ニット帽

貸しスタジオに着いたものの、部屋が全て埋まっているらしく一時間後くらいなら空くだろうと言われ、そこの地下にある休憩室で楽器を借りて時間を潰す事になった。

真純ちゃんが昔兄の友人に教えて貰ってベースが弾けるというので、どれくらいなのかを見せてもらうととりあえずドレミだけは弾けるらしい。というか、教えてもらったのがドレミだけだという。


「ベースを教えてくれたその男の顔、覚えてますか?」

「まあ、なんとなく…でもどうして分かったんだ?その友人が男だって」

「まあ…なんとなく」


はぐらかして答えた兄を見つめる真純ちゃん。なにか気になる事でもあるのかと二人を見ていると、別の席に座っていた女性のバンドグループの一人が声を荒らげて話し出したのが聞こえた。
どうやら一週間後にライブが控えているのに、キーボード担当のお姉さんが爪切ってないから音がズレていたり、ドラム担当の人が眠気が強くてしっかり叩けてなかったりとメンバーの調子が悪くイライラしているらしい。そんなお姉さんもいつもはオシャレなのか、ボタンが取れている事にも気付かないほどイライラしていると指摘されていた。


「なんか、大変そうだね…」

『絶対にライブを成功させなきゃいけない理由があるんじゃない?』

「理由?」

『んー…例えば元々メンバーにいた人の追悼ライブとか、引退ライブ…メジャーデビュー前の最後のミニライブとか?』

「なるほど…」

『ところで、三人でバンドやるのはいいけど誰がボーカルするの?』

「「「え?」」」


そう聞くと三人ともキョトンとした顔で、目をぱちくりさせた。まさかの考えていなかったみたいで、発案者の園子ちゃんは二つのことを同時に出来ないからとやらないそうで、真純ちゃんと蘭ちゃんも同じ。真純ちゃんが「君の彼氏はギター弾けるんじゃないか?」と蘭ちゃんに聞いたら、ヴァイオリンは弾けるけどギターは分からないんだそう。


「歌はコナン君並に…ねぇ…?」


チラッとコナン君を見てそう言った蘭ちゃん。反応から察するにとても音痴らしい。でも新一君って絶対音感持ってるって聞いたことあるんだけど。自分が出す音程をコントロール出来ないタイプなのかな。

そんな話をしていると上のスタジオから大きな悲鳴が聞こえた。気付けばさっきの女性グループの人達は休憩所がらいなくなっていて、悲鳴の主はそのグループの人達のようだった。
すぐに兄と真純ちゃん、コナン君が階段を駆け上がり悲鳴の元に向かった。遅れて私と園子ちゃん、蘭ちゃんもその場所に行くと、さっきの眠そうにしていた人がドラムにもたれかかっていた。首には紐の索条痕、吉川線があることから絞殺されたと見られる。スタジオには防犯カメラがあるからとコナン君が提案して、皆は受付にあるモニターを確認しに行った。


「珠雨ちゃんは行かないの?」

『うん、ちょっと…気になることがあるから…』

「気になること?」


カバンからハンカチを取りだして指紋が付かないようにして、遺体に身につけているニット帽を見た。さっき見た時より帽子が小さい気がするんだよね。なんか違和感。

ニット帽についているポンポンの部分を見ると、一度外されたのか切り口が他と違う糸があった。もしかして凶器はこのニット帽に編み込まれた紐だったりするのか。

それにしてもコナン君といるとよく事件に巻き込まれるなぁ。探偵いるところに事件ありっていうか、ありすぎでしょこの街。

|

[ 戻る ]






×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -