呼び方

電話に出ると黒田さんはホテルのロビーに来ているそうで、現場の部屋番号を教えてくれという内容だった。「少し待ってて」と言って電話を切り、エレベーターで一階まで下りてロビーに行くと本当に黒田さんがいた。


「なんだ、わざわざ迎えに来てくれたのか」

『なんで来たの?』

「江戸川コナン君がいると聞いたからね。彼への挨拶と、お嬢の監視に」

『余計な項目があったね』


黒田さんに車椅子を押されてエレベーターホールまで向かう。すぐに扉が開いて二人でエレベーターに乗り込み、五のボタンを押すと扉は閉まってエレベーターは五階へと上り始めた。


「そういえば、東条君と仲直りはしたのかね」

『仲直りもなにも、元から必要最低限の会話しかした事ないよ』

「いい加減に許してやればいいだろう」

『何が原因だと思えばそう言えるのよ』

「そうだったな」


黒田のおじ様がそう言うと会話が途切れる。無言のままエレベーターの階層表示を見つめ、目的の階に到着した音が鳴り扉が開く。車椅子を押されてエレベーターから出て皆がいる504号室の方を見れば、既にトリックも犯人も言い当てて終わったのか目暮警部達が歩いてこちらに向かってきていた。


「それにしてもコナン君と管理官が知り合いだったことには驚いたよ!」

「でも捜査一課の管理官って松本警視正でしょ?」

「ああ、それが…」

「君なら、事件解決の手助けをしてくれると信じていたよ。眠りの小五郎の知恵袋ならね」


高木刑事とコナン君の会話に入り込んでそう言った黒田のおじ様。その呼び方止めたらいいと思う。「眠りの小五郎の知恵袋」ってわざわざ長ったらしい呼び方しないで、普通に「江戸川コナン君」でいいじゃん。

どうやら黒田のおじ様。数日前に長野県警捜査一課長から警視庁捜査一課の管理官に就いたらしい。だから私の話は聞けって高木刑事に指示したのか。
それに、この人が警視庁の捜査一課にいれば、今後組織関係の事で警視庁側が動きやすくなるだろう。長野県警にいたのは多分あの啄木鳥会の捜査だろうし、そのメンバーが殺害された又は逮捕されたで啄木鳥会が無くなって、長野県警にいる必要もなくなったから警視庁に来たってのもあるんだろうな。

黒田のおじ様はコナン君に手を差し出して「これからよろしく」と挨拶をしているものの、持ち前の顔の怖さからコナン君に警戒され、子供達には怯えられ、挙句お姉ちゃんでさえもコナン君の後ろに隠れて怯えている。


『おじ様。子供達が怖がってるから下がって』

「おや、すまない」

「そういえば、珠雨ちゃんも管理官と知り合いなんだね?」

「私の同期がこの子と知り合いでな」

「そ、そうだったんですか」

『ねぇ、この後事情聴取とかあるの?』

「いや、特にないよ」

『じゃあ帰ろう。元太君もお腹ペコペコでしょ?』

「もうずっと鳴ってんだよ…」

「それじゃあワシらはこの辺で失礼します」

「えぇ、お気をつけて」


阿笠博士がぺこって軽く会釈をすると、高木刑事や目暮警部、黒田のおじ様も頭を下げた。

コナン君の反応からするに、まだ黒田のおじ様の事を「ラム」だと疑っているみたいだけど、本当にこの人がラムならわざわざ出向いてこないと思うのよね。目立つし警戒されるし、「今ラムは警視庁にいる」なんて情報自分から与えない。あの人なら偶然を装って近づくはず。
私も長野で会う前に関わってたのなんて三歳とかその頃だし記憶なんて無い。ずっと関わっていたわけじゃないから「この人は絶対安全だよ」「ラムじゃないよ」とは言いきれない。

もしラムなら、明日以降組織が動き出すと思う。
あんな間近でお姉ちゃんの事見てたんだから。

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