連行して、それから

蘭ちゃん達の様子見で事務所に行きたいから、ポアロに向かう零さんにお願いして一緒に向かった。店内に入れば梓さんが「こんにちは!」って迎えてくれる。
蘭ちゃん達に用があるって言って荷物を置いて一旦お店を出ると、どこかに行っていたらしいコナン君が息を切らして帰って来たところのようで。


「…珠雨、さん…」

『どうしたの?』

「…っはァ、小五郎の、おじさんが…」


途切れ途切れに言葉を口にするコナン君。教えてくれようとしてるのだけど、早く戻りたいらしくチラチラ扉の方を見ている。私がそっちに行こうとすると、コナン君も駆け足で階段をのぼり、事務所の更に上にある自宅の扉を開いた。
中には蘭ちゃんと園子ちゃん、小五郎さん。それに裕也さん達公安の人が数人いて、家宅捜査の結果、押収した小五郎のパソコンからサミットの予定表と国際会議場の見取り図が発見され、事情聴取の為任意同行に連れていこうとしているところだった。

当たり前だけどそれは公安が仕組んだもので、小五郎さんには心当たりなんて一ミリもあるわけが無い。小五郎さん本人も「知らない」と否認していて、蘭ちゃんと園子ちゃんは「そんな事出来ない」と言い張っているが、そんなこと知ったこっちゃないと言わんばかりに裕也さんら署に同行を求めた。だけど当たり前に小五郎さんは「公安の任意同行なんて応じられない」と手を振り払って同行を拒否した。


「では、今の公務執行妨害で逮捕します」

「手を払っただけだろうが!」


裕也さんの一言で、小五郎の腕に手錠が掛けられた。裕也さんが時計で時間を取り、他二人が小五郎さんを連れ出す。
それでも小五郎さんは当たり前だろうけど納得がいかないから、振り払おうとするも大人二人に抑えられながら連れていかれる。


「暴れれば容疑が増えるだけで…」

「!!」


そう言う裕也さんの頬を、思いっきり叩いた。


「悪ふざけはやめなさい」

『耳に金平糖でも詰まってんじゃない?人の話聞いてた?』

「…それでは」


ズレた眼鏡をまたかけ直して、裕也さん達は小五郎さんを車に乗せて警察庁へ。それを止めようとコナン君は下に降りてまで追いかけて行って、蘭ちゃんは泣き崩れてしまった。蘭ちゃんを支える園子ちゃんに近づいて「一旦、お母さんに相談して」と伝え、逮捕されても冤罪なのは確実だから、弁護士を付ければなんとかなると付け加えれば、蘭ちゃんは目を擦ってすぐに向かう準備をした。
戻ってきたコナン君に、蘭ちゃんがお母さんのところに向かう事を伝えると、「僕も行く!」と。


『コナン君』


蘭ちゃんが準備をしている間、怒っていて少し焦っているようなコナン君を手招きして耳元で話しかける。


『ごめんね。裕也さんが』

「…知ってる人なんだ?」

『うん。私の監視兼護衛役』

「え?それ安室さんじゃないの?」


キョトンとするコナン君に、裕也さんと零さんの他にもう一人いる事を言えば、「その人怪我は?」と心配そうに聞いてくる。首を横に振ると、「ごめんなさい」と謝られたけど、謝るのはこっちだ。


「ねぇ、安室さんがどうしてこんな事してるのか、知ってる?」

『ううん、何も聞いてない』

「…そっか…なんでさっきビンタしたの?」

『ここに来る前に公安部に寄ったんだけど、その時毛利探偵事務所に行くってことだけ聞いててね。大事な友達の家だから丁重に接してねって言ってたんだ』

「な、なるほど…でも一歩間違えたら珠雨さんも逮捕されてたんだよ?」

『大丈夫よ。あれで逮捕されても車の中で手錠外されるから』


笑って両手をぷらぷらと揺らせば、コナン君は引きつったように笑う。

蘭ちゃんが準備出来たようで、「行くよ!」とコナン君に声をかける。私も行くか聞かれたけど、今日はやめておくと断ってポアロの前で三人と分かれた。
ポアロに戻ると、梓さんは急な買い出しに出ていて零さん一人だけだった。さっきまでいたお客さんはついさっき会計を済ませて出ていったらしい。


『蘭ちゃん達、お母さんのところに行ったよ』

「そっか、ありがとう」

『わざわざ裕也さんを担当させたのは何か理由があるの?』

「ん?」

『こういう時、裕也さんは零さんの指示で裏から色々やるでしょ?でも家宅捜査とかで表に出てくるの、珍しいなぁって思って』

「あぁ。コナン君の携帯に少しね」

『…盗聴?』

「うん。ほら」


そう言って零さんは耳に付けてるワイヤレスのイヤホンを見せてくれた。


『盗聴するなら、裕也さんの協力者って人。私が監視する必要ある?』

「ないけど、言語だけじゃ行動が分からない時があるだろう?」

『人のデート邪魔しておいてさせることですかね』

「本当にごめんね!」

『お兄ちゃん私アイスが食べたい』

「こういう時だけちゃんと妹するんだからなぁ…はいはい、分かりました!何味がいい?」

『バニラ…あ、やっぱりチョコレート』

「はいはい」


苦笑いしながらカチャカチャと準備をしてくれる零さんは、少ししてして「どうぞ」ってチョコレートアイスと少しのバニラアイスの二つを乗せたお皿を出してくれて、一緒にアイスココアも持ってきてくれた。こんなに甘いものを一気に摂取したのは八歳の誕生日以来かもしれない。

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