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「僕をこんなところに連れてきてどうするつもり?安室さん」
公安が所有する地下シェルター内に、不自然に特殊ガラスで囲われ机と椅子、黒電話という不似合いな組み合わせの場所で足を組んで座っている人。降谷零。彼が呼んだのか、エレベーターを降りて来た彼の部下二人は、小さな探偵を目隠しして連れてきた。
零さんが黒電話の受話器を取り耳に当てると、近くにある柱に取り付けられた内線電話が鳴り始める。エレベーターを降りて目隠しを外されたその小さな探偵は、内線電話の受話器を取って第一声を発した。
「珠雨さんも、どうしたの?こんなところで」
『私達は今お手上げ状態なの』
零さんを指さして言うと、小さな探偵であるコナン君は彼の首元を凝視した。
「なに、あれ?」
【爆弾だよ。時限式か無線式なのかも不明、解体方法も分からない】
くるりと一周して自分の首に付けられたそれを見せて、零さんは床に胡座をかいて座ってコナン君に協力を依頼した。
コナン君はコナン君で、警視庁前で起こった外国人焼死事件に遭遇したものの捜査が止められたことで公安が動いたと予想し、わざわざ一人になって連れてこられたようで。その事件は三年前に殉職した陣平さんが関わっていることと、陣平さんと零さんが同期だった事が分かっているらしく、それを考えればすぐに答えは出ると教えてくれた。
「珠雨さんも、松田刑事と知り合い?」
『友達』
「へぇ…」
【彼女は僕が警察になるまで警察学校に出入りしていてね。学校に行けなかったら、警察学校の教官や僕ら生徒が時間があれば教えるという形だったんだ】
「じゃあ、三年前の一月六日。二人とも松田刑事に会ったんだね?」
三年前の一月六日というと、約一年ぶりに零さんの同期四人と会った日。
研二さんのお墓参りに零さんと景兄と行って、先に来ていた航さんと合流して手を合わせていたところに遅れて陣平さんが来た。陣平さんは捜査一課に転属してすぐで、事件続きで中々抜けられなかったと言いながらお墓にお花を添えていたっけ。
零さんがそれをコナン君に伝えると「その後何かあったんじゃない?」と更に話を聞いてきた。お墓があるお寺は渋谷で、三年前のその日に渋谷の雑居ビルでガス漏れ事件があった事を調べたから気になったと。
コナン君の言う通り。お寺からの帰り、零さんの車で陣平さんを送り届けている途中に雑居ビル前でパトカーが止まっているのを見つけて、陣平さんと零さんが話を聞きに行った。
「珠雨さんは?」
『車で待機してたよ。これでも一般人だからね』
【その後乗り込んできたけどね。ビルの前にいた警察官の話では、廃ビルの中に誰かが忍び込んで暴れているみたいだと。直前まで一緒にいたアイツらも応援に呼んだけど、二人が到着する前に僕と松田で中の様子を見ておこうって事になったんだ】
それで、陣平さんと零さんがビルの中を警戒しながら上っていくと頭から血を流し、腕を縛られ頭上に吊るされたロシア人男性を見つけた。紐を解きながら零さんがロシア語で陣平さんの言葉を通訳し、陣平さんはその男性に名刺を渡し逃げるよう伝えた。その時足音が聞こえ、男性は先に下に降り、二人は音のした方に向かうと赤と青の液体が入った大きな装置と、仮面を付けてフードを被った人が一人。陣平さんが言うには大きな爆弾だったらしい。
その人はすぐに零さんに向けて銃を発砲して来たから、零さんはその人を追いかけて陣平さんは爆弾の解体に。
「その時も珠雨さんは車に?」
『ううん。丁度その頃に景兄と航さんが到着してね。二人に説明してたら発砲音がしたから、グローブボックスにある予備の銃を持って二人と一緒に乗り込んだの』
「銃使えるの?」
【誰に教わったんだか。何故か僕が警察学校に入ってすぐの頃から使えたんだよ、この子は】
『で、三人で上ってたら零さんでも陣平さんでもない人を見つけたから追いかけてたら、陣平さんに銃向けてて…』
発砲と同時に、いつから持ってたのか航さんが車のドアを盾にして陣平さんの前に出て守って、そのまま突進して体勢を崩したところを景兄が回し蹴りして銃を奪った。その時零さんと合流して挟み撃ちの形になったけど間をすり抜けられた。
『追いかけたけど何をどこに仕込んでるのか、何かの装置を投げて隣のビルに飛び移ろうとしたのよね』
