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『ごめんね、急に予備の変声機借りに来て』
「全然構わないが…何かあったのか?」
翌日。昴さんに連絡を入れて工藤家へ向かった。
歩いて行こうと足をつけて家を出た時に、丁度裕也さんがインターホンを押そうとしていた所だったみたいで、連れて来てもらった。
昴さんにチョーカー型変声機の予備があるかと聞けば、あると返ってきて、緊急事態だから貸してほしいと言うとすぐに持ってきてくれた。
「使用者はお嬢か?」
『うん』
「…君が変装するという事は、降谷君に何かあったのか」
『まあ、ちょっとね』
変声機の使い方を教えてもらいつつ、そんな会話をする。
FBIも合同させようかという提案をしてくれたけど、それは断った。日本警察の捜査でどうしても無理だとなれば、目暮警部にでも伝えてはみるけど多分大丈夫でしょう。
変声機のボタンを押して、声を調整する。
『あー…あー…どう?』
「ああ、問題ないだろう。しかし、本当に大丈夫か?」
『大丈夫だってば。何かあればコナン君からも連絡いくと思うよ』
「…そうか…」
あまり動かない私が、変装する程の事かよっぽど気になるんだろう。どこかしらソワソワしているのが目に見えてわかる。
変声機を付けたまま昴さんにお礼を言って、工藤家から出る。外には裕也さんが待っていてくれて、車に乗り込むと「お次はどちらへ?」と行きたい場所を聞いてくる。
『次…は、お父さんのところ』
「…え?」
『お父さんのところ』
「は、はぁ…」
まさかの言葉にキョトンとした裕也さんに、もう一度同じことを言えば、とりあえずと車を出してくれた。いつもなら私の口から「お父さん」なんて言葉すら出てこないからそりゃ驚きもするよね。
安全運転で規則を守り、尚且つ最短で裕也さんは警察庁へと車を走らせた。また車で待機している気だったのか、一緒に付いてきてと言えばまた驚いた声を出して、理解しないまま私と一緒に中にいるお父さんの元に。
『お父さん』
「え、なに、どうし…珍しいね、澪から来るなんて…風見君まで連れて…」
『お願いがあるの』
「う、うん。お願いがあるんだな。聞こう。だから、机に乗ろうとするのは止めなさい」
勢いよく扉を開けてそのままお父さんのところへ一直線に行き、机に身を乗り出しながらそう言うと後ろについてきてくれていた裕也さんから下ろされた。
「…で、お願いというのは?」
『私に捜査権限少しでいいから頂戴』
「捜査権限、というのは…降谷君の事か?」
『そう。絶対無茶しない、無理しない、なんなら裕也さんと行動する事を制限したっていい。だから少しだけ捜査権限をちょうだい』
「ダメだ」
『なんで』
「澪。お前は降谷君の協力者であって警察ではない。そんな一般人に捜査権限はあげられない。捜査資料を見たり、警察学校に出入りさせたり、今ここに入っている事でさえ特別権限なんだ。それ以上の権限は与えられない」
確かに、一般人では出来ない事をさせてもらっている自覚はある。これ以上権限を貰えば、お父さんの職権乱用ということだ。
だからと言って「わかりました」と家に引きこもって、零さんが無事に助かるのを待ってる訳にも行かない。前に日下部さんが言っていたけど、「警察と協力者の繋がりは金と契約書だけではない」はその通りだと思ってる。勿論私が足でまといになる事は承知の上だけど、できる事はやりたい。
『…じゃあ、私が「東条澪」で人前に出る許可を頂戴』
「…?」
『ここに来る前に変声機を借りたの。変装して見た目を変えて、声も変えたら「安室珠雨」を知ってる人でも同一人物とは思わない。「東条澪」として人前に出る許可だけちょうだい』
「……まあ、それなら…」
『ホント?』
「ああ。但し、絶対に「安室珠雨と東条澪が同一人物である事がバレない事」が条件だ。少しでも怪しまれたらそこで止める事。いいね?」
『うん』
「じゃあ、あとでまたおいで。変装道具用意しておくから…風見君、悪いが澪を頼んだよ」
「はい」
裕也さんが返事をすると同時に館内放送で爆発事故が起こったと通報が入った。渋谷の廃墟ビルで大きな爆発だと。もしかすると三年前と同じかもしれないからと、念の為裕也さんと私で現場を見に行くことになった。三年前の爆弾を見ていて現状動けるのが私だけだからと、お父さんはため息を吐きながらそう言って私たちに現場に向かうよう指示した。
さっき捜査させられないって言ったばかりだけど、こればかりは仕方ないだろう。
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