防犯カメラの映像

遅れて受付に行くと、防犯カメラの映像が半分何かで隠れていて、丁度ドラムの部分が見えなくなっているらしく確認ができないってコナン君が教えてくれた。マイクの先に携帯を取り付けた自撮り棒を付けて自分達の演奏を録画していたらしく、その携帯の裏が防犯カメラを遮ってしまったと。
その映像を確認している時、店員さんが呼んだ警察が到着し、目暮警部と高木刑事が来た。現場の部屋を確認しながら事情を説明し、防犯カメラの事も話すとボディチェックを受けて休憩所で待機という事になった。


「あ、珠雨ちゃん!」

『…またぁ?』

「う、うん…また…!」


皆と休憩所に戻ろうとすれば、いつもの様に呼び止められる。また私に意見を聞こうとする高木刑事に首を傾げると、少し申し訳なさそうに笑って返された。


『さっき目暮警部と一緒に聞いてた事情聴取、聞いてないから詳しいこと分かんないよ』

「あ、じゃあ教えるから…気づいたことあったら…いいかい?」

『んー……じゃあ今度の高木刑事が一日お休みの日、付き合って』

「休みの日?いいけど…何するの?」

『私お料理好きでよくするんだけど、その試食係が欲しくて』

「まぁ…それくらいなら、いくらでも構わないよ」

『本当?やったぁ』


試食係いなくていつも困ってたんだよね。
最近流行ってるとかいうお菓子をレシピ通りに作っても、それを知らないから味があってるのか分からないし。

試食係に任命された高木刑事は、事情聴取の詳細をメモした警察手帳を手に内容を教えてくれた。

殺害されたのは山路萩江さん。四人で休憩所にいて、山路さんが仮眠を取ると行って一人でスタジオに戻り、残りの三人が代わる代わる起こしに行ったものの起きず、流石に30分以上寝ているからと三人で起こしに行ったら亡くなっていたという。
最初に起こしに行ったのはベースとボーカルを担当している笛川唯子さん。さっき休憩所で声を上げていたギターを担当している木船染花さんのジャケットのボタンが取れかけていたから、それを付けるためにソーイングセットを取りにスタジオに戻るついでに起こしに行ったんだと。最初は胸ポケットのボタンだけ付ける予定だったのが、よく見ると袖口とかも解れていたから結構時間がかかってしまったと。


「防犯カメラにもボタンを付けている様子は映っていたよ」

『付け終わったらそのまま休憩所に戻ったの?』

「あぁ。一応声は掛けたみたいだけど起きる気配がなかったから、休憩所に。その次が木船染花さんで、この店で借りたギターの弦が切れたから張り替えるついでに起こしに行ったと」


それもちゃんと防犯カメラに映っていたようで、ドラムの近くで弦を張り替えてチューニングもしていたと。早く練習再開したかったから、音を出して起こそうとしたと本人は言っていたらしい。その時山路さんはドラムに腕で顔を隠すようにして突っ伏して寝ていて、木船さんの話だと山路さんは仮眠をとる時いつもそうしていたと。

最後に行ったのがキーボード担当の小暮留美さん。練習中に曲を直したいところが出来たから、その直しを兼ねて起こしに行ったんだそう。楽譜もちゃんと書き直された後があり、防犯カメラにもキーボードを弾く小暮さんの姿を高木刑事は確認していた。


「留美さんはキーボードを元あった場所から移動させて、音を出来るだけ小さくして曲を直していたみたいでね。防犯カメラに背を向けていたけど、一応映ってはいたよ」

『キーボードって元々どこにあったの?』

「え?うーん…ドラムから少し離れた場所じゃなかったかな。半分くらい見えてたけど…そうそう、携帯を防犯カメラの所に置いたのは笛川唯子さんで、皆で意見を言い合って萩江さんが「そこでいいから練習始めよう」って言ってそこになったって言っていたよ」

『じゃあ、この…カーテンは?』


貸しスタジオは基本壁が鏡になっている。だから防犯カメラが遮られていたとしても、鏡に映って防犯カメラに録画される。だけど、現場の部屋の壁はカーテンを閉められていて鏡に映っているはずのそれも、防犯カメラの映像には映っていなかった。
どうやらそれも山路さんが閉めたらしい。演奏に集中したいし、携帯で録画しているから後で見返せば十分だろうと。


「つまり。あの防犯カメラが半分隠されていたり、カーテンが閉められて見えなかったのは犯人が意図して作った現場ではないって事だね」

『ううん。カーテンはそうだけど、防犯カメラが隠れるようにしたのは犯人だよ』

「え…え!?ど、どういうこと?」

『確信はないけど、今聞いた話と現場の状況を見るに犯人はキーボードのお姉さんじゃないかな』

「キーボード…って、小暮留美さん?」

『うん』

「な、なんで…?」

『ドラムって、こう…固定されてるから動かせないし、ギターとベースの二人は画面に収まるように動けるでしょ?だから、携帯の場所はキーボードのお姉さんの位置次第で変わるのよ』

「…と、いうと?」

『キーボードがドラムに近すぎたら、携帯も自分達に近くなるから防犯カメラは遮ることが出来ない。逆に離れ過ぎていると携帯も遠くなってしまうの。この携帯、画面が縦のままだし多分動画も縦で撮ってるだろうから、そうやって携帯の位置をコントロールしたんだと思うよ』

「なるほど…でも、ギターとベースの二人も立ち位置で変えられるんじゃ…?」


確かにドラムから離れていれば出来なくはないけど、離れすぎているとちょっと不自然だから他の人達に不審がられる。
ベースのお姉さんはギターのお姉さんのジャケットのボタンを直すためにスタジオに戻って、ギターのお姉さんはお店から借りたギターの弦が切れたから直すためにスタジオに戻った。もし、ベースのお姉さんが犯人なら、ギターのお姉さんにジャケットのボタンが取れかかっているものを着て来てっていうお願いをしなきゃいけないし、ギターのお姉さんが犯人なら弦が切れそうなギターを貸してってお店の人に頼まなきゃいけない。

そんな怪しい事普通お願い出来ないから、消去法にはなるけど犯人はキーボードのお姉さんになる。それにキーボードのお姉さんは、カメラに背を向けていたのなら、曲を直す振りをして何かしてたと考えられる。例えば凶器を隠していたとか。


「なるほど…凶器はこれから探すけど、隠していたとなると…留美さんの所持品から出てくるよね?」

『普通はね』

「でも、鑑識さん達の様子を見るに怪しいものは出なかったんじゃ…」

『高木刑事達が来る前に少し見たんだけど、山路さんのニット帽に違和感があったの』

「ニット帽?」

『うん。だから鑑識さんにニット帽調べるように伝えてくれる?指紋とか、皮膚片採取とかそういうの』

「わかった!」

『あ、それから。今言ったのは現状言えることだから、絶対キーボードのお姉さんが犯人って事じゃないからね。もしかしたら外部犯の可能性だってあるわけだから…』

「もちろん、分かってるよ。いつもありがとうね」


「後は休憩所で座っていて大丈夫だよ」とにっこり笑って言って、高木刑事は鑑識さんにニット帽を調べてもらうように伝えに行った。

ああは言ったけど個人的には外部犯の可能性10%、他の二人が犯人である可能性20%、キーボードのお姉さんが犯人の可能性70%だと思っている。
まぁ、後は探偵の三人がなんとかしてくれるだろうから、私は休憩所でボーッとしてればいいかな。

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