「キッドみたいな感じ?」
『そうそう。あのビューンって飛ぶやつ』
【で、まさかの澪さんがそのロープを撃ち落とすっていうね】
『どいて』
「待て、澪!お前が撃ったら…!」
『始末書よろしく』
「おい!!」
「……誰が始末書書いたの?」
【僕】
で、ロープを撃ったんだけどその人の体力とか、運動神経とか凄くて。バランスを崩しながらも隣のビルの非常階段の手すりに捕まって乗り移った。
それを見て零さんもそこに行こうと走って助走を付けて、航さんに手伝ってもらって隣のビルに文字通り飛び映った。
【他にも仲間がいるかもしれないからって班長とヒロと澪さんには松田の所に戻ってもらったんだけど…なんであの時ヒロは僕のところに?】
『タダ者じゃないから、ゼロひとりじゃキツいと思うって言って援護に』
【なるほど…】
それで、私と航さんだけで陣平さんの所に戻ったんだけど、結構大きな装置だったから解体にも時間が掛かっていて。少しでも揺れたりすると液体が漏れてしまって二つの液体が一滴でも触れると爆発する仕組みらしく、普通の爆弾より慎重にならざるを得ない物だった。
残り三分で爆発しかねないそれを陣平さんに任せて、航さんは周囲の人間を避難させるように下にいる警官に指示しに行き、私は手負いの零さんと、それを支えていた景兄を手伝いながら一緒に下に降りた。
『避難させる時に、爆弾だとパニックを起こす可能性があるからガス漏れだと言って、周囲の人達をその場から離れさせたの』
【公安が介入して全ての情報を封印し、表向きはガス漏れ事故で処理された】
「回収した爆弾はどうなったの?」
コナン君がそう聞くと、後ろで待機していた零さんの部下の一人がノートパソコンの画面を彼に見せた。画面には「リサイクル会社の倉庫で爆発事故が起き、作業員五人が死亡」と書かれたニュースの記事が映し出されている。
爆弾は解析の為にシェルターのひとつに運び込まれたが、その最中に謎の爆発が起こり関わっていた者は全員死亡した。
【今回しか使えないけど、捜査に必要だろうから風見の連絡先と…その時松田が解体していた爆弾の写真と構造、あと僕の同僚四人と澪さんと撮った写真を送るよ。左から諸伏、澪さん、松田、伊達、僕、萩原だ】
零さんが言った全てがコナン君の携帯に送られると、コナン君は小さく「あれ?」と呟いた。見ていたのはみんなで撮った写真だった。
今伝えられる情報はそれだけだと零さんが言うと、コナン君は一度帰ることになった。上まで見送ると言って私とコナン君、零さんと裕也さんの部下である公安の一人と一緒にエレベーターに乗り込む。
実はこの人初対面で名前知らないんだよね。
「…ねぇ、珠雨さん」
『なに?』
「間違えてたら悪いんだけど…もしかして、昔会ったことある…?」
『あるよ』
「だから、初めて会った時に俺の事…」
『そう』
一度会ったことあるから、コナン君の事をすぐに「新一君」だと分かった。どうやらさっき見た写真で見覚えがあると感じたらしい。それは私だけじゃなく、研二さんにもそう感じたと教えてくれた。
「昔の珠雨さんって、髪長かったんだね」
『オシャレとかに興味なくて…だからずっと伸ばしっぱなしだったの。たまに、研二さん達が結んでくれてて…確かその写真を撮った日は景兄が結んでくれたかな』
「へぇ…似合ってるね」
『ありがとう。そういえば、コナン君は病院にいたって聞いたけど…何かあったの?』
コナン君は病院から帰る時に、蘭ちゃんと分かれて一人になった所を声掛けてきたと聞いた。どうやら午前中にあった警視庁前の外国人焼死事件。目撃者だと思っていたのだけど実はお姉ちゃんが巻き込まれたらしい。爆発の勢いでお姉ちゃんは吹っ飛び道路に叩き落とされ、車に轢かれそうになったところを小五郎さんが守ったと。お姉ちゃんは擦り傷程度で済んだらしいが、小五郎さんは頭を強く撃ってそのまま病院に運ばれた事を教えてくれた。
『お姉ちゃんと、小五郎さんが…ごめんなさい、巻き込んで…』
「ううん、珠雨さんのせいじゃないよ!」
コナン君は手を横に振ってそう言ってくれた。
お姉ちゃんや小五郎さんまで巻き込んでしまっている現状にいくら足がないからって、この状況を車椅子に座って静観したくないな。なにか私に出来ることがあればいいけど。
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