん達の友人数名連れて行っていいか聞いたら快く許可を出してくれたそう。


「あれ、でも世良さんのお兄さんって亡くなったんじゃ…」

「それは一番上の兄、頼んできたのは真ん中の兄だよ。兄ふたりに妹ひとりの三人兄妹。皆苗字は違うけどね」

「どうして皆苗字が違うの?」

「パパが死んだりとか、色々あってね。僕は母の旧姓の世良だけど、真ん中の兄も高校卒業するまでは世良だったよ」

「じゃあ、世良になる前は…?」

「赤い…」

「え?」

「赤い人。さっき木の向こうに赤い人いたよね?」


真純ちゃんの苗字やお兄さんの事を話してる途中、園子ちゃんが小さく呟いた。


「う、うん…赤いレインコートに、赤いブーツを履いた髪の長い女の人がさっきまであの辺にいたような気がしたんだけど…」


園子ちゃんだけが見たのなら見間違いなんだろうけど、蘭ちゃんも見たのなら確定だと思う。そこに真っ赤な人がいたんだろう。


「赤女…」

「え?うわっ!?」

『コナン君!?』


真純ちゃんの呟いた言葉にコナン君が首を傾げ、その直後にバランスを崩したのか、後ろにあった坂道をコナン君が転げていってしまった。
急斜面じゃなく、且つそこまで距離があるわけじゃないからすぐに真純ちゃん達が駆け寄る。コナン君が落ちたすぐそこは沼で、落ちなくてよかったと皆安堵の息を漏らした。


『大丈夫?』

「う、うん…」

「足下には気をつけた方がいいよ。この森、底なし沼とかあるらしいから」


先に言ってよそういう事…

そこからは何事も無く真純ちゃんのお兄さんの友人がいるっていう貸別荘についた。すぐにそのお兄さんの友人の一人の峰岸さんが来て、いつも通り真純ちゃんを男の子だと勘違いしてからの自己紹介が始まる。
この貸別荘で起こる妙な事件の証拠写真を、別の人が持ってくると言うと、その人はすぐに来て真純ちゃんに写真の入った封筒を手渡してすぐに別荘の中に入っていった。写真を持ってきた河名さんは人見知りで、最初は誰にでも無愛想なんだとか。


「じゃあ、中に入りましょうか。あなたは、車椅子どうする?降りる?タイヤ変えたり、拭いたりするなら手伝うけど」

『義足あるから…車椅子は玄関の端に折り畳んで置いても大丈夫?』

「ええ、大丈夫よ」

「じゃあ義足付けるの手伝うよ」


真純ちゃん達に手伝ってもらって義足を付けて、車椅子から降りる。


「毎回思うけど、安室さんの義足超可愛いよね」

「ね〜、そういうのって普通に売ってあるの?」

『オーダーメイドで作ってもらって、自分でカバー作るの。ほら、ここのリボンも外せるよ』

「ほんとだ。というか、外しても可愛い…」


義足を付け終わると、また別の男の人達が来た。薄谷さんと任田さん。
たまたまそこで会ったから一緒に来たらしい。


「にしても、女の子が来るって言うから楽しみにしてたが、彼氏連れとはね」

「え?」

「世良の妹さん、女友達連れてくるって聞いてたけど」

「僕がその妹の世良真純だよ!!」

「え!?君、女の子だったのかい!?」


毎回間違われて大変だね、真純ちゃんは。


「ねぇ、お兄さんの背負ってるそれ。何が入ってるの?」

「ああ、これか?バットだよ。撃退用に毎年持ってきてるんだ」


そう言うと、お兄さんはわざわざバッグを開けて見せてくれた。熊でも出るのかと聞くと、そうじゃないとお兄さん二人は首を横に振った。


「とりあえず、お昼ご飯にするけど、アレルギーとかってある?」

「いえ、特に…安室さんは?」

『食べられないものは無いし、今日は特に気にしないで大丈夫。ただ、少なめにしてもらえると嬉しい』

「分かったわ。じゃあ、少し待っててね。任田君達はこの子達に部屋の案内してもらえる?」

「おう、任せろ」


峰岸さんはすぐにキッチンに向かって、お昼ご飯を作り出した。私達は任田さんに案内され、蘭ちゃんと園子ちゃん、真純ちゃんとコナン君と私の二部屋にわかれて、各々の荷物をそこへ運んだ。


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