家宅捜査

『毛利小五郎を爆発犯に仕立て上げる?』

「はい」


公安部に行くと、今から裕也さんが数人を連れて外に出るところで、どこに行くのかと聞くと毛利探偵事務所だと教えてくれた。それに首を傾げると、どうやら零さんの指示で「毛利小五郎を爆発の犯人だとし、事件化しろ」と言われたらしい。
爆発直後に現場には小五郎さんの焼き付いた指紋を付けており、捜査会議でそれを報告した為、既に刑事部では事故ではなく事件として捜査が開始されていた。


『頭のネジ飴玉で出来てんじゃないの…?』

「…俺、澪さんの馬鹿の例えをお菓子でする表現結構好きなんだよな」

「俺も」

「今回の件、このままだと事故として断定されかねない為、事件化にしろと仰っていて…」

『で、なんで小五郎さん?』

「さぁ…」


つまり今から行くのは家宅捜索で、それに刑事部の何人かも同行するらしい。ただ、小五郎さんを冤罪で犯人に仕立て上げる訳ではなく、巻き込まれただけの人にすると言う。


『どういう事?』

「自分にもよく分からないのですが、爆発直前にネットワーク環境を調べるように指示されていたのでそれが関係あるのかと」

『…つまり、なにかしら遠隔操作出来るものによって起きた爆発を、小五郎さんのパソコンなり携帯なりで中継地点にされたようにするって事?』

「おそらく、そういう事かと」


脳みそ甘ったるい砂糖菓子かよ。クリスマスケーキの上に乗ってるサンタさんの砂糖菓子より甘い。


『んー……私には口を挟む権利も、止める権利もないから何も言えないけど…私の友達のお父さんなの。乱暴にしないでね』

「はい」

「澪さんお友達出来たんすか!?」

「おい」

『友達くらいいるわ』


しばき倒してやろうか。

「そろそろ行きます」と裕也さんが言うので、見送って部署内に入ると丁度今からポアロに行くのか私服の零さんと鉢合わせた。


「お…っと、すまない」

『ううん』

「わざわざここに来てどうした?お父さんに呼ばれた?」

『それもあるけど、眞鍋さんが変わるって聞いて』

「あぁ…うん。怪我が酷くてね、すぐに現場に戻るのは難しそうなんだ」

『そう…でね、次の人は私が選んでいいかなって聞きに来たの。あと、他の皆は怪我大丈夫かなって』

「怪我は大丈夫だよ。次の人はそうだね…澪さんが決めれる様に上に掛け合ってみるけど、サミットが終わってからかな」

『そっか』

「あぁ、そうだ。澪さんに少し手伝って欲しいことがあるんだけど…」


そう言われて「何を?」と聞くと、このまま小五郎さんは一度送検する流れになるという。その際、おそらく蘭ちゃんが母親である妃弁護士に助けを求めるだろうが、身内の為弁護はしないだろうと。それで弁護士を探しだすだろうから、裕也さんの協力者から弁護人を申し出て無罪を取るようにする手筈だと教えてくれた。


「で、だ。その協力者の監視を澪さんにしてもらいたくてね」

『…それ必要ある?』

「念の為だよ」

『でも私、明日から長野に行くんだけど』

「あー…悪いんだけど…」

『…』

「本当にごめんね」


サミット中は零さんは勿論、監視役である他の二人も警備に当たるから長野に行く予定だった。サミットの警備には地方警察官も含めた約二万人を予定しているけど、その中に高明さんは含まれず公安の代わりに私の警護及び監視を命じられていた。サミット開催は明後日だから、要は三日間休みというわけで。
ただ零さんの頼みはこの事件が解決するまでの期間だろうから、正直いつ終わるかが分からない。最悪長野には行けないという事。

私は零さんの協力者だから、自分のことよりそっちを優先しなきゃだから高明さんに行けなくなったことを伝えなくてはならないのだけど。カバンから携帯を取り出して、どうしようと画面とにらめっこしてたら、零さんが笑いながら「熱出たって言うのが無難じゃないか?」と。


『…うー…ん』

「?」

『……ん゙ん゙〜』

「悩みすぎじゃないか…?」

『こんな嘘であまり心配させたくないもん』


にらめっこしてなんとかメールを打ち込み、「これでいいかな?」と零さんに確認してもらって送信する。なかなか休み取れないから楽しみにしてたのに会いに行けなくなるし、眞鍋さんはいなくなっちゃうし。散々だわこの事件。

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