自殺か他殺かコーヒーか水か

『高木刑事』

「なんだい?」

『喉乾いたから飲み物買って来てもいい?』

「僕の付き添い付きでいいなら構わないよ」


一緒にいてくれた鑑識さんは、署に戻って現場から回収した証拠品を詳しく調べると行ってしまった。ひとりになって暇だからと高木刑事にこの場を離れていいか許可を取ると、高木刑事も付いてきた。多分いつもの。


『何か分かった?』

「いや、特に…珠雨ちゃんの方は何か分かった?」

『あそこに吊り上げた方法と犯人なら』

「えっ」

『ただ証拠がない』


なんなら動機も分かってない。

自動販売機のあるところまで高木刑事が車椅子を押してくれて、カバンからお財布を取り出す。何にしようかなって迷いながらさっき鑑識さんに説明したことと同じことを説明すると、高木刑事は「無理じゃない?」と苦笑いで言った。


「だって、大きな物を吊り上げる機械を動かす制御室は閉まっていて、鍵を持っているスタッフは全員外出していたんだよ?円城さんが波土さんを持ち上げられるとは思えないけど…」

『やり方があるんだけど…口で説明するのが難しいし、多分あとでお兄ちゃん達がやってくれると思う』

「本当に出来るの?」

『うん。なんなら私でも出来る』

「じゃあ…あとで説明してもらうとして……でもなんで自殺をわざわざ殺人に見立てる必要があるんだ…?」

『自殺した原因がマネージャーさんとか?』


それを聞いて高木刑事は「そういえば波土さんと円城さんは昔交際していた」って教えてくれた。高校の頃からデビューした頃まで交際していて、その後別の女性と結婚したと、記者の人に聞いたって。
結婚したのが16年前で、新曲の「ASACA」が出来たのが17年前。前回のライブの後に何のことかは分からないが「17年間何故黙っていた」と波土さんが社長さんと言い合いになり、その後新曲を発表する宣言をしたから、記者の人はそこが原因じゃないかと思っているらしい。


『男女のいざこざねぇ…』

「…ねぇ、珠雨ちゃん」

『んー?』

「それコーヒーだけど、飲めるの?」

『あっ』


会話の方に思考を向けてたから気づかなかった。自動販売機で買って手に持ってたものが缶コーヒーで、高木刑事はそれを指さして聞いてくれた。言ってくれなかったらそのまま飲んでた、危ない。飲む?って聞いたら勤務中だかと断られてしまい、とりあえずもう一個お茶を買って、元いたロビーに戻る。
高木刑事は目暮警部に呼ばれて事情聴取へと戻り、私はこの缶コーヒーをどうしようかと悩んでいた。


『お兄ちゃーん』

「なに?」

『間違えて買っちゃったんだけど、いる?』

「珍しいな、そんな間違いをするなんて」


近くにいた兄に差し出すと、笑いながら受け取ってくれる。
「何か分かった?」って聞くと自信満々な顔で兄は頷いた。コナン君も分かってるらしく、今からコナン君と兄と昴さんの三人で目暮警部達に推理を披露すると。


『昴さんと?』

「不本意だけどね」


肩を竦めて言う兄にため息が出る。

沖矢昴が赤井秀一であると言う事は理解しているけど、以前問い詰めた時は優作さんが沖矢昴で、「沖矢昴と赤井秀一が同時刻に別の場所に現れた」事がまだ解けていないらしく確証ではないらしい。少し考えたらすぐ分かると思うけど。

いい加減仲直りとまでは行かなくていいから、誤解くらい解いたらいいのに。

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