お買い物

『ねぇ、そんなにいらない』

「あらそう?」

「でも似合うよ?」

『…こういう時だけ仲良くなるのやめたら?』


現在。ベルモットお姉さんと兄と絶賛買い物中。
ベルモットお姉さんが今日くらいしか時間作れないとかで兄に頼み込んで、三人で一緒に出掛けようって朝言われ、ずっと言ってたしなぁと思って許可したら二人して目に付いた私に合いそうな服やら髪留めやらを勧めてくるものだからキリがない。
普段そこまで息ぴったりじゃないのにこういう時だけ仲良くなるの本当にやめて。


『そんなに服あったって、出掛けないよ私』

「あって損はないじゃない?」

「そうそう」

『ありすぎて損だわ』


ため息を吐いて二人が無理矢理買った服を見ていく。今流行りとかでフリルやらレースやらリボンやらが沢山着いた服ばかり。

潜入捜査官の協力者だっつってんだろ。
ベルモットお姉さんはともかく零さんはなんでこれ選んだんだよ。目立つだろうが。

何度見てもため息しか出ない。


「珠雨は何を着ても似合うよ」

『お兄ちゃんに言われてもね』

「あなた本当にバーボンの事嫌いね」

「反抗期ですかねぇ…」

「でもこういう可愛いお洋服着ると、すぐボーイフレンドなんて出来るんじゃないかしら」


にっこり笑って言うベルモットお姉さんに、兄は「それは困りますね」と。


「何も困らないでしょう」

『こういう所だよね』

「まあ、珠雨なら変な男なんかに引っかからないと信じてますから。大丈夫でしょう」


ね、と頭を撫でて笑ってくる兄に、小さくふんって言って目を背ける。

私が知ってる中で一番の変な男が零さんなんだよね。二番目が秀一さんとジンお兄さん。いやだって秀一さんと零さん観覧車の上で拳で殴り合いするんだよ。頂上にあるゴンドラの中じゃなくて、観覧車の上。ほんとにてっぺん。変な人じゃん。

ジンお兄さんは言うまでまもなく変な人でしょ。
ポエマーがすぎる。秀一さんもそうなんだけどさ。

こんな会話をしながらもまだ買い物を続けようとする二人。流石にそろそろ止めないとやめ時を失う。


『お兄ちゃん今日ポアロでしょ。そろそろ行かないと』

「え?…あぁ、本当だ。もうそんな時間か」

『私も行っていい?』

「構わないよ」

「珠雨も行くの?じゃあ今日はここまでかしらね…」


分かりやすく残念そうにするベルモットお姉さんに、「また今度ね」と言う。「今度」はきっと季節が変わった頃か組織関連で私が必要になった時か。ほぼないから季節が変わった頃かな。

ベルモットお姉さんはウォッカお兄さんを迎えに寄越すからいいと言って、その場で別れた。兄の車に乗ってポアロに行く途中、バックミラー越しに零さんがチラチラこちらを見るから「何?」って言えば、零さんは笑っていた。


「いや、さっき少しヒヤヒヤしたなと」

『いつ?』

「彼氏が出来るとベルモットに言われた時だよ。咄嗟にいるって言ってしまうんじゃないかと思ってヒヤヒヤした」

『言わないよ。巻き込みたくないもん』

「…そうだな」


なんだ、知ってたのか。まぁ、景兄とよくプレゼント贈るからって話してたし、買い物も付き合ってもらってたから当たり前か。


「この前会いに行ったんだろう?」

『偶然会えたが正しいかな』

「そうか。楽しかった?」

『うん』

「それは良かった」


ニコニコでそう言う零さんはいつも通りに車を進めて、ポアロの近くにある駐車場に停めた。


「ん?足付けるの?」

『うん。先に行っていいよ』


なんとなく歩きたい気分になったから、と言えば零さんは「そっか」と言って車の鍵を渡してくれた。後ろにあるケースに入れていた義足を取りだして付けて、大丈夫か確認してポアロに向かう。
ポアロに入れば蘭ちゃんと園子ちゃん、真純ちゃんとコナン君がいて、私を見るなり園子ちゃんに手招きされた。どうしたのか聞けば「安室さんもバンドやらない?」とニコニコ笑顔で言われた。


『バンド?』

「そ!昨日やってた映画に出てくる女子高生バンドがヤバカワでさぁ!」

『へぇ…』


何故そんな急に。

聞けば昨日の夜、テレビで放送されていた映画の登場人物に園子ちゃんが感化されて女子高生バンドのグループを組もうって話をしていたと。そのバンドのドラムの子が園子ちゃんにそっくりで、カッコイイからやりたいんだって。


「安室さん可愛いから絶対人気出るって!」

『いや、私はさすがに…』

「そっか…そうだよね…」

「そういえば、珠雨はピアノ弾けたよね?」

『あ、うん…』

「え、そうなの!?」


兄の言葉に園子ちゃんと蘭ちゃんがビックリしたような顔で私を見た。足を無くす前は習い事でピアノをしていたけど、事故に遭ってからは全く弾いて無いから今「弾いてみて」って言われても多分無理。楽譜くらいは読めるだろうけど。


「ピアノ以外にも楽器って弾けたりするの?」

『再従姉妹に習って琴なら少しだけ』

「こ、琴…?」

「琴ってあの?」

『うん』


親指を下に突き出して弾く様な仕草をすると、ピアノより意外だったらしく園子ちゃんは「へぇ…」と声を漏らした。


「その再従姉妹さんは趣味で琴を?」

『大きなお金持ちの家のお嬢様で、本家の生まれなんだって。だから一通りの楽器とか勉学とかはさせられてるみたい』

「本家があるってことは、分家とかあるってことよね…すっごい金持ちじゃない!」

「じゃあ、従姉妹さんはその分家ってこと?」

『らしいけど、もうほぼ縁切ってるようなものだって聞いたよ』

「ガチガチの金持ちって大変よね…」


その大変さに加えてまだ色々とあるらしいけど…まぁ、園子ちゃん達には関係ないから言わないでいいか。

で、兄がギターが弾けるというから、バンドの練習として貸しスタジオに行ってみないかという話になっていたみたいで今から行くらしい。「楽譜の読み方だけでも教えてあげたら?」と言われて私も一緒に行くことになった。



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