リップ

「お嬢、今帰宅ですかい」


結局、母の好きだった場所っていう所には行けず、そのまま長野から帰った翌日。学校に登校して昼頃に帰っていた時、路肩に止まっていた車から声をかけられた。そっちを見れば、組織の一員のウォッカお兄さんが手を振ってくれていた。


『うん。さっきまで学校だった』

「制服似合ってますぜ」


言われて少し照れくさくなる。「ありがとう」とお礼を言ってふと気づいた。これ誰の車だろう。いつものジンお兄さんの車じゃない。
誰の車?と聞くと、お兄さん本人の車らしい。今日ジンお兄さんはキールお姉様と行動するように言われて別行動なんだって。で、今ウォッカお兄さんはベルモットお姉さんの買い物に付き合わされて、待たされてるんだとか。


『へぇ…初めて見た』

「いつもジンの兄貴の車ですからね。よかったら送りやしょうか」

『ううん、大丈夫。ちょっと寄り道するし』

「寄り道する元気があるなら、最後まで授業受けたらどうですかね。ま、お嬢は既に賢いから授業なんざ受ける必要もねぇが」

『最近は前より体調崩す事もなくなったから大丈夫だよ』

「でもホントに気をつけてくだせぇよ。今、ジンの兄貴がバーボンの事疑ってやすから」


どうして?と聞くと、組織に潜入している者がいるとラムのおじ様が疑っており、その潜入者である疑いがかかってるそうで。
「家族なんてもんを組織にさらけ出して裏切るような馬鹿じゃないと思うんすよねぇ」とウォッカお兄さんは頭を掻きながら言った。

組織の人達をその思考にさせる為の私なんだよ。


「ま、言動行動には気をつけろってことで。何が原因で疑われるか分かりゃしねぇ」

『ありがとう、気を付ける』

「あいつが裏切り者だと分かった日にゃ、お嬢もそういう事だと判断される。兄貴は容赦ないから、お嬢も手にかけられるでしょうよ」

『こ、怖いこと言わないでよ…』

「俺はお嬢は信用してるんで、大丈夫だと信じてますから」


「お嬢“は”」。そういえばジンお兄さん達も“バーボン”は嫌いなんだっけ。なんでそんなに嫌われてるんだあの人は。


「あら。私に内緒で逢引かしら?」


零さんの嫌われっぷりに気付かれないように呆れていると後ろから声をかけられる。振り向けば買い物が終わったのか紙袋を持ったベルモットお姉さんがそこにいた。


「用は終わったんで?」

「えぇ、待たせて悪かったわね」

『何を買ったの?』

「化粧品。ちょうど良かった。珠雨に似合うと思ってこれを買ったの。あげるわ」


はい、って渡されたのは色付きリップ。新作だとかで色んな色から私に合うものを選んできてくれたんだって。


「あなた、オシャレどころか流行りに疎いからこうでもしないと」

『ありがとう』

「今度一緒にショッピングしましょうね」


ベルモットお姉さんはそう言いながら車に乗りこみ、二人に手を振られてそのまま走り去っていった。
これ新品みたいだけど盗聴器とか発信機とかないよね。ちょうどポアロに行くから調べてもらおうか…

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