告白場所

あの後すぐに病院に行ったが、検査結果も特に何も無く精神的なものだろうが念の為二、三日入院になった。

そして入院中に平次君から電話があった。


《ねーちゃん頼むわ!》

『そう…言われてもねぇ…』


何事か聞けば新一君が蘭ちゃんに告白したらしく、自分もと焦っているようで。ただ、新一君はロンドンのビッグベンの前で告白したとかで、負けたくないと謎の負けず嫌いを発揮していた。
で、ロンドンのビッグベンに負けないような綺麗な景色のある場所知らないかと聞くために連絡してきたようで。


《なんかこう、女の子が好きそうな、キレーな場所知らんか?》

『んー…』

「こんにちは」

『こんにちは、コナン君。今日も来てくれたの?』

「うん。電話中?」

『平次君だから大丈夫』


カラカラ、と扉が開く音がしてそっちを見るとコナン君がお見舞いに来てくれた。学校帰りのようでランドセルを背負ったままだ。「コナン君」と呼べば電話の向こうにいる平次君が「なんやて!?」と叫んだ。耳痛いわ。
コナン君が「どうしたの?」と首を傾げるので「和葉ちゃんに告白したいんだって」と伝えれば、目の前のコナン君はニヤニヤとしていて、電話の向こうの平次君は慌てた声を出して「ねーちゃん!」と怒っている。三人で会話が出来るようにスピーカーにすると、コナン君は備え付けの椅子に座った。


「とうとう告白するのか」

《う、うるさいわい!で、ねーちゃん無いんか》

『別に、綺麗な場所じゃなくていいと思うけどなぁ…』

「そういえば…珠雨さんはどこで告白されたの?」


首を傾げて聞いてくるコナン君。多分純粋な気持ちで聞いてきてるんだろう。


『告白っていうか…あれなんて言うんだろうね』

「ほぼ確認だよね。でもそれが結果付き合う事になったんだから、告白に変わりないでしょ?」

《待て。ねーちゃん彼氏おるんか?》

「あれ…話してなかったの?」

『話してなかったっけ?』

《知らんぞ!?つまりなんや、俺だけ除け者か!?俺だけ独り身か!?》

「ほぼ両思いだと思うけどなこいつ…」

『確かに』


ボソッと呟いたそれに同意で頷くと、コナン君は「やっぱりそう思う?」とまた小声で聞いてくる。
どう見たって両想いでしょうよ。和葉ちゃんは明らかに平次君の事好きだし。というかそう言ってたし。平次君は今みたいに和葉ちゃんが喜びそうなところ探してるし。それに和葉ちゃんに聞いたけど、東京に来る時はほぼ一緒に来てるって。そんなのもう仲良し超えて付き合ったらいいじゃん。


「で、珠雨さんはどこだったの?」

『家』

《い、家…?》

『勉強してた途中だったし…普通に家で、私の部屋だったよ』

《そんな普通の場所でええんか?》


綺麗な景色の場所で告白されるのも勿論嬉しいけど、「告白された」っていう事実の方が嬉しいから景色なんて記憶の二の次になっちゃう。個人的に場所にこだわるなら告白の時じゃなくてプロポーズとかの時じゃないかな。そう言うと平次君は「そうか」と返事したけど、どこか腑に落ちないような声だった。
というか謎の負けず嫌いで平次君が勝ったとしても、和葉ちゃんからしたら勝負事に利用されたと思われて嫌なんじゃないかな。


《やけど、どういう風に、その、告白したらええんや…》

『普通に「前から好きでした、付き合ってください」でいいと思うけど』

《…ほーか?》

「珠雨さんはどう…というか、珠雨さんが言ったんだっけ?」

『えっとね……「自意識過剰かもしれませんが、もしかして僕のこと好きですか?」って聞かれて、そうですって頷いたら「貴女が16歳になった時にまだ好きでいてくれたら、お付き合いしましょう」って。当時私14歳とかだったから』

《なんやかっこええな!?》

『でしょでしょ?私の彼氏かっこいいの』


警察官だし、ノンキャリアで警部だし、頭も良いし、顔も良いし、カッコイイし、言動行動もカッコイイし。全部カッコイイよね、高明さん。すぐに嫉妬して拗ねるところも可愛いのよね。勿論見た目も可愛いしかっこいい。大和さんから見せてもらった子供の頃の写真なんて家宝ものだよ。ロック画面見る度にニコニコしちゃう。


《その彼氏さんとは結婚は考えてないん?》

「プロポーズされたんだよね?」

『まあ…それっぽいのは』

《なんて言われたん?》

『確か、「その後20歳になっても好きでいてくれたら結婚しましょう」って…』

《ちゃんと年齢考えてくれてんねや…でもねーちゃん、もう20歳超えてるやろ?》


平次君の疑問は最もだ。実年齢は20歳をとうに超えている。
一応、「父の手伝いで年齢も名前も変えるから結婚はまだ出来ません」とは伝えてるが、組織の事は全く伝えていない。高明さんも、父が警察庁所属で公安であることを理解しているから、詳細は聞いてこない。「無理だけはしないように」とだけ言われている。

高明さんは勿論、由衣さんと大和さんも組織の事に巻き込みたくない。だけど、高明さんは景兄とそっくりだからもし組織の誰かが顔を見た時、何か探りを入れられる可能性は高い。だから本当に信頼出来る人にしか私と高明さんが交際関係であることは伝えていないし、私が高明さんに好意を寄せていることすら基本知らせない様にしている。
零さんも、景兄を死なせてしまった罪悪感からか、高明さんを遠くから守るという決意はあるらしく、巻き込まないように手を回してくれたりしている。


『私は早く結婚したいし、新一君は早く元に戻って蘭ちゃんとラブラブしたい。だから早く組織を潰さなきゃなのよ』

「そっか、あの人年齢が…」

《そんな年上なん?》

『実年齢だと12上だったかな』

《じゅうにぃ!?ねーちゃんが確か23やから…さんじゅうご!?》

「35には見えねぇよな」

『可愛い顔してるよねぇ。そこも好き』

《踏み込んだこと聞くんやけど、その、ち、ちゅーとかは…》

『するけど?』

《ホンマに!?…ねーちゃんでもするんや、そういうの…》

「あの人やるんだ、そういうの…」

『私達の事なんだと思ってるのよあんた達は』

「《無欲》」

『人並みにはあるわ』


本当に私達のことなんだと思ってるんだこの子達は。


『私はね、突拍子もないことが起きてあの人が化け物になったり、突然シワシワのおじいちゃんになっても好きでいるって決めたの。年齢差なんて関係なく好きよ』


それを聞いたコナン君が隣で顔赤くして「ぉわぁ…」なんて声出すものだから、少し恥ずかしくなってくる。


『だから、好きな人から告白されるのは場所より言葉の方が嬉しいのよ。というか、言葉とタイミングじゃないかなと私は思うな』

《うーん…そうか…》

『場所にこだわり過ぎて、肝心の言葉が伝わらないと意味ないからね』

《…確かに…》

『私が言えることはそれくらいかなぁ』


そう言うと平次君は納得したのか「もう少し自分で考えてみるわ!」と言って電話を切った。考えなくても平次君と和葉ちゃんなら大丈夫だと思うんだけどねぇ。


『それで、コナン君は私に何かお話?』


携帯をサイドボードに置いて聞くと、どうやらコナン君は昨日解決した事件の事を話に来たらしい。

